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原点回帰となったアトリエシリーズ最新作は、世の言うところのいわゆるツンデレ系か?「リーズのアトリエ 〜オルドールの錬金術士〜」レビュー:(5/5 ページ)

プラットフォームもニンテンドーDSに変更され、新たな路線で進もうとしている「リーズのアトリエ」の中身へ迫る。果たして、方向転換は上手く行われたのだろうか。今回は趣向をこらして2人のライターによる比較検討でお送りします。

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 無事に材料を採取できたならば、メインの調合が待っている。これまでの反省からか、調合は材料と個数を選ぶだけと、非常に簡単。もちろん、新しいレシピを知れば新規アイテムが創れるようになるので、ワクワク感もたっぷりだ。後は最初に述べた手順通り、移動範囲を広げて新材料を集め調合し、新アイテムを創り出して売り払いお金を稼ぐことを繰り返しつつ、イベントを堪能していくという形になる。そのイベントも、物語に有利に働く話から思わず笑ってしまうものまで、各種用意されているのがうれしい。調合の合間に話すことで、作業のマンネリ化も防がれている、賢い仕組みと言えよう。

 採取や調合時には、ある確率でミニゲームが始まることがある。どれもルールは簡単で、一度説明を読めばすぐに遊べるようなものばかり。ただ、思ったよりも頻繁に起きるので、ちょっとだけうるさい印象もあった。マリー並に発生頻度が抑えられているほうが、貴重な感じがして良かったと思ったのだが、このあたりは人それぞれなのかもしれない。ルールが単純なだけに、ヘンに熱くなれるのはうれしい限り。実際に、ムキになってプレイしてしまったものも数多い。

今回のイベントの見どころは、リーズとロロットに翻弄されるアルフだろう。良いように操られているのを見ると、何となく同情してしまう
個人的にお気に入りなのは、モリッツ滝で出来る材料拾い。同じものを拾い続けると、あっという間に材料を99個ためられる。しかし、怪しい動きをしながら落ちてくるので、避けるのがなかなか熱い
釜をかき混ぜるミニゲームでは、表示された丸をタッチしていくより、タッチペンを釜の中で円を描くようにぐるぐる回している方が効率が良い

内容の良さに、プログラムが追いついていないような印象も

 これまで見てきたとおり、初期作品のおもしろさを引き継ぎつつ、今風に仕上げたタイトルになっていると言える本作。しかし、ニンテンドーDSという初めてのプラットフォームだからなのか、こなれていないところも感じた。

 中でもゲーム全体に流れるテンポの悪さが気になった。というのも、至る所でフェードインが入るため、とにかくサクサク進まないといった印象。お店で仕事を受けたり、アイテムを買ったりと、とにかく頻繁に画面が切り替わるのに、そのたびにエフェクトがかかるのは非常に疑問だった。

十字キーとボタンでプレイする場合、ショップでは欲しいアイテムにカーソルを移動させて、Xボタンを押す。するとアイテムの所に黄色い矢印と数字が表示されるので、十字キーの上下で1ずつ、左右で10ずつ数を増減させられるようになる。これを知らないと、いつまでたってもショップでアイテムが買えない……
お店に入ったりアトリエを他のキャラが訪ねて来るときなどは、ちゃんとしゃべってくれる。お気に入りの声優さんであれば、なおさらうれしく感じるはず。これで歌が入っていれば完璧なのだが、それは贅沢というものだろう

 また特筆すべきことではないが、タッチペンでの操作を前提として作られているらしく、十字ボタンとキーでプレイすると操作性が落ちる。LRやXYボタンを無理に使わせる必要はまったくないと思うのだが……。

 アトリエシリーズ伝統の、オプション画面で「どばっ」と「たらたら」から選択できる文字表示速度も、今作ではスライダーになっている。それはいいのだが、最高速にしても文字が“どばっ”と表示されない。何より、予期せずフリーズしてしまう現象に見舞われたのも痛い。内容が非常に良いだけに、もったいないとしか言いようがないのが残念だ。こまめにセーブしていればフリーズは怖くないのだが、一度セーブスロットを決めてしまうと他の個所にセーブができないという、なぜか融通の利かない仕様になっているのも不思議だった。

 正直、ゲーム自体の魅力は非常に高く、プレイしていてハマっただけに、インタフェースの悪さだけが浮き彫りになってしまった。とはいえ、そこさえ目をつむってしまえば抜け出せない面白さにやみつきになることは間違いないので、次回作があるならばぜひともリベンジを果たしてほしいところ。インタフェースの面でとっつきにくいところがあるが、一度はまればその魅力の虜となる……まさにツンデレ系みたいなタイトルなのかもしれない。まだまだ新規プラットフォームなのだから、これからに期待したい。なお、参加している声優さんたちは非常に豪華なので、ファンならばそれだけでも購入する動機になるだろう。声は思ったよりもクリアで、このくらいならば納得ができるクオリティだと感じた。

篠崎薫

マイナス点も多いがキャラクターの可愛さに1票

 本作はニンテンドーDSでのシリーズ1本目ということもあってか、操作性などでひっかかる部分が多い。画面表示も親切とはいいがたく、もう少し快適にプレイできたらよかったのになあと思う。戦闘のテンポも、お世辞にもいいとはいえない……。また、たまにフリーズするのも大きなマイナス点だ(こまめなセーブを!)。やりこみ派には、エンディングが複数あるのに、セーブデータがコピーできないのは辛いところだろう。

 ニンテンドーDSになって「アトリエ」を初めてプレイするというユーザーも増えるだろうから、作品の中身と本質的に関係ない操作性などの部分で「アトリエ」シリーズの評価が下がってしまうのはとても残念だ。

 ただ、今作は主人公のリーズを始め、ロロット、アルフなど、キャラクターの可愛さがこれまで以上に光る。イベントの多さも二重丸。チーズケーキや、生きてるモップなど、いろいろなアイテムを作れる錬金術も相変わらずハマる。アイテム図鑑やモンスター図鑑も結局全部埋めたくなる。ああ、なんだかとっても惜しい。これがもっとユーザーフレンドリーだったら、結構名作になってかもしれないのに。

柚木あず

作りたいアイテムを選ぶと、材料が自動的にピックアップされる。後は数を選択するだけと、悩む必要がないのはうれしい。ただ、数値選択がLRボタンになっているのは首をかしげるばかり……

 言わずもがな。両者ともテンポの悪さを挙げ、作品的には良作ながらもいろいろ惜しい! という結論で締めている。篠崎氏はここで本作のキモともいえる「調合」に触れ、その出来を持ち上げておきながら、インタフェースの悪さに苦言を呈している。調合がよかっただけに、さらにその上を目指してほしいというユーザー代表の意見であろう。柚木氏にしても同様で、面白いからこそ実に“もったいない”作品となったという感想だ。

 これはある意味、ぜいたくな結論といえる。こうしてレビュアー2人を比較してみると、バランスが難しいということに気がつく。彼らは作品をオススメしたいからこうしてゲームをやり込み、内容を理解し、そして良いところも悪いところも全部引っくるめて読者のもとにさらけ出す。しかし、すべてを書いているわけではないだろう。彼らなりのブレーキなり、アクセルなりを駆使しているはずだ。もしかしたらもっと言いたいことがあるかもしれないし、実は苦労して絞り出しているかもしれない。ただ、レビューした作品を広く読者に参考にしてもらい、できることなら手に取ってもらう手助けになればと常に考えていることは確かだろう。

 できることなら、レビューを読んでいただき面白いと思っていただいた方は、ソフトを購入し遊んでもらい、彼らの書いたレビューが信頼に値するものなのかを振り返ってもらいたい。

「リーズのアトリエ 〜オルドールの錬金術士〜」
対応機種ニンテンドーDS
メーカーガスト
ジャンル新感覚RPG
発売日2007年4月19日
価格(税込み)通常版5040円、限定版7140円
(C)GUST CO.,LTD. 2007

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