ITmedia ガジェット 過去記事一覧
検索
連載

ゲーム業界のM&Aを語ってみるくねくねハニィの「最近どうよ?」(その18)(3/3 ページ)

Activision Blizzardの誕生に度肝を抜いた皆様も多いかとは思うけど、何とハニィはそのニュースをアメリカでリアルタイムで知った! だから何(笑)? ちょっと難しいM&Aもいろんな見方をすると違った背景も見えてくるので読んでみてちょーだい!

PC用表示 関連情報
advertisement
前のページへ |       

日本は蚊帳の外か?

 言語や文化などいろいろな意味で壁がある欧米と日本だけど、このような波は日本には影響しないのか? と言うと、そうとも言えないと思う。過去の大きな日本発のプロパティは、欧米でも価値あるものに違いないから。いい意味でも悪い意味でもグローバルな流れは止められないのだよね。

 11月にひっそりとハニィに入ってきた、UBIソフト(フランス)が名古屋と大阪に拠点を持つ開発会社、デジタルキッズを傘下に入れたというニュースがあります。これは、UBIが任天堂フォーマットで展開して大ヒットしている「Petz」シリーズへのテコ入れのためとのこと。同社はもともとハムスター育成ゲームを開発しており、海外ではUBIソフトのPetzブランドで発売されているから、関係は前からあったんですね〜。UBIとデジタルキッズのような友好的M&Aであれば、きちんと話し合いが持たれて両者の将来の展望の合致ってことですばらしいと思う。でも、上場している会社であればヘッジしなければならない敵対的(知らないうちに株が買い占められてるとか)なものなんかも予想されるわけですわ。

 悪いことばかりじゃないよね。日本の会社が買収されるってのは、世界的に見て「価値のある会社」ってお墨付きをもらったようなもんだし。そんな時代がそこまでやってきてるのかも。ただ、「こつこつ」と作る魂も忘れてはいけないよね。

買収劇の本当の意味は?

 IPを目的に買われた会社のデベロッパー社内の優秀な個々人が、独立して別の会社を作っちゃったり、もっと給料の高いところに行っちゃったりして、デベロッパーとしての価値は疑問だとも言われてるけど、いいの、いいの。「プロパティ」が欲しいんだから。でも、そういう意味ではプラットフォーマーとソフトパブリッシャーの買収の意義はちと違うかな。プラットフォーマーは「開発力」を、パブリッシャーは「プロパティ/IP」を集約しているってところですね。

 日本のゲーム作りは、プロパティをパブリッシャーとデベロッパーで力をあわせてイチから作り上げていく伝統芸のような形だけど、欧米はそうじゃない。その中ですばらしいなぁ、と思うのはアメリカのパブリッシャーがリスクを負ってオリジナルタイトルを開発しているところだね。EAのJamdat買収やUBI買収未遂や、ActivisionのRedOctane買収もそうなんだけど、「版権や続編からの離脱」と「オリジナルや新機軸へのチャレンジ」を目指しているのが手に取るように感じられるんですよん。

 もちろん、やり方としては 日本的な「こつこつ」型ではなく、「買っちゃえばいいんだ♪」的安易なやり方ではあるけど、それにしても、業界がまだまだ活気付いている北米のパブリッシャーが現状に甘んじることなく次の手を講じているのにはすごく感心してしまうハニィでした。ただ、大企業のコングロマリット(多角化)に巻き込まれてるだけじゃなくて、投機的な扱いで売買されているようなイメージもあるから、水もののエンターテインメントである「ゲーム業界」としては何だかハリウッド化の一途をたどっているようでしっくり来ない気もするね〜。

 「ハリウッド化」とは何か? タイトルが大型化して少数に集約されていくって流れとハニィはとらえているけど、これは止められないかもしれない。次世代機の時代が本格化して開発費が高騰していく中では当然と言っていいだろうけど、家庭用ゲーム機向けのソフトのいいところは、いろいろなユーザーのいろいろなニーズに応えることだったんじゃ? と嘆いてしまう。

 ハリウッド化するのが悪いことばかりではない。映画のように市民権を得て、芸術性を増し、スターが生まれ、2次使用で新たな大きなビジネスを生んでいく。ゲーム業界が大きな産業として、別のステージに入ろうとしているのかもしれないね。でも……ハニィにとっては「ゲーム」ってそんなにアーティスティックなことでもなく、アカデミックなものでもないんだけどなぁ。いろいろなチョイスがあって、気軽に楽しめる。そんなのは古き時代(たくさんのチョイスがあったけど、クソゲーもたくさん生まれた時代)の幻想なのかもしれないけどね。

ハニィのあとがき

 実は原稿を書いていたら、Activision Blizzardのニュースが入ってきたってのは前に述べたとおり! びっくりしましたよ〜。しかも、BioWareとPandemic Studioを買収したEAのCEOが「これで業界のM&Aも一区切りついた」ってコメントを出した2日後だったので(カッコ悪かったね〜)、さらにびっくりしましたよ〜。すご〜く長い間(とは言っても20年くらいか)、業界でトップの座を譲らなかったEAが、来年からは第2位のパブリッシャーになることは必至ですからね〜。

 Activisionは、最近「Guitar Hero」のお蔭でずいぶん儲かってる会社だけど、元々小さな会社ではなかったの。PCから各種コンソール向けに多くのタイトルを発売しているのよ。「Call of Duty」シリーズももちろん、「スパイダーマン」や「トランスフォーマー」などの映画版権を使用したタイトルなど、自社オリジナルタイトルと版権タイトルのバランスの取れたパブリッシャーだったの。それにVivendi Gamesが加わった、しかも会社名を見ていただければ分かるけど、「WarCraft」、「Diablo」などを開発したメガデベロッパー、Blizzardの名で加わっている。Vivendi傘下の前にもハバス傘下だったりしていたけど、ようやく自社の名前が前面に出るようになったってことだね〜。すばらしい!

 EAを超えるメガパブリッシャーが生まれるってことは、いい意味だけではない「ハリウッド化」への道へ進むことを予期させるよね。ただ、ダウンロードの時代もやってきてる! 在庫もリマスターリスクもない。料金もサイズもゲーム次第で多種多様。ということは、パブリッシャーリスクは軽減されて新規参入がしやすいってことですかね〜。

 アメリカのパブリッシャーMajescoがロサンゼルスにカジュアルゲーム制作スタジオを作ったってニュースが出たんだけど、これはWii Ware、Xbox LIVE Arcade、PLAYSTATION Networkなどに向けて、カジュアルな小規模ゲームをたくさん作っていこうというゲーム業界の別の流れも意味していると思うのね。まだまだゲーム作りの勝負ができる土壌はありますよ〜。「下克上」や「成りあがり」が起こらないゲーム業界なんてつまんない。資本力パワーに負けない土壌が残されているってのは、ものづくりとしての血を絶やさないことへの「最後の砦」かもしれないなぁと思ったりするわけですよん。

くねくねハニィのプロフィール

1967年アメリカサウスダコタ生まれの日本人。

小学生からはゲームセンターに通いまくってやたら大きく育つ。

1990年に都内K大学を卒業後、大手ゲーム会社にて海外ソフト担当となり、2001年に退職。それ以降は自称フリーのゲームアナリストとして暗躍。暗躍しすぎたので名前を変えて表舞台に。くねくねと唐突に現れて「親父ギャグ」をかまして周りの人々のレベルを下げまくる困ったやつ。独特の語り口調ですが、もう慣れてくださいとしか言えません。言ってる中身は至極マジメなので。ちなみに「風来のシレン」が好物で、名前もそこから借用。なんだか公認してもらったそうです。

ハニィさん、時々海外にいますけど、なにしに行ってはりますの? 今年あと1本、書けるんですか? ボクはなんやかんやでまた海外行ってしまい、間に合わないってオチだと思ってますが……。さてはて。


前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る