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ゲーム業界のM&Aを語ってみるくねくねハニィの「最近どうよ?」(その18)(2/3 ページ)

Activision Blizzardの誕生に度肝を抜いた皆様も多いかとは思うけど、何とハニィはそのニュースをアメリカでリアルタイムで知った! だから何(笑)? ちょっと難しいM&Aもいろんな見方をすると違った背景も見えてくるので読んでみてちょーだい!

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ゲーム業界のM&A

 日本でも最近では、スクウェアとエニックス、セガとサミー、バンダイとナムコの合併など大きな業界再編の流れもあって、珍しくもなくなったM&Aだね。日本の場合はパブリッシャー同士のM&Aが目を引くけど、海外の場合は大きなパブリッシャーが独立系のデベロッパーを買うってのが最近のトレンドっぽい。

モバイル系デベロッパー

 J2ME(Java)やBrewのおかげで、プアな携帯電話でゲームソフトが動くようになると、欧米でも日本のモバイルコンテンツ業界の繁栄に追随してたくさんのモバイルコンテンツプロバイダ(CP)が生まれたの。CPは、モバイル向けに独自コンテンツを開発するのに加えて、PCやコンソールのゲームパブリッシャーから大きなタイトルのライセンスを受けて、モバイル版のコンテンツを作って配信していたのね。でも、携帯電話機自体の性能が上がってきて、それなりの収益が見込めるようになると、ゲームパブリッシャーたちは携帯電話をゲームコンテンツに対するひとつの「プラットフォーム」として認識するようになったの。

 そこで行われたのが、モバイルCPの買収ラッシュ。2005年末のEAのJAMDAT買収はとても大きなニュースだったのよ。日本ではJAMDAT Mobileを知らない人も多いかな? 北米や欧州でケータイを持っていてJAMDATを知らない人はいないのだ。当時はCP世界ナンバーワン、ゲーム業界のEAに匹敵する存在の会社で、「JAMDAT Bowling」というケータイ用ボーリングゲームは、ダウンロード可能なケータイを買った人は必ず購入する、と言われてるケータイコンテンツだったの。そんな最大手CPがゲーム業界の最大手EAに買われちゃったのよ。買収価格は約6億8000万ドル(当時750億円)と言われずいぶんと騒がれました。

 これに追随して、Capcom(アメリカ)のCosmic Infinity、スクウェア・エニックス(アメリカ)のUIEvolution、コナミ(アメリカ)のBlue Label Interactiveの買収など、日系パブリッシャーも買収劇を進めたのね。残念ながら、現在はモバイルバブルが弾けて、一部を除いて(もちろんEA<Jamdat>は相変わらず強いですが!)苦戦しているみたい。大変申し訳ないことを言うと、日本のゲームコンテンツって日本の人たちが認知するほど欧米の一般の人たちには有名ではないんですよ〜。それだけ「ゲーム」ってものがまだまだ「ニッチ」なものなんですよね〜。

プラットフォーム系デベロッパー

 任天堂はあまりM&Aには積極的ではないようで、今年モノリスソフトを買収したのはちょっとびっくりニュースでしたね。ソニーはと言うと、ユニバーサルの「Crash Bandicoot」を開発していたNaughty Dogを SCE(アメリカ)が買収したのはすごい昔の話ですが、その後も2005年12月にSCE(ヨーロッパ)が「Killzone」のオランダの開発会社Guerrilla B.V.を買ったり、SCE(アメリカ)が2006年1月に「SOCOM:U.S. NAVY SEALs」シリーズのZipper Interactiveを買収。

 マイクロソフトはずいぶん前からPCソフト開発会社を買い続けて、ゴルフゲーム「Links」シリーズで有名なAccessや「Age of Empires」シリーズの開発会社Ensemble、「Fable」のLionhead Studio、そしてもちろんHaloシリーズのBungieなどを買収(ただし今年10月にまたマイクロソフトから離れ独立系に)し、IPを確保してきたの。

 SCEやマイクロソフトがソフト開発会社を買収するのは、実はIPが欲しいからだけではなくて、自社プラットフォームへの優良コンテンツの供給が不可避だからと言われているの。一生懸命育ててきた開発会社が、他社プラットフォームに向けて開発するのもたまらないし、その優秀なスキルを自社のためだけに発揮して欲しいって言う純粋な気持ちだと思うわ。

パブリッシャーのデベロッパー買収

 大手ソフトパブリッシャーたちは? というと、まずはActivision。「Call of Duty」シリーズなども調子がよかったんですけど、最近ではやっぱり「Guitar Hero」シリーズでしょうね〜。2006年のE3で、その「Guitar Hero」のパブリッシャーRedOctaneをActivisionが買収! というプレスリリースが出たときには、ハニィは本当に驚きました。今年になって一瞬とはいえ売上でEAを抜いた! という記録を最近作った元となってる「Guitar Hero」だけに、これは買収の成果が出ている、といえましょう。イチから作り上げるリスクを考えると、確立したブランドを買うってのもビジネス的には「正しい」選択かもね〜。その後Activisionは、Xbox/Xbox 360の「Project Gotham Racing」シリーズを開発したBizarre Creationsも今年9月に買っていまするの……。

 ちなみに余談をひとつ。「Guitar Hero」のパブリッシャーだったRedOctaneを買ったのはいいけど、実際に開発したHarmonixをMTV Gamesが買収して、EAディストリビューションのもと「Rock Band」発売に至ったのは有名な話。どうせ買うなら丸ごと買わないと〜、Activisionさん。

 EAがすごいですね〜。モバイル系Jamdatもそうなんだけど、2004年4月に「Burnout」シリーズで有名なCriterionを買収。実はこのCriterion、ゲームソフト開発用ツール「RenderWare」というミドルウェアの技術ライセンサーで、日系のものも含めて多くのタイトルにこの技術が使われていたの。ところが、この買収劇の後、他のパブリッシャー/デベロッパーはこの技術が使えないことになってしまって、泡を食ったんだよ〜。

 EAは「Burnout」シリーズも欲しかったんでしょうが、「Need for Speed」シリーズだって持ってるのに何で? って声もあったのよ。プロパティの他に他社に対してRenderWareを使わせない、って利益も副産物として(いや、本当の狙いはココか?)得たのよね。

 EAが2004年末にUBIソフトに買収をかけて20%弱のシェアを持ったとき(現在はUBI側の押し戻しによりシェアは下がってるけど)も驚きましたね〜。さらに最近、カナダのBioWareとアメリカのPandemic Studioを買収。BioWareは、最近マイクロソフトがXbox 360向けに発売してブレイクしてる「Mass Effect」の開発会社。この他にもLucas Artsの「Star Wars: Knight of the Old Republic」など、いろいろなパブリッシャーに対して契約でソフトを提供していた大手開発会社なの。また、Pandemic Studioは、Mercenaries(Lucas Arts。ただし、「Mercenaries 2」はEA)、「Battlezone」(Activision)や「Destroy All Humans!」 (THQ)など、これもまた複数のパブリッシャーにソフトを供給する大きなデベロッパー。はい、もちろんプロパティも手に入りますが、他社との契約ができなくなるわけですね! 要は優秀なデベロッパーの囲い込みということですよ。

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