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「E3」これだけ読めば大丈夫?E3を総括する 〜北米の北米における北米のためのExpo〜(3/4 ページ)

現地時間の7月10日〜12日の期間、北米カリフォルニア州サンタモニカで「E3」が行われたが、昨年までのものとは大きく様子が違っていた。今年のE3を紐解きながら、今後のゲーム市場動向を推測する。

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ソニー・コンピュータエンタテインメント

 SCEAが主催するE3 Media and Business Summit briefing は、多くのメディア関係者、サードパーティなどが参加して行われた。カルバーシティにあるソニーのカルバースタジオにて7月11日(水)午前11時30分から、SCEA社長兼CEOのジャック・トレットン氏が主導してプレゼンテーションを展開した。トレットン氏の他、SCE代表取締役社長兼グループCEOの平井一夫氏、SCEワールドワイドスタジオ社長のフィル・ハリソン氏も登場して、SCEの今後の戦略について大いに語った(詳細はこちらの記事を参照)。

PlayStation ファミリーの実績

 次世代機PS3を発売したSCEだが、過去のものと思われがちのPS2に関してはいまだに販売数を伸ばしているとのこと。God of WarやSingStar(日本未発売)、Buzz(日本未発売)などの優れたタイトルが現在でもハードを牽引し続けていると語る。さらに160もの新しいタイトルが北米で発売される予定で、PS2は今後も躍進が期待されるハードであることを印象付けた。

 世界で1億台販売されているハードなだけに、単純に次世代機へ移行するのではなく、PS2向けとPS3向けのソフトを差別化しつつ並行して盛り上げていくというゲーム業界的には初の試みとなるわけであるが、昨今のPS2本体もそうだがPS2向けのソフトの売上本数を見ても、PS2がまだ陳腐化されたコンソールでないということが証明されていると言えるであろう。

 また、先ごろ169.99ドルに値下げされたPSPに関しては、140タイトルの追加が見込まれているという。北米におけるキラータイトルの出現が望まれるところだ。

SCE、今後の戦略

1.ハード戦略

  • PS3

 E3の前に発表になったが、PS3の値下げが発表された。また、韓国で6月17日に発売されているPS3のスペック(80GBハードディスク付)に関しても発売されることが決定した。下記に北米における過去のPS3の発表についてまとめた。

  • 現行 PS3(20GB):今後販売しない
  • 現行 PS3(60GB):599ドル→499ドル
  • 新規 PS3(80GB):599ドル

 現行PS3からは100ドルの値引きが発表され、リテイラー(小売店)からも好評とのこと。また、韓国で先に投入されていた80GBモデルに関しては、北米での投入を望む声が聞かれていた。Xbox 360がエリート(120GB)を発売したこともあり、SCEとしては北米に投入するのは必至だったのではないかと推察される。

※その後の現地での報道ではSCEの平井社長が、「60GBのPS3はもはや製造していない。今後は80GBのみのラインアップになる」と発表した。
  • PSP

 新型PSPがこのカンファレンスで発表された。新型とは言え、大きなモデルチェンジではなく、軽量化と薄型化した新デザインのPSP。見た目ではそれほどわからないが、重量は189グラム、厚さは18.6ミリと、現行機より33%軽く、19%スリムになった。平井社長は「手に持っていただければ違いがよく分かる」とコメント。1日も早く手元で実感したいところだ。

 軽量化、スリム化以外のところでは、UMDのローディング時間が改善されていること、また、外部映像出力端子が搭載されて、UMDからPSP上で動く映像やゲーム、さらにメモリースティックにセーブされているデータをテレビに接続して、出力することが可能になったとのこと。UMDとDVDを別々に買わなくても、PSPとテレビの両方で楽しむことができるようになるわけだ。また、家族や友人とPSPのゲームや映像をテレビという画面で共有して楽しめるというところも新しいところなのかもしれない。

 また、SCEお得意のカラーバリエーションも準備されており、現行の「ピアノブラック」、「セラミックホワイト」に加えて「アイスシルバー」も発表された。PSP向けタイトルのDaxter、メモリースティックDuo(1Gバイト)を同梱した「Daxter PSP Entertainment Pack」が発売される。また、「Star Wars Battlefront: Renegade Squadron」と同梱されるPSPはスターウォーズモデル。いずれも限定版で発売される。

 DSが大きくシェアを伸ばしている携帯ゲーム機市場で、ニンテンドーDSよりも高機能であるPSP。新型PSPが起爆剤になってしのぎを削ってもらいたいところである。

2.ソフト戦略

  • PS3

 カンファレンスでは、年内に100タイトル以上のPS3タイトル発売が予定されていること、北米160タイトル以上発売されることが言及されていた。また、「Metal Gear Solid 4」(KONAMI)や「Unreal Tournament 3」(ミッドウェイ、開発:Epic Games)、などのPS3専用(「Unreal Tournament 3」はPC版は発売されるが、家庭用ゲーム機ではPS3のみ)タイトルを発表してファーストパーティタイトルである「Heavenly Sword」、「Folklore」、「グランツーリスモ5」、「SOCOM US Navy SEALs: Confrontation」などに加えて強力なラインアップであることを強調していた。タイトル不足が嘆かれていたPS3だが、値下げ効果とタイトル強化で年末に向けて反撃が見られるかもしれない。

  • PSP

 ファーストパーティーから「SOCOM: U.S. Navy SEALs Tactical Strike」、「Wipeout Pulse」、「Syphon Filter : Logan's Shadow」、「NBA '08」、「God of War: Chains of Olympus」、サードパーティから「Silent Hill origins」(KONAMI)、「Tiger Woods PGA TOUR 08」(EA)、「Sonic Rivals2」(セガ)、「Sims 2 castaway」(EA)、「ファイナルファンタジータクティクス獅子戦争」(スクウェアエニックス)などが紹介されていた。大型タイトルの移植、または外伝的要素を含むタイトルが多く、ハードを牽引するオリジナルタイトルの出現が待たれるところだ。

  • NCソフトとの独占契約

 リネージュで知られるNCsoftが、PS3とPSPに対して専用のオンラインゲームを投入するとの発表があった。そのNCソフトがPS3/PSP専用でタイトルを供給するとなれば、大きなキラータイトルになりえるであろう。また、前述したが、Unreal Engineで知られるEpic Games(Xbox 360の「Gears of War」の開発会社)が、Unreal Tournament 3が専用で供給されるという発表も非常にインパクトのある話であった。このようなネットワークを駆使したマッシブなゲーム群がPS3に大量に供給されることになれば、Xbox 360に完全に移行しつつあるコアユーザーがPS3に回帰することが大きく期待される。

3.ネット戦略

 GDCで発表されたPlayStation Home。順調に開発は進んでいるとハリソン氏は強調。Home内でユーザーが撮った写真を貼り付けたりブログに掲載することができ、Homeから直接ゲームや映画のトレイラーなどにアクセスできるとの紹介があった。すべてはユーザー個人によってカスタマイズでき、そのカスタマイズされた空間の中からいろいろなエンターテインメントにアクセスできるということである。まさにHome(家)である。

 また、PLAYSTATION Networkのダウンロードに関しても、オリジナルの新しい発想を生かしたパズルゲーム「echochrome」や、「WipeOut HD」などが新たに投入されるとのこと。過去の資産をコンバージョンするのみならず、ダウンロード用のオリジナルタイトルを投入すれば、必ずやダウンロード市場を盛り上げてくれることになるであろう。「SOCOM US Navy SEALs: Confrontation」や「Warhawk」など、今後年末までに北米で発売される予定の40タイトルに関しては、PLAYSTATION Networkを通じてネット対戦も可能となるとの発表があった。

 興味深い内容としては、今後発売されるタイトルに関しては、パッケージ(BluRayディスク)とDL両方で提供するという説明が多かったが、これは、SCEがパッケージからの脱却と本格的DL時代への移行へと動きつつあることを予感させるものである。

総括

 今回のE3におけるSCEの発表は、ハード自体のバージョンアップや値下げを含んでおり、他ハードメーカーと比べるとかなり大きくインパクトのある発表であった。また、ソフト戦略においても、「TAPA」や「echochrome」などのSCEらしい新しい発想のゲームが紹介されており、今後のラインアップ幅に期待が高まる。

 加えて、NCソフトとの独占契約などはネットワークをふんだんに利用したソフト展開が一気に加速される予感を持たせる。既存のPCオンラインゲームの課金システムの下、今後SCEが主導でどのようにビジネスモデルを組み立てていけるのかが鍵になるものと考えられる。

 しかしながら、PSPの新型でUMDの映像をテレビで見ることができるのはいいのだが、しばらく前にいくつかの映画会社がUMDから撤退すると発表していたのも事実であり、どうやって映像に強いPSPがUMDで巻き返しを図るのか? と思われていた。UMDやダウンロード映像の強化(映画会社やテレビ局等とのアライアンス)などのソフト面でのPSPのテコ入れが何も見られなかったのは非常に残念であるが、今後の追加発表に期待したい。

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