バルボッサ船長がバルボッサ船長をプレイ!?――来日したジェフリー・ラッシュ氏にインタビュー:「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」インタビュー
「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」のアジア・プレミアムが先日行われたのはご存じの人も多いと思う。これにあわせて「バルボッサ」役のジェフリー・ラッシュ氏が来日。Wii版「パイレーツ・オブ・カリビアン」についての感想を聞いてみた。
ゲームは異文化や違う時代について学ぶ、新しい形の百科事典
ゲーム「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」は、Wii版とニンテンドーDS版で発売されるタイトル。映画の第2作「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」と、今回公開された「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」のストーリーがベースとなっている。Wii版では、Wiiリモコンを使ったソードアクションが楽しめ、ニンテンドーDS版ではタッチペンによるデュエルシステムが用意されているなど、それぞれ特徴あるアクションが楽しめるのだ。
映画「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」のアジアプレミアムが開催されたのはご存じの人も多いと思うが、これにあわせて「バルボッサ」役を演じるジェフリー・ラッシュ氏が来日した。あまりゲームはプレイしないという同氏だが、Wii版に触れてもらいながら、ゲームについての感想を聞いたのでお届けしよう。
――ゲームを見ての感想をお聞かせください。
ジェフリー・ラッシュ氏(以下、敬称略) そうですね。チェックとしてわたしのところにもグラフィックの素材が来たりしたんですが、最初のうちは「本当にこの人たちは映画を見たのか?」と思うほど、自分のキャラクターとは似ていませんでした。そのときには「承認できない」と返事したのですが、いまはグラフィックスを再現するためのすばらしい技術がありますので、簡単に似せたものを作ることができ、より信憑性のあるキャラクターを作り上げることができます。たとえば、自分の着ている衣装の長さが違ったり、剣が反対側に付いていたり、バンダナを付けていたりしたこともありますし。「バルボッサ」というのはヒゲが特徴的なのですが、そのあたりもしっかり作ってくれないとちゃんとバルボッサにならないから、といった細かい調整を自分のところで担当しました。
――Wii版のゲームを見ていただいたんですが、このようにプレイしたらバルボッサになりきれるよ、といったようなアドバイスがあれば教えていただけますか。
ラッシュ 汚く戦うことです(笑)。わたしの剣術を指導してくれた人で、ボブ・アンダーソンという人がいまして、いま80歳代なんですが。彼は1950年代にエロル・フリンに教えたり、オリンピックのフェンシングコーチとして7大会出ているほどの達人です。また、スター・ウォーズのダース・ベイダーがライトセイバーを使っているシーンも、彼が担当しています。
その人の指導でバルボッサを演じるときに、彼は戦場では一番年長者だが、最強の人でなくてはいけない、と言われました。バルボッサは海軍士官学校のようなところに行って訓練を受けたのではなく、いわゆる“ストリートファイター”として自分の力を磨いていったので、戦ってる最中に相手の顔に砂を投げつけたり、箱を押したりする戦い方で相手に勝ちます。彼のアドレナリンや、彼に対する恐怖心といった、精神面で相手を圧倒することができる、と言われました。実際に映画を見ると、バルボッサの剣術はすばやい動きとなっています。
――自分ならどのキャラクターと戦ってみたいですか。
ラッシュ 実際に1作目では真剣にジャックと向き合って戦ったのですが、2作目では東アジア商会の人と戦ったり、船から突き落とすということはありました。また3作目ではデイビー・ジョーンズや、彼の作ったユニークな生き物との戦いもありました。ただ、ゲームでもあったように、誰かと戦うと言うよりも、自分の道に入ってくる人、邪魔な人と戦う、というところでしょうか。
――このゲームをプレイする子どもたちにメッセージがありましたらお聞かせください。
ラッシュ このゲームがどのレベルまで行くのかということや、実際の映画とどれだけ物語が近く展開されるかということや、「パイレーツ・オブ・カリビアン」3部作がどこまで織り込まれているのかは分からないのですが、わたしの11歳の子どもに対しては、厳しい目で見ているんです。どういったレベルのものなのか、どのようなレーティングがされているゲームなのかなど。彼は「“ただの暴力”じゃなくて、“楽しくてちょっと乱暴”というのがおもしろいんだ」といいます。それはわたしにも理解できます。わたしもスラップスティックの古いアニメが好きですが、そういったものでも誰かをたたいたりすることがありますよね。それにチェスをしていたって、頭の中ではかなり攻撃的なことを考えていたりします。実際のグラフィックスになると、架空のバイオレンスが存在して、そこに凶暴性があったりすると思いますが、ゲームというものと実生活は違います。実際に剣で刺されたりしたら痛いですから。それを知って欲しいです。
――ご自身はゲームで遊ばないのですか?
ラッシュ 自分ではプレイしませんね……。WiiやXbox 360には追いついていません。息子のように親指が開発されていませんから、息子ほどすばやく動かせないんです(笑)。自分でプレイしたのは「パックマン」止まりです。
ただし、息子がプレイしているのを見るのは好きです。先ほどのグラフィックスを見ても、船が360度、3Dで立体的に表現されていますし、水の質感もすばらしいですね。昔あったTVゲームの「ピンポン」のようなものからずいぶんと世代が変わりました。
――モーションキャプチャーを使ってゲームを作るときもありますが、次回「パイレーツ・オブ・カリビアン」のゲームを作るときがあるとしたら、ご自分で動きを付けたいと思いますか?
ラッシュ 映画の撮影ではモーションキャプチャーの技術は使っていないんです。1作目では自分の動きをスキャンするために、ぴっちりしたスーツを着たこともありますが。そのときは特に、骸骨になったときにはどのような動きになるのかを作るために、顔の動きを撮りました。ゲームでもそのようなことをして、わたしの肉体的な要素を反映するのはおもしろいことではないかと思います。ただ実際は、わたしはゲームの中のキャラクターのように俊敏には動けませんが(笑)。
ところで、先日わたしは家族と明治神宮に行ったんですが、「オーストラリアとはずいぶんと木の種類が違うね」と息子に言ったら、彼は「これはみんなイチイだよ」と言いました。「なんで知ってるの?」と息子にたずねると、「オンラインゲームで知ったんだ」と答えました。日本の神社にある屋根の形も知っていました。「これもオンラインゲームでおぼえた」とか。「ゲームってとても勉強になるね」と息子は言っています(笑)。こうしたゲームで遊ぶことにより、武器だけではなく、歴史や文化についての知識を深めています。彼にとってみれば、ゲームは異文化や違う時代について学ぶ、新しい形の百科事典なのかもしれません。
ところで、5月23日に日本武道館で開催されたアジア・プレミアの様子もお伝えしておこう。当日は約6000人の観客がつめかけ、アリーナをぐるりと囲んだレッドカーペットに眼が釘付けとなっていた。お目当てはもちろん、5月26日から全国公開される「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」に出演するジョニー・デップやオーランド・ブルームだ。
アジア・プレミアには前出のジョニー・デップやオーランド・ブルームのほかに、ビル・ナイやジェフリー・ラッシュをはじめ、監督のゴア・ヴィーヴィンスキー、プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーらが来日し、舞台あいさつにも登壇した。
会場にはこの日を心待ちにしていたファンだけでなく、メディアもテレビカメラが150台、スチールカメラが100人とカメラの砲列が連なり、スターの一挙手一投足に注目が集まっていた。レッドカーペットを歩く出演者らに取材を行うサウンドバイツも白熱し、多くの取材陣がコメントを取ろうとあの手この手で声をかける。
今回来日したキャスト、スタッフともにファンサービスに重点を置いているようで、サインや握手を気軽に応じる姿を見ることができた。2階席のファンにまで手を振るなど、長い時間を使ってのレッドカーペットとなった。
その後行われた舞台あいさつでは、デイヴィ・ジョーンズ役のビル・ナイが「ボブ・ディランやローリング・ストーンズが立ったこの場所(武道館)に来れて光栄です」と、見事な日本語での挨拶を披露すると、続くプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーらも覚えている日本語を駆使し、拍手と笑いを誘う。
出演者がメモを見ながら日本語で挨拶したことに関してジョニー・デップは「僕が日本語を教えたんだ。指導のおかげでうまくしゃべれた」とコメントし会場をわかせていた。
パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド | |
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プラットフォーム | Wii/ニンテンドーDS |
ジャンル | アクションアドベンチャー |
発売日 | 6月7日発売予定 |
価格(税込) | Wii版:6090円、ニンテンドーDS版:5040円 |
CERO | B区分(12歳以上対象) |
プレイ人数 | Wii版:1〜2人、ニンテンドーDS版:1〜4人 |
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