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キーワードは「デモクライタイズ」――レイ・カーツウェル氏キーノートスピーチGame Developers Conference 2008

米国・サンフランシスコで開催されている開発者向けのカンファレンス「Game Developers Conference 2008」にて開催された基調講演において、ゲームの今後の20年が予想された。

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ゲームの今後20年は?

 サンフランシスコ市内のMoscone Centerで開催していた「Game Developers Conference」(以下、「GDC」)にて現地時間21日(木)、インベンター兼フューチャリストのレイ・カーツウェル氏のキーノートスピーチ(基調講演)が行われた。タイトルは「The Next 20 Years of Gaming」(ゲームの今後20年)。

パラダイム・シフト

 CCDフラットベッド・スキャナー、各フォント光学的文字認識技術、盲者用文章音声読み上げマシーン、テキスト音声シンセサイザー、グランドピアノなどのオーケストラ楽器を完全にシミュレートできるシンセサイザー、そして実用化された多数単語音声認識技術の開発者であるカーツウェル氏は、生涯においてテクノロジートレンドを研究してきており、それには一定の法則があると言い切る。

 カーツウェル氏は、ムーアの法則を持ち出し、その法則の通りコンピュータチップの目覚しい発展がもたらしたコンピュータの高性能化について、「コンピュータや携帯電話などのデバイスは、今後低価格かつ高機能で小型化という目覚しい発展を遂げるでしょう」と語る。25年後にはデバイス群は究極的に小型、高機能化されると予想しているのだ。

 このデバイスにパワーを与えるのは「ソフトウェア」である。ただし、このソフトウェアも、ソフト開発者がデバイスの進化を予期して設計しなければ意味がないとカーツウェル氏。ゲームの設計をするに当たっても同じことで、たった2〜3年後の世界であっても今とはまったくデバイス環境が違っていることを適切に予測すべきであると述べていた。

成功の鍵はタイミング

 カーツウェル氏は、未来は予測可能と断言する。彼の調査統計によると、20世紀は一部戦争等の不確定要素による若干のズレはあったものの、ほぼ予想されたどおりの進化をとげることができたという。

 「成功の鍵は、タイミングです。プロジェクトはそれなりのリソースがあればそれなりの結果が得られるはずで、その確率は95%である。ただし、それらのプロジェクトは95%は失敗に終わる。なぜならタイミングが間違っているからです」(カーツウェル氏)

 もはや進化の予測を無視してはタイミングを捉えられないのだ。

どうなるのか? 未来予測

 これらの進化はコンピュータや情報処理にだけ当てはまるものではなく、健康や薬品に関してもあてはまる。いや、むしろ、20年後には現在ITとみなされていないものが「IT」産業の中心になっていくであろう、とカーツウェル氏は言う。

 2020年代になるとソフトウェアがすべてをアクセラレートいくことになるという。実際に医療の分野においては、このようなテクノロジーが病気を防いだり排除する研究が進んでいて、今後人間の寿命をさらに延ばす方向に動いている。

 ソフトウェアが牽引して、人間の脳に匹敵するところまで到達すると、カーツウェル氏は2029年までには、人間の脳の1000倍に匹敵する演算能力が1000ドルで購入できるようになると予想する。まさに「人工知能」と「知能」が競合する時代が来るのである。そしてバーチャルリアリティは本当のリアリティとの競争になるということであろう。

カーツウェル氏キーノートのまとめ

 昨年のハードメーカー2社(SCE、任天堂)のプラクティカルなキーノートスピーチと比較すると、とてもコンセプチュアルな講演であったと言えよう。実務的な側面だけでなく、大きな枠の中でゲーム業界やゲーム自体を考えようというGDC側の姿勢には頭が下がる思いがした。

 「いわゆる『コンピュータ』はこのままの形では存在しないでしょう。衣服、ベルトバックル、めがねなどの一部になるのです」という、カーツウェル氏の言葉は非常に興味深い。「人間という生き物だけがバイオロジーに制限されるのを拒む種」なのだと。

 確かに1980年代に、この携帯電話の進化を予想していた人とそうでない人では、能動的にソフトウェアを供給することを考えると、準備が違ってくるだろう。そういう意味では現在の状況がステーブルに継続するはずがないことは容易に想像できるが、単なるリニアな未来予測だけでは、ある程度の時間を要するゲーム開発には不足していると考えられる。

 また、同氏は「クリエイティビティのツールはデモクラタイズ(民主化:自由に使用できるように開放されること)されるべき、また、制作や生産に関するツールもデモクラタイズされるべきである」と述べた。前日のマイクロソフトのキーノートと被ると思われるのは私だけだろうか? 今回の「GDC」のキーワードともいうべき「デモクライタイズ」。ソフト供給側にも未来を予測する能力が問われると同時に、デバイス(ハード)側での未来予測能力も今後のゲーム業界の鍵になっていくことを予想させる。

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