関西弁でまくし立てる宇宙人が大暴れ!――オリジナルよりも笑える日本版:「デストロイ オール ヒューマンズ!」レビュー(4/4 ページ)
1950年代のアメリカで宇宙人が大騒動を巻き起こすというカルトな洋ゲー「デストロイ オール ヒューマンズ!」が、セガのローカライズで待望の日本上陸を果たした。シナリオやセリフの大部分を日本独自のものに書き換え、日本人にしか分からないギャグやパロディを盛り込むというあまりにも大胆なローカライズによって、日本版は抱腹絶倒の超バカゲー(ほめ言葉)に仕上がった。
洋ゲーを食わず嫌いしている方に遊んでみてほしい
元が洋ゲーというだけで忌避する方もきっと多いとは思うが、そんな人でもこのゲームなら楽しめるのではないかと思う。内容を日本仕様に作り替えているだけでなく、意外なほど(といっては失礼だが)操作性がよく、クリプトをキビキビと動き回らせることができるのも遊びやすさにつながっている。次にどこへ向かって何をすべきかを、画面上の目印で示してあったり、音声でも指示してくれる親切設計なので、迷うことはほとんどない。
また、難易度も比較的低め。中盤あたりから敵の攻撃がかなり激しくなるが、エンドルフィンを地道に集めて武器を強化したり、変身能力を活用すれば、アクションゲームが苦手な人でもクリアできるはず。
ただし、プレーヤーの操作に落ち度があったわけではないのに、偶発的なトラブルでミッションを達成できないこともある。例えば、ターゲットに催眠術をかけて特定の場所まで誘導するシーンがあるのだが、催眠術をかけたターゲットが道路に駆け出してしまい、車にひかれて「ミッション失敗」……なんてことも。ただ、こういうことが起きてもそれほど理不尽に感じないのは、このゲームが持つコミカルなテイストがプレーヤーの気分に作用しているからかもしれない(もしかしてプレーヤーまでクリプトに洗脳されてる?)。個々のミッションも短いので、やり直しがあまり苦にならない。
気になった点を挙げるとしたら、字幕表示をオンにしているとき、1行あたりの文字数が多すぎて読みにくいのと(そもそもクリプトがものすごい早口なので、どうしても文字数が多くなるわけだが)、企図してB級テイストを誇張している感が強いので、それが肌に合う人と合わない人に分かれるかもしれない。ただしゲーム自体のシステムはよく練られているし、ローディングも早いので、そういった面でストレスを感じることはない。
一般に洋ゲーのローカライズというと、ボイスは英語のものをそのまま使い、字幕だけ日本語に変えるというのがほとんど。それでも、テキスト量が多いとかなりの労力と時間を要するし、逐語訳ではニュアンスが伝わらないことも多いので、作品全体のテーマやテイストを理解したうえでの意訳が必要になってくる。ゲーム内容についても、文化や思想の違いに配慮して多少の修正を加えることはあっても、基本的にはそのままだ。こういったローカライズなら、オリジナルの雰囲気を損なうことも少ない。
今回の「デストロイ オール ヒューマンズ!」の場合は、シナリオやセリフを全面的に書き換えるなど、徹底して日本人向けに内容を作り替えているところがほかの洋ゲー作品との大きな違い。TVドラマやアニメではよく見かける手法だが、ゲーム作品ではあまり例がなく、ローカライズというよりもむしろリメイクに近い。
実際にプレイしてみると、クリプトをはじめとする主要キャラクターたちがオリジナルと全く違うセリフをしゃべっているのに、それが違和感なく物語として成立しているのはすごいと思う。確かにオリジナルとは雰囲気がすっかり変わったが、わたしはオリジナルよりも日本版の方がおもしろいと感じたし、「こういうローカライズのやり方もあるんだなあ」とつくづく感心させられた。どんな洋ゲーにも通用する手法ではないが(シリアスなゲームをギャグ満載で作り替えられても困るし……)、こういった手間暇をかけたローカライズ作品が増えてくると、日本でも洋ゲーに対する見方が変わってくるかもしれないと思わせる一作だ。
デストロイ オール ヒューマンズ! | |
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発売日 | 発売中 |
価格(税込) | 7140円 |
ジャンル | マニアック・アクションアドベンチャー |
プラットフォーム | プレイステーション 2 |
CERO | C区分(15歳以上対象) |
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