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プレイステーション 3はまだまだ発展途上の前の段階、必ず大きく飛躍できるSCE社長 平井一夫氏インタビュー(2/3 ページ)

ソニー・コンピュータエンタテインメントの平井一夫社長に、これまで長く見てきたアメリカ市場と日本市場の比較や、プレイステーション 3の現状などについて話を伺ってきた

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日本市場向けのタイトルも多数用意している

―― 北米でプレイステーション 3の値下げが行われ、販売数が一気に拡大しました。これは、ユーザーの多くが、プレイステーション 3の初期の販売価格に対して“高い”と思っていたことの現れだと思います。それに対し、先日北米で販売が開始されたとある携帯電話では、プレイステーション 3とほぼ同じ価格ながら、買ったユーザーの多くが満足し、価格に対する不満を持っていないと聞きます。この違いはどこにあると思われますか?

平井 かたやゲーム機、かたや携帯電話ですので、世界が全く違いますから、直接比較することはなかなかできないと思います。しかし、価格も大事ですが、買っていただいた後に“買って良かった”と満足いただける部分が一番大事だと思っています。ではどうすればいいのかというと、いかにソフトを潤沢に発売できるか、という部分が重要だと思います。また、まだ買われていないお客様も、楽しいソフトがどんどん出てくれば、プレイステーション 3を買おうと思ってもらえると思います。価格が大事ではないとは言いませんが、やはりいちばんのポイントは、コアユーザー、ライトユーザー全ての人に楽しいと思ってもらえるソフトをたくさん出すことだと思います。

―― わたしもまさにその通りだと思います。では、それを踏まえて、今後の日本市場におけるプレイステーション 3向けのタイトル戦略をどのように考えられているのかお教えください。

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平井 「PLAYSTATION PREMIERE 2007」で、3時間半という長い時間をかけてプレゼンさせていただいたのは、まさにその部分です。“ソフトが足りないんじゃないですか?”という声もありましたので、今年発売のものから来年発売のものまで、今見えているタイトルをできるだけ多く紹介して、厚みを目で見て体験していただきましょう、ということでソフトの話ばかりに時間を割きました。

 アメリカで行われたE3でも、同じようにソフトの話を中心としたプレゼンをしました。とにかく一番大事なのは、品質の高いソフトを数多く出していくという部分です。「グランツーリスモ5 プロローグ」やKONAMI様の「メタルギア ソリッド 4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット」のように、初代プレイステーションから続く確立したフランチャイズのタイトルも出てきますし、プレイステーション 3で始まる新しいフランチャイズもたくさん用意しています。確立したフランチャイズの新作と全く新しいタイトルをたくさん用意するというのが基本的な戦略です。

 プレイステーション 3は、みなさんに喜んでいただけるソフトがどんどん出てくることで初めて生きてくるプラットフォームです。そのうえで、Blu-rayで映画が見られたり、静止画や音楽などの他の機能も生きてくるわけです。そういった意味でも、やはりまずはゲームありき、です。

―― 個人的に、プレイステーション 3の映像は非常にきれいだと思います。ゲームはグラフィックのきれいさよりもゲーム性が重要だと言われることが多いですが、逆に、グラフィックがきれいだからこそ、これまでとは違う体験ができるというようなことを、もっとアピールしてもいいように思うのですが。

平井 それは大事なポイントではあると思うのですが、単にきれいなだけでは、単なる映像になってしまうと思います。きれいな上に、いかに楽しいゲームであるかというところが一番大事になってきます。ある程度のレベルを超えたきれいさというのは、HD環境の中の商品ですから、あたりまえのことです。その上でいかに楽しいゲームができているかと言うところが、やはりポイントだと思います。

 極論になってしまいますが、モノクロのゲームがカラーになった、カラーってすごいけど、できることが同じではつまらないということになってしまうと思うのです。きれいであるという点も大事なのですが、それ以上にゲームプレイがどこまで深く、面白くなっているかを追求していかないと、本当の意味でのきれいで楽しいゲームにはならないと思います。

―― 9月に行われる東京ゲームショウは、一般ユーザーにプレイステーション 3の新作ゲームを大々的にアピールする場になるわけですが、今年の東京ゲームショウではどういった形でのぞまれる予定でしょうか。

平井 PLAYSTATION PREMIERE 2007でもそうでしたが、タイトル数の充実もさることながら、ゲームのジャンルも多岐に渡っているという点を、ユーザーのみなさんにも肌で感じていただききたいというのが第一です。これが原点ですし、そこがしっかりできていないとプラットフォームの基本的な成長戦略はないと思っています。

―― 日本市場向けとして、特にこのジャンルに注力していこうと思われているものはありますか?

平井 特定のジャンルに注力するということはありません。日本のユーザーのみなさんにサポートしていただけるゲームはジャンルを超えていろいろあると思いますが、日本発の、日本のユーザーのみなさんにアピールできるようなタイトルは、社内の開発チームも含めていろいろ考えていますし、今後もどんどん出していこうと思っています。

 我々のワールドワイドスタジオで開発した商品で、日本発の日本らしいタイトルがなくなっていくのではないかという懸念をされている方もいらっしゃるかもしれませんが、海外のものばかりを日本に持ってきて勝負するというようなつもりは全くありません。日本のユーザーのみなさんにアピールできる、日本発のタイトルも今後どんどん出して行きます。

―― 具体的に、現在ファーストパーティタイトルで日本市場だけに向けて開発されているタイトルはどの程度ありますか?

平井 一般的な話ですが、日本発の日本のユーザー向けタイトルであっても、海外でも同様に受け入れられるようなタイトルを作っていく方がビジネスとしてはいいわけです。ただし、ここで正確な数は出せませんが、あくまでも日本市場がメインで、その上で海外でも売れるようにしていきたいという考え方で開発されているタイトルはかなりあります。ワールドワイドスタジオは日本、ヨーロッパ、アメリカが3つの柱ですし、そのうちジャパンスタジオは日本発のタイトルのみを開発していますから、当然日本市場が主眼に置かれています。

 海外の市場の方が大きいために、昔で言う“洋ゲー”というようなものが日本にドッと入ってきて、日本のユーザーのみなさんに“これしかないですよ”というような戦略を取るつもりはありません。それではジャパンスタジオを持っている意味もありませんから。

―― では、競合他社の最近の戦略についてどのような印象をお持ちですか?

平井 初代プレイステーションの頃からそうなんですが、自分たちがやりたいこと、自分たちが発信したいメッセージ、ユーザーのみなさんに楽しんでいただきたいソフトなど、信念を持って取り組んでいますので、あまり競合他社を気にすることなくやってきています。自分たちの競争相手は他のプラットフォームホルダーだけとは思っていなくて、1日は24時間しかありませんから、他の娯楽も含めて全てが競争相手だと思っています。

 その中で、自分たちのプラットフォーム、その上で動くゲームを楽しんでもらうにはどうすればいいのか、というのは自分たちなりにぶれずに考えていますから、あまり意識せずにやってきています。

―― このところ、サードパーティ製タイトルのマルチプラットフォーム戦略が加速しているように思いますが、その点についてどのようにお感じでしょうか。

平井 今の各プラットフォームの開発コストを考えると、サードパーティ様がマルチプラットフォーム化で考えるというのは、一般論で考えると自然な流れだと思っています。ただし、ここで重要になってくるポイントが2つあります。1つはファーストパーティでプラットフォームを力強く牽引するようなタイトルをどんどん作って行かなければならないという点です。そしてもう1つは、サードパーティ様のマルチプラットフォームタイトルであるとしても、プラットフォームの特性を生かすような面白い味付けをしていくということです。

 例えば、プレイステーション 3ですと、SIXAXISが持つ機能を活用したり、Blu-ray Discを使っていますので容量に余裕がありますから、ゲームのレベルを増やしていただいた、開発者のインタビュームービーを入れたり、映画と連動しているようなタイトルであれば、映画の予告編のようなものをフルHDで入れたりといったような差別化はできます。そういった中で、プレイステーション 3版ではこういった面白いものがあるというような部分をアピールできるように、サードパーティの皆様との対話は絶対に必要だと思っています。

―― そう考えると、ファーストパーティタイトルの重要度が高まっていくように思いますが。

平井 ファーストパーティタイトルの重要性は確かに高まってきます。しかし、もともとプレイステーションビジネスは、サードパーティ様のライブラリに支えられて、ここまで成長してきたという部分もありますので、急にファーストパーティのみに注力するということはありません。もちろん、確実に独占タイトルはファーストパーティから出てきますが、それに加えてサードパーティ様ともしっかり対話をしていくということです。

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