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タッチペンでの演技が新鮮――フィギュアスケートを題材にしたゲーム「くるくる◇プリンセス〜フィギュアできらきら☆氷のエンジェル」レビュー(2/2 ページ)

スパイクの「くるくる◇プリンセス」は、中学2年生の女の子がフィギュアスケート界の頂点を目指すという少女マンガチックなゲーム。題材の目新しさもさることながら、ニンテンドーDSのタッチスクリーンを使って演技をするのがユニークで、トリプルアクセルはもちろん、なんと前人未到のクワドラプル(4回転)アクセルまで繰り出せる。

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演技に使う楽曲を選べたり、演技構成を自由に組み立てられるのが楽しい

 ふだんの行動には少しだれる部分があるものの、いざ本番を迎えてスケートの演技に入ると俄然おもしろくなってくる。大会では、実際の競技と同じくショートプログラムとフリープログラムの2回の演技を行い、その合計点によって順位を争う。ショートとフリーそれぞれで使用する楽曲や衣装を選べるほか、演技構成もプレーヤーが自由に組み立てられるのが魅力だ。

 音楽については、実際の競技でもよく使われるオペラやバレエ音楽を中心にセレクトしてあるところに好感が持てる。代表的なものをいくつか紹介すると、ラヴェルの「ボレロ」や、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」から「金平糖の踊り」と「花のワルツ」など。また、トリノ五輪で日本選手が使用した曲も多く、荒川静香選手がショートで使ったショパンの「幻想即興曲」と、フリーの「だれも寝てはならぬ」(プッチーニ「トゥーランドット」から)、安藤美姫選手がフリーで使用した「ある晴れた日に」(プッチーニ「蝶々夫人」から)なども収めている。ゲームを進めていくと入手(使用)できる楽曲も増えるので、最終的に何曲あるかは内緒にしておくが、欲を言えばもう少しレパートリーがほしいと思う。個人的には、荒川静香選手がトリノ五輪のエキシビジョンで使った「You Raise Me Up」もほしかった。

画像 演技に使用できる楽曲は、実際の大会でもよく使われているものばかり。荒川静香選手がトリノ五輪で使ったことで有名になった「だれも寝てはならぬ」も収録
画像画像 髪型、衣装、アクセサリーなども、手持ちのアイテムから自由に選べる。ここはやはり、楽曲や演技構成のイメージに合ったものを選びたい

 何といってもおもしろいのは、演技構成の組み立てだ。コーチが2つの演技パターンを提示してくれるので、そこから選んでもよいのだが、やはり自分なりのパターンを作った方が楽しい。ショートプログラムを例に挙げると、8つのパネルがあって、ここに「ジャンプ」「スピン」といった項目をはめ込んでいく(最後のパネルは「コンビネーションスピン」と決まっている)。次に、各項目の技を具体的に決めていくのだが、この技も豊富に用意されているのがいい。例えば、「コンビネーションジャンプ」なら、1回目が「トリプルルッツ」で、2回目に「ダブルトゥループ」、というように多彩な技の中から思い通りに構成できる。ただし、浅田真央選手が得意とする3回転−3回転−2回転といった3連続のコンビネーションジャンプは組めない。

画像 8つのパネル(ショートの場合)に「ジャンプ」や「スピン」などの項目を当てはめて、まずは演技全体の大まかな流れを作る
画像画像 次に、各項目の具体的な技を指定する。「ジャンプ」については、フィギュアスケートで代表的な6種類のジャンプをすべて網羅し、なんとクワドラプル(4回転)アクセルまである

 楽曲、衣装、演技構成を自分で決められるというところが、フィギュアスケートファンの妄想を大いに駆り立てる。わたしなら、楽曲は「幻想即興曲」でスリリングな雰囲気を演出し、衣装は黒のスパンコールで大人びた印象に。演技では、いきなり3回転−3回転のコンビネーションジャンプを繰り出して、「序盤から観衆とジャッジの視線をくぎ付けよ!」と行きたい。いい歳をしたおっさんがここまで成りきれてしまうのは、我ながら怖い……。

 演技は、初めにも述べたようにタッチペンで操作するが、これも直感的で分かりやすい。例えば、ジャンプはタッチスクリーン上に図形を描き、スピンでは枠内を左右に素早く擦るといった具合。ジャンプの回転数に応じて図形を描く回数も増えるので、制限時間内に描き終えるのが難しくなる。また、ジャンプの種類によって描く図形も変わるのだが、これもジャンプの難度を反映させていて、なかなかよく工夫されている。6種類あるジャンプの中でも比較的易しいとされるトゥループは「○」なので、連続的に素早く描けるが、これがルッツでは「W」、最も難度が高いアクセルになると「Ω」を描かなくてはならないので、成功率が落ちてくる。

画像画像 ジャンプでは、画面に表示される図形を制限時間内(助走中)にジャンプの回数分だけ描くと成功。ジャンプの種類によって描く図形も変わる。なお、日頃のトレーニングでパラメータを上げていくと、入力時間も長くなり、その分、高難度のジャンプやコンビネーションにも挑みやすくなる
画像 スピンは、画面の右に表示される枠の中でタッチペンを左右に擦る。コンビネーションスピンでは、途中で擦る位置が変わる

 演技が終了すると、ちゃんと「キスアンドクライ」(選手やコーチなどが採点を待つ場所のこと)も再現されているのはなかなか凝った作り。ちなみに、ゲームを起動したときに表示される断り書きにもあるが、このゲームでの採点方式やルールは、実際の競技に沿ったものではない。もっとも、現在の採点方式やルールは非常に複雑なので、それをそのままゲームに持ち込まれてもプレーヤーが困惑するはず。対象年齢を考えると、ゲーム流にアレンジしたのは正解と思える。

もう少し育成シミュレーション風の方向に振ってもよかったかも……?

 この「くるくる◇プリンセス」は、ニンテンドーDSのタッチスクリーンに図形を描くことでジャンプの成否を判断するというシステムがユニーク。ジャンプの種類による難度差を図形の違いで反映させていたり、楽曲や演技構成を自分で決められるというあたりも、フィギュアスケーターになった気分が味わえて楽しい。

 ただ、普段の行動がミニゲームの繰り返しに終始してしまうため、どうしても単調に感じられてしまうのが惜しい。最終的な目標と、それにいたる過程も一本道なので、変化に乏しい印象を受ける。対象年齢を想定してのことだと思うが、例えばキャラクターの育成に関する要素をもう少し厚くして、育成シミュレーション風に仕上げてもよかったかもしれない。「世界屈指のジャンパーを目指す」など、プレーヤーが理想とするスケーターを育てられるような内容だったら、ゲームの深みがいっそう増しただろうとも思う。

 とはいえ、これまでゲームでほとんど取り上げられていなかったフィギュアスケートというジャンルに切り込んだことは、大いに歓迎したいところ。フィギュアスケートは、スポーツ競技でありながら芸術性も問われる種目だけに、ゲーム化するのはさぞ難しかっただろうと思う。「くるくる◇プリンセス」では、無理にリアリティを追求せず、ルールなどをゲーム流に分かりやすくアレンジしたことと、ニンテンドーDSの特性をうまく活用しながらフィギュアスケートらしさを再現したことがポイント。アイデア次第ではまだまだおもしろくなる可能性もありそうで、次回作など今後の展開にも期待したい。

くるくる◇プリンセス 〜フィギュアできらきら☆氷のエンジェル〜
ジャンル くるくるタッチフィギュアアクション
対応機種 ニンテンドーDS
CERO A区分(全年齢対象)
発売日 発売中
価格(税込) 5040円
発売元 スパイク

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