韓国ではなく日本のゲームメーカーとして勝負する:NeoWiz Japan代表取締役社長 パク・ジンファン氏インタビュー(2/2 ページ)
日本国内ではMMOPRG「DEKAREON」やゲームポータルサイト「GameChu」の運営で知られるゲームメーカー、NeoWiz Japan代表取締役社長 パク・ジンファン氏。韓国から来たゲームメーカーとしてではなく、日本に根付き、既存の国産メーカーと同じ舞台で争いたいという。現在の日本のPCゲーム市場をどう見ているのか、今後の展開などについて話を聞くことができた。
――ここ最近の話ですが、PCのオンラインゲームに限って言えば、新規ユーザーの拡大に少々かげりが見えてきています。大きくならないパイを各社が取り合っている状況については、どうお考えでしょう。
パク 韓国でもRPGからFPSへと対象が移っただけで、同様の現象が見られます。そこでユーザー拡大のキーを握るのが、女性プレーヤーなんです。RPGというゲームは、ゲームに不慣れな女性層には、今ひとつ優しいとはいいがたい内容です。女性プレーヤーを取り込むために新しいゲームジャンルが開拓され、それによって裾野が一気に広がる。そういう時期が早く来てほしいですね。
それに実のところ、女性プレーヤーが増えるとそれにくっついて、自然に男性プレーヤーも増えるんですよ(笑)
――新MMORPG「モナトエスプリ」は、その女性心を掴むためのタイトル候補というわけですか。
パク そういうわけではありません。女性プレーヤーの次に狙うべきターゲット層というのが、大学を卒業して就職した、プレイ時間にあまり避けない社会人なんです。以前のように何時間もオンラインゲームで遊べないため、ゲームをやめてしまったという社会人が、毎日1、2時間でも手軽に楽しめるタイトルがあれば戻ってきてくれるというわけです。
――「モナトエスプリ」は初心者だけではなくて、かつてオンラインゲームに親しんだプレーヤーを、呼び戻すための窓口の役割となるのでしょうか。
パク はい、その通りです。「モナトエスプリ」をきっかけに、本格的なRPGに興味を持ってくれる人もいるでし、時間はないけれどライトなMMORPGならやってもよいと考えて、戻ってくれる人もいるでしょう。この2つの層の注目を引き付けられれば、そのタイトルは爆発的にヒットします。
ただ、この現象は日本では起こりにくいと考えています。
――日本で通用しないと思うのはなぜですか。
パク 何度も申し上げていますが、日本のユーザーの方がはるかにRPGというものに慣れ親しんで、目が肥えているからですよ。特に日本でRPGというと、1人でコツコツ遊ぶものというイメージも強いでしょう。日本のユーザーも、RPGをみんなで遊ぶという方向に目を向けてくれれば、また状況は変わるとは思いますが。
また、これは日韓どちらでも同じ悩みなのですが、長くサービスを続けるほどに、古参ユーザーとの間にレベルや装備品の差が付きすぎてしまい、新規のユーザーが一緒に遊べない。仲間に入りにくいという現象が起きます。これもオンラインゲームの新規ユーザー獲得を妨げる原因の一つと言えるでしょう。
――国内でサービスされているMMORPGの中には、そういった古参と新規ユーザーのレベル差、溝を埋めるべく、取得経験値が倍になるような、ブースト系アイテムを販売するというアイディアがあります。これについてはいかがでしょう?
パク しかしそのアイテムは、誰でも購入できてしまうのでしょう? 例えば新規ユーザーにだけ特別に配布される、というアイディアならば良いですよ。古参ユーザーも購入できてしまったら、差が縮まらないですよね。ブースト系アイテムの販売はだから開発側にとっても悩ましい問題ですし、慎むべきだと思います。逆に苦労して長い時間かけて高レベルになったプレーヤーも、簡単に追いつかれてしまったら悔しいでしょう?
――プレイ時間とレベルの問題は、確かに難しい部分かもしれませんね。単純にレベル制度をやめればいい、というものでもないでしょうし。そもそも、イマドキの子というのは、受験勉強があったり習い事や友達付き合いと、昔に比べて多忙なライフスタイルを送っています。さらにそこには、PSPやニンテンドーDSといった携帯ゲーム機、携帯そのものでのメールのやりとりが割り込んできたりと、1日の中でオンラインゲームに使える時間がひどく限られていると感じます。そういったユーザーをPCゲームに引き付けるためには、何が必要だとお考えですか。
パク わたしが開発者に言うのは非常にシンプルなことです。ゲームをしないでテレビ番組を見るのは、それはテレビの方が面白いからに他ならない。勉強しなければいけない時期はゲームしなくていいんです、勉強してください(笑)。そうではなくて、テレビを見てもいい時間に、いかにゲームがその時間を奪えるかですよね。しかもテレビというのは、ただ見ていればいい受身ですから楽なんです。ゲームというのは黙ってみていられません、操作が必要です。それに打ち勝つためには、とにかく人気ドラマを見るよりも遊びたくなるような、楽しいゲームを作るしかありませんよ。それ以外どうしようもありません。
――そういう魅力あるゲームコンテンツを作り出せる、優れたクリエイターを社内で育てる努力はされていますか?
パク 日本ではスタートを切ったばかりですので、そこまで進めていません。韓国の本社でわたしが試みたのは、外に出ろということです。本社は日本で例えるならお台場のような場所にあって、周辺には遊ぶ場所がたくさんあるんですよ。外で刺激を受けて、創造性を高めるように常に言い聞かせています。
時には心の中で、あまり面白いテレビ番組が出来ないように祈っていたりします(笑)
――韓国のゲームメディアの記事を拝見しましたが、2007年のキーワードとして「グローバル」「海外への進出」という言葉がしばしば見られました。この場合の海外とはヨーロッパ、北米、他のアジア諸国、どれを意識していらっしゃるのでしょう。
パク 視野に入れているのは、市場規模の順番に北米、中国、日本です。実際にスタートを切っているのは日本ですが。
――最後に読者に向けてメッセージをお願いいたします。
パク わたしは一番大切なことは基本に忠実であることだと考えています。ゲームの場合これは、面白くて完成度が高い作品を世の中に送り出していくことです。当たり前のことですが、面白いゲームを作るというのは大変難しいことですから。それと、もう一度お伝えしたいのは、韓国から来た会社ではなく、日本で設立された新しいメーカーとして皆様に認識され、ゲームを評価していただけるようになりたいです。いいコンテンツとサービス、その両方を実現していくつもりです。
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