「E3」これだけ読めば大丈夫?:E3を総括する 〜北米の北米における北米のためのExpo〜(2/4 ページ)
現地時間の7月10日〜12日の期間、北米カリフォルニア州サンタモニカで「E3」が行われたが、昨年までのものとは大きく様子が違っていた。今年のE3を紐解きながら、今後のゲーム市場動向を推測する。
任天堂
サンタモニカのSanta Monica Civic Auditoriumにおいて、7月11日(水)午前9時から開催された「任天堂E3 Media Briefing」。Nintendo of America社長のレジー・フィザメイ氏がメインのプレゼンテーターとなり、任天堂の岩田聡代表取締役社長や、宮本茂代表取締役専務と、オールスターキャストがそろって行われた(詳細はこちらの記事を参照)。
ゲーム市場と任天堂
快進撃を続けるニンテンドーDSとWiiではあるが、フィザメイ氏は「世界のゲーム市場が顕著に大きくなっている要因として、携帯ゲーム機と、ソフトラインアップがもたらしたユーザー層の拡大が起因している」と語る。ニンテンドーDSは世界で4000万台も売れていることを考えると、これに対しては誰もが異論がないところである。また、今までゲームをしたことのなかった女性や高齢者も、ニンテンドーDSの「脳トレ」シリーズや「Wii Sports」によってユーザーの仲間入りをしているのは誰もが身近に見ているところでもある。
こういったライトユーザー向けと取られるソフトを発売しているせいなのか、岩田氏が「任天堂はゲーマー向けのパッションを失ってしまったのか、と聞かれることがあるのですが……」と語りだし、任天堂が固定された既存のユーザーターゲットにのみ焦点を置かず、「新しいゲームを作っていく」ことに注力し、ゲームをする人を増やしたいという信念のもと取り組んでいることを強調。今遊んでくれているユーザーはもとより、これからその輪の中に入ってくる人たちを増やしたい――。ひいては市場の拡大になるとの見解だ。任天堂がゲーム業界でのシェア合戦ではなく、ゲーム業界自体の底上げを図っているという点で非常に感銘を受けた。
任天堂 今後の戦略
1.ソフト戦略
現在北米で発売されているWii向けのタイトルは約60タイトル。フィザメイ氏は今後100タイトル追加される予定と語る。供給ソフトが足りないと囁かれていたWiiではあるが、やっとラインアップが出そろってきそうだ。さらに現在300タイトルも発売されているDS向けソフトに関しては、さらに140タイトルが投入される予定とのこと。
- Wii
今後のラインアップとして、任天堂の「Wii Fit」、「Mario Kart Wii」、「Super Mario Galaxy」、「Super Smash Bros」、「Metroid Prime 3: Corruption」などに加え、サードパーティからも「Madden NFL」(EA)や「FIFA Soccer」(EA)、「Mario & Sonic at the Olympic Games」(セガ)、「Guitar Hero III: Legends of Rock」(Activision)、「SoulCalibur Legends」(バンダイナムコゲームス)などのソフトが登場すると発表した。また、2008年初めには、「Dragon Quest Swords」(スクウェア・エニックス)も発売されるとのこと。
特に「Wii Fit」は、宮本氏が自ら説明を行い、BMI管理からヨガやストレッチなどの運動も含んで家庭で楽しみながら健康管理をすると紹介。脳トレに続いて新たな方向性を示す任天堂のソフト戦略の一端を確認した。とはいえ、従来のゲーム好きに向け「スーパーマリオ」シリーズや「メトロイドプライム」など、正統ゲーム路線も忘れてはいない。また、大きなアライアンスとして報道されたマリオとソニックの2大スターが競演する北京オリンピックタイトルも初めてお目見えされた。日本人としては「ドラゴンクエスト」最新作も楽しみなところではある。
- ニンテンドーDS
「Brain Age」、「The Legend of Zelda」などの任天堂タイトルに加えて、サードパーティから「Ninja Gaiden Dragon Sword」(テクモ)や「SmackDown2008」(THQ)、「The Sims 2 Castaway」(EA)なども紹介されていた。
2.ネット戦略
フィザメイ氏が、「任天堂はネットワークをやらないのか?」と質問を受けることが多く、「もうやってるのにな」と思うことが多いと語る。ある意味、声高にネットワークやオンラインという言葉を叫ばずに、するりと始めているというところもライトユーザーが任天堂ハードを障害を感じずに購入できる鍵なのかもしれない。
現在、Wiiのバーチャルコンソールでは112タイトルが提供されており、延べ560万ダウンロードを記録しているとのこと。1タイトルあたり平均で約5万ダウンロードをマークしていることになる。非常に好調と言っていいだろう。
さらに、先ごろ発表があった「WiiWare」。Wii向けダウンロードコンテンツが制作でき、Wii Shop Channel経由での配信・販売が可能になるとのこと。ビジネスモデルや承認プロセスなどが明らかになっていないため、次世代ゲーム機向けに大きな展開ができない小規模ゲーム開発会社に朗報となるか否かは明言できないものの、オリジナルのお手軽なWii向けゲームを求めるユーザーにもうれしい情報である。
また、今回のカンファレンスで発表された(GDC 2007で宮本氏からほのめかしはあった)「check Mii out」。ユーザーが作ったMiiを世界中で評価して投票する、また、その選ばれたMiiを自分のWiiに連れてくることもできる、というもの。 詳細はまだ明らかではないので、続報を待ってほしい。
タイトルそのものもオンライン対応を、今後積極的に行っていく方向で、「Mario Kart Wii」、「MARIO STRIKERS CHARGED」、「FIFA SOCCER 08」(EA)などの対応ソフトが紹介されていた。
3.ペリフェラル(周辺機器)
- Wii Zapper
Wii向けのシューティングゲーム用に発売される。ヌンチャクとWiiリモコンを組み合わせて使われる。カプコンの「バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ」、セガの「ゴースト・スカッド」、EAの「Medal of Honor」などが対応ソフトとなる予定だ。まずは任天堂ソフトに同梱すると明言した。別売りの場合の価格は、19.99ドルと発表されたが、これには会場から大きな拍手が。
- Wii Wheel
まずは「Mario Kart Wii」に同梱される予定のステアリング型コントローラ(実際にはWiiリモコンに装着する)。
- Wii Balance Board
「Wii Fit」向け。BMIや身体の重心のバランスを計測する。また、ヨガやストレッチをする際のマットとしても活用する。他タイトルへの展開も予測される。
総括
Wii、ニンテンドーDSとも堅調にインストールベースを増やしているところで、ハードスペックのアップグレードやゲーム以外のコンテンツなどの話はまったくなく、純粋に「ゲーム」会社のゲームに特化したカンファレンスだったと感じた。
3つの周辺機器の発表は正直驚くべきものであったが、ユーザーが遊びを広げていくため、さらに言うと今後ユーザーになる人々に対して、ゲームへの取っ付きにくさを排除していくための戦略の一部であることが感じ取れた。今回の任天堂のメッセージは「ゲームというものの固定概念を破って、新たなゲーマーを創出する」ということであろう。
ファーストパーティー1人勝ちと叩かれることも多い任天堂だが、今回のカンファレンスではサードパーティーのタイトルも多く含んだバランスの取れたカンファレンスではあった。しかしながら、任天堂のハードにおいて、ソフトメーカーとしての任天堂のタイトルは、強力かつイノベーティブなものが多いことを痛感した。今後サードパーティが、この特殊なハードや周辺機器を生かして新規ユーザーを勝ち取っていくタイトルが多く発売されることを期待する。
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