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この銘柄は買いか?――必殺技も登場する株取引ゲーム「株トレーダー瞬」レビュー(2/2 ページ)

どちらが利益を多く上げるか? トレーダー同士が激しくぶつかり合う株バトルをテーマにした“株トレードアドベンチャー”ゲーム「株トレーダー瞬」。今、1人の若者がトレーダーとして欲望渦巻く株式市場に身を投じる。

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いざトレード開始!

 それではメインの株取引について見ていこう。トレードパートはアクション性が高い。ニンテンドーDSの上画面では株価の動きを表す矢印(チャート)や、市場全体の株価指数を表すTOPIX、移動平均線(特定期間の株価を平均化した線)などがリアルタイムで変動する。

 下画面は登録した銘柄の名前と値段、株を買う「BUY」、売る「SELL」のアイコン。これらをタッチして株を売買する。上画面の矢印はグニャグニャとかなり速く動く。この動きに的確に反応して売り買いを繰り返す。トレード時、1日は2秒程度で過ぎるため、とにかく値動きは荒くスピーディ。株価が10万から20万、30万とグングン上がり、いったん反転すれば、みるみる下がる。利益と損失のジェットコースター。スリル満点で、勝ったあかつきには驚くほど爽快感がある(もちろん、ジリジリと値動きが重い株もある。そんな時は「上がれ!」とひたすら念を送るのだ)。

 ちなみにマニアックな話になるが、どの値段にいくら注文が入っているかを示す“板”はなし。注文方法も指値はなく、ボタンを押せばその値段で売り買いできる。この部分は、株マニアには物足りないが、バトルのスピード感を出すために省かれたのだろう。

 プレイの基本は、移動平均線と、株価が押し戻されることが多い抵抗線をチャートが勢いよく突破したら買い。これは現実にも当てはまる必勝法だ。ゲーム内では「パリーン」と音を立ててチャートが線を突き破っていく。この瞬間を逃すな!

 また、チャートがグラグラ揺れる演出はニュースの発表が近いという合図だ。TOBか、不祥事か、はたまた大地震発生か? 中身は出るまでわからない。値上がりに賭けて買い占めるのも手だが、筆者は一応慎重に持ち株をいったん売ることにしている。ここはプレーヤーの性格が出るところ。リアル相場で大暴落を食っている身としては、どうしても持ち越せません。

 銘柄の種類は豊富。低迷中だが開発力に定評がある「丸菱自動車」、12月に強いゲームメーカー「天王堂」、白い犬のマークが目印の配送業「シロイヌ宅配」、独特の値動きが一部の個人投資家に人気の「カツヤ」……。扱える銘柄はショップで買ったり、トレーダーとの対戦に勝ったりすることで増えていく。それぞれ値動きにはクセがあるので、そこを把握するのも攻略法の一つだ。

 ゲーム的な要素としては、プレーヤーに「精神力」というゲージがある。敵が利益を確定するか、自分が損をするとこのゲージが減り、0になるとダウンして一定時間トレードができなくなる。ここは格闘ゲームに近い。画面をこすったり、ガチャ押ししたりしてダウンからいち早く回復しよう。

 また「エントリーボーナス」も見逃せない。これは、チャートが移動平均線や抵抗線に接触し、火花が発生した瞬間にタイミング良く買うと、利益がアップするというもの。反射神経がかなり重要なのだ。

画像 舞台の北浜市。あちこちにトレーダーが点在し、会話や対戦もできる。時には、特別なイベントが起こることも
画像 株取引をするトレードルームや対戦を行うバーサスルームが設けられたトレードセンター。利益を追求する欲深い人間たちが集まり、そして去っていく場所だ
画像 本作のチャートは矢印型。出来高が増えると線が太くなり、動きが勢いづく。矢印が向かう方向を見極めて買うか空売りするかを決めよう

チャートが描く人間の心理

 バーサストレードには、さまざまな試合形式がある。一定期間内にどれだけ資産を増えたかを競うベーシックな「スタンダード」のほかに、お互いの精神力を削りあう「精神戦」、損した方が勝ちとなる「クレイジーマカロフ」、先に8回連続で利確したほうが勝ちとなる「8ショット8キル」など、単に利益を上げるだけではダメだ。ルールに工夫が凝らされていて、飽きないようになっている。

 勝負に欠かせないのが必殺技の「トレーディングアーツ(TA)」。一定期間、精神力が減らなくなる「想定の範囲」、掲示板で宣伝して出来高を増やし、株価を変動しやすくする「お祭り」……。花びらが画面を覆う「華吹雪」のような敵専用の強烈なTAも存在し、プレーヤーを苦しめる。

 必殺技は3種類まで装備可能。ルールに合わせて、どの銘柄を扱うか、どの必殺技を装備するかといった戦略も立てなければならない。ここがこのゲームの奥深さだ。敵が空売りしている株を大量に買い、さらに「買い煽り」をして相手を潰す。精神力を削る必殺技「揺さぶり」で相手をダウンさせ、トレード自体を封じる。作戦はさまざま。対戦形式になっているからこそ、戦略性も高まるし白熱もする。

 リアルな株取引とはまったく違うスタイルなのに、プレイしているときに抱く感情が現実のデイトレードとよく似ているから不思議だ。「さすがにこれ以上、上がらないだろう」と思い売ったら、スルスルと株価が上昇。悔しくて慌てて買い戻すと今度は暴落する。つい昨日もこんな目にあったような……。

 バーサストレードが終わると収支はスコアとして表示され、記録も残る。ハイスコアを目指すというゲーマー的な遊び方にもしっかり対応している。

画像 元カリスマホストのロミオにフリーバーサストレードを申し込む。対戦ルールは「クレイジーマカロフ」。この対戦では損することが快感になってしまう!?
画像 元ファンドマネージャーのベテラントレーダー油目と「三本の矢」ルールで勝負。3つの銘柄それぞれで出した利益を比べ、2勝したほうが勝ち。バランス感覚が問われる
画像 桐神楽花子のTA「華吹雪」。下画面が花びらで覆われるので、急いでタッチペンで画面外に弾き出さねばならない。華麗だが厄介な大技だ

ほかにはないトレード対戦という切り口

 “株取引”という一見堅そうな切り口をエンターテインメントに仕上げた本作だが、遊んでいてちょっとどうかなと思ったのは、必殺技がかなり現実離れしてしまっている点だ。たとえばこちらの持ち株の売りと買いを変えてしまう敵の必殺技「シャッフル」は、動かされるはずのない手持ちの株に敵が直接手を加えるという理不尽さが気になる。それから、適正株価に値段を戻す瞬の必殺技「開眼」も、いきなり株価が変わり、前提となっている市場の値づけを台なしにするようで抵抗感がある。スポーツマンガでもとんでもない必殺技が出てくるが、たとえばスコアボード自体を書き替えるような技はタブーだろう。あくまでフィクションなので、にぎやかでいいという気持ちもあるにはあるが。

 操作性に関しては、おおむね良好だ。ただし、一括決済の反応をもう少しよくしてほしかった。売ったつもりが売れていなかったというケースを何回か体験した。

 何はともあれ、株というテーマの新しさ、格闘ゲームのようなトレードのスピード感、現実にあった事件のパロディという面白さも相まって、クリアまで10時間前後、たっぷり楽しませていただいた。さらに高いスコアを目指す2周目も面白い。銘柄のコンプリートもある。口コミでジワジワ広まって、第二の「逆転裁判」のような存在になるかもしれない。今のうちに買いを入れておくべきかも?

株トレーダー瞬
ジャンル 株トレードアドベンチャー
発売日 発売中
価格(税込) 5040円
CERO A区分(全年齢対象)

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カプコン | 逆転裁判 | ニンテンドーDS


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