「E3」これだけ読めば大丈夫?:E3を総括する 〜北米の北米における北米のためのExpo〜(4/4 ページ)
現地時間の7月10日〜12日の期間、北米カリフォルニア州サンタモニカで「E3」が行われたが、昨年までのものとは大きく様子が違っていた。今年のE3を紐解きながら、今後のゲーム市場動向を推測する。
今年のE3は“北米の北米における北米のためのミニゲームショー”
小さいE3であった。もはや過去にE3と呼ばれたものとはまったく違うものである。世界最大のゲームショーではなく、“北米の北米における北米のためのミニゲームショー”であった。
お金がかかっていないこともさることながら、北米のゲーム業界自体が人的資源をそれほど投入していないと言えよう。周辺のホテルで行われていたミーティングも、前回までのように分刻みで行われていたものではなく、「たくさんのミーティングではなく、いくつかの深いミーティングができた」(現地パブリッシャー談)とのこと。様相が変わってきたのは事実である。
8月にドイツのライプチヒで行われるGame Convention、9月に日本で行われる東京ゲームショウ2007が期待されるが、特に東京ゲームショウはどれだけの海外パブリッシャーからの参加を誘致できるかが鍵である。
欧米において日本からのソフトが過去のものと比べるとインパクトが薄くなっていることを痛切に感じる昨今、いかに海外からの関心を集めるのか、海外からのソフトを受け入れるのかが日本の孤立を阻む唯一の道と考えられる。日本で思われているほど孤立化への速度は遅くないと感じた。
各ハードメーカーの発表は、3社3様というのが率直な感想である。新しいイノベーティブなソフトに特化した任天堂と、ハードを中心にインフラとソフトを模索するSCE。そしてその中間で双方のバランスを取っているのがマイクロソフト。
任天堂の岩田社長の発言は、平たく言えば任天堂が「ゲーム市場自体の拡大」を目指してユーザー層を増やすためのソフトを作っている、ということである。任天堂はハードメーカーでありソフトメーカーである、ということを再確認したカンファレンスであった。ソフト戦略としての考え方は理解できるものの、それらを実現するハードに対して、サードパーティがどういう立場で対応していくのか……。つまり、任天堂が行っているような新しいジャンルを創出していくのか、既存のユーザーに対して既存のプロパティを投入していくのか、が問われていると感じた。
SCEに関しては、上記に述べた任天堂とは正反対の立場、つまりハードメーカーとしてハイスペックで便利なハードやインフラを提供しており、サードパーティが自由にユーザーに提供できるインフラを準備していると捉えられる。従ってサードパーティにとっては、開発費が高額になることを除けば、ユーザーに対してオープンに自らの主張するソフトが供給できる有益なハードなのだ。しかし、ハードメーカーの戦略として疑問が残るのは、前々から噂されていた映像系のダウンロードコンテンツの発表がなかったことで、“意外”であるとの声も聞かれた。Xbox 360がすでにXbox LIVEマーケットプレースにおいてさまざまな映画やテレビ番組をダウンロードコンテンツとして提供しており、成功をおさめているからというのも理由だが、今回の新型PSPに対してもPS3を中継してコンテンツがダウンロードできる、まで発表できればさらにインパクトがあったはずである。
マイクロソフトに関しては、前述したが、非常にバランスの取れたカンファレンスであった。Microsoft Game Studioバイスプレジデントのシェーン・キム氏が「我々はすばらしいゲームを制作するクリエイターに対してたくさんの資源を供給して、リスクを取ってきた」と語るように、ハードの開発やXbox LIVEマーケットプレースなどのインフラのみならず、ソフトにもお金と時間を費やしてきたことがよく分かる。これもPCゲーム、ひいてはGame Zoneで培ってきた長年の経験の賜物といえよう。しかし、Xbox LIVEマーケットプレースにおけるコンテンツに関しては日本での展開が見られず、また、発表もなかったため、Xbox 360への認知は欧米とさらなる乖離を生むことは明白である。
E3が縮小され、北米市場のメディアをターゲットにしたことによって、参加する日本人が少なくなるのは否めない。しかしながら、このような欧米のゲーム業界の動きを探る機会が少なくなることは、欧米と日本のゲームの差を肌で感じることが少なくなるということで、むしろ日本にとってマイナス面が大きいのではないか。日本で思っているほど日本のタイトルはキラーにならなくなっている(任天堂を除く)と現地業界関係者は語る。何につけてもマイクロソフトが日本市場に本格的にテコ入れをしてくれることを強く望むものだ。
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