「SPORE」発売記念――生命誕生と進化の過程を謎解く
9月5日、エレクトロニック・アーツはWindows版「SPORE」の発売を記念して、評論家の唐沢俊一さんと現役東大タレントの木村美紀さんを招いたトークショーを開催した。
進化をエンターテインメントとして表現した作品の中で頂点に達した「SPORE」
エレクトロニック・アーツは9月5日、「SPORE」の発売を記念し、東京お茶の水にあるデジタルハリウッド東京本校セミナーホールにおいて、「生命誕生と進化の過程を謎解く!」と題した評論家の唐沢俊一さんと現役東大タレントの木村美紀さんによるトークショーを開催した。
「SPORE」は細胞から宇宙まで、箱庭の中で無限の世界をシミュレーションできる「シムシティ」シリーズを手がけたウィル・ライト氏の最新作。実に構想・開発に8年もの歳月が費やされている。本作では生命の誕生から部族、文明の進化、そして他部族への侵略や交流といった歴史や、そこに生活するクリーチャーや乗り物、建物など独自に創造しカスタマイズすることができる。多種族と戦い支配するか、仲間になって共存するかはプレイヤー次第というわけだ。
本作では進化の過程に合わせて5段階のステージが存在する。プレイヤーは自分のくリーチャーを進化させながら、彼らが暮らす惑星を創り上げていく。なお、本作に先駆けて6月に「SPORE クリーチャー クリエイター」が発売されており、プレイヤーがクリーチャーを創造する楽しさを提供している。この「SPORE クリーチャー クリエイター」では、オンラインコミュニティの「スポアペディア」に自分で作ったクリーチャーを登録することができ、他者と共有することができる。
クリーチャーは生き残るため、ほかのクリーチャーを捕食し成長していく。成長過程ではほかの細胞や隕石から採取したパーツを付け加え、外見の変化はもちろん、パーツに対応した能力を持つクリーチャーへと進化する
族長を中心に、知能の発展した集落が拡大していく。今まで単体で行動していたクリーチャーが群れを成し、集団行動を始める。プレイヤーは知能と文明を持ち始めた部族を発展させ、集団と集団の関係を構築していく
多数の部族ができはじめ、さまざまな都市や文化が生まれていく中、それぞれの部族は生き残りをかけて他の部族と接触をはかる。プレイヤーは乗り物や建物がひしめく巨大都市を形成し、惑星の支配に乗り出す
惑星の支配者になったプレイヤーは、新たな生活環境を求めて宇宙を探索する。他の惑星で生活する部族に攻撃をしかけ、より多くの惑星を自分の支配下に置き、宇宙一の種族を目指したり、仲間を作って同盟を結んだり、帝国を築くこともできる
今回の発売記念イベントは、ゲームで繰り広げられる各ステージ内容を人間の進化と対比させながら、生命の誕生や生物・人間の進化、集落の発展、文明開化を目指す中で生まれる戦争や友好同盟、技術の進歩を遂げた現在の地球、そして謎多き宇宙の話をエンターテインメントの視点で語るという趣旨。
開幕にあたってプロダクトマネージャーの籠谷多恵子氏は、待たせただけあるクオリティーの高さとボリュームを保証し、「もうちょっと値段を上げてもよかったんじゃないかというほどの出来」と太鼓判を押す。驚きの瞬間を感じ、楽しさを伝えてほしいと挨拶した。続いて本作の紹介に立ったローカライズプロデューサーの安次嶺クリス氏も、コアゲーマーだけでなくライトユーザーにも楽しんでもらえるべく、インタフェースや操作面に時間をかけて調整したと語った。ビデオメッセージではウィル・ライト氏が登場し、「生命とは何かと、広い視野で宇宙を見てほしい。(本作は)生命誕生から未来までを観察することができます。誰ひとり殺すことなく、争うことなくクリアも可能で、プレイヤーがコントロールするゲームなのです」とコメントをよせてくれた。
唐沢俊一さんと木村美紀さんによるトークショー
今回のトークショーに伴い、唐沢俊一さんも木村美紀さんも「SPORE」を遊んでみたのだそうだ。唐沢さんはまだ宇宙まで進出していないものの、細胞からクリーチャーへの進化の過程で、武器を持たせたり捕食の形態を効率化させるなど、進化の方向性をいじるのに夢中となったのだとか。木村さんは3日ほど寝ずにクリアするほどはまってしまったとのことで、約35億年前の生命誕生から現在、さらに未来までたった数日で体験できるのは素晴らしいと興奮ぎみだった。
ここからは前述したとおり、ゲームの各ステージを人間の進化と対比してのトークショーとなった。唐沢さんはゲームそのものが進化を続け、ついに「SPORE」においては進化をエンターテインメントとしているに至っていると紹介。しかし、進化をエンターテインメントとして表現した作品はけっこう昔からあったと、19世紀に書かれたH・G・ウェルズの小説「宇宙戦争」を引き合いに出す。ウェルズは、ジュール・ヴェルヌとともに「SFの父」と呼ばれ、、タイムマシンや宇宙人の代名詞のようなタコ型火星人を生み出し、今でも影響を与え続けている人物。しかし、ウェルズは根拠なくタコ型火星人を想像したわけではないと唐沢さん。当時、一般的とされていた火星の環境を鑑みて、進化の過程を加味しているのだとか。ウェルズは進化ばかりでなく、退化も著書「タイムマシン」で描いており、環境悪化に伴い人類はいずれ猿に退化すると考えた。
木村さんが「SPORE」を遊ぶ際、プレイヤーの観察するという行為が宇宙を支配する神になったような感覚に似ていると語ると、唐沢さんは1930年代に書かれたエドモンド・ハミルトンの短編「フェッセンデンの宇宙」でまさに同じような視点が登場すると紹介する。「フェッセンデンの宇宙」は、実験室内に創造されたミニチュアの宇宙を見た主人公が、こうして観察している自分のいる宇宙も誰かの創造物なのではないかと夜空を仰ぐという内容(実際、誰かの視線を夜空に感じるのだが)。ここでどれだけ進化という概念をエンターテインメントにしてきたのかという映像を見ることになった。
ウェルズの火星人が、その後人間の進化すべき姿として投射した例として唐沢さんは「アウターリミッツ」を紹介。この作品には、人間が進化すると脳の容量が増え、頭が大きくなるという未来人の姿が描かれた。1960年代、人間の未来の幸せは進化の先にあり、当時のマンガ雑誌では「人類の未来」と題した未来想像図が特集されていたと、こちらもスクリーンで紹介する。そこには、頭が大きく歯とアゴが退化し顔が小さくなり、胴が短く、手足が細くなった未来人が創造されていた。このグロテスクとしか思えない姿であっても、当時はこれがあるべき進化の姿として受け入れられていた。進化の概念も進化していることが分かる。
なぜこうした進化をするのだろうか? やはり、そこには環境の変化が重要な要因となっており、「SPORE」でもその概念がベースとなっている。ディズニーのアニメーション「未来の国 火星とその彼方」では、厳しい火星の環境で生物が適応していくであろう未来が登場する。当然、興味を持つのが形態としての進化だけでなく、ちょっと違う進化を経た生物の文明の進化ではないだろうか? 唐沢さんは水木しげるが描く「宇宙虫」を取り上げ、数日間のうちに人類が経験した進化の歴史を駆け足で見せる手法を、まさに「SPORE」そのものだと絶賛した。
木村さんは「SPORE」において、極力平和的解決を志したが、唐沢さんは武器を背負わせ武力による支配を試みたのだそうだ。武力に頼った国はいずれ滅びるのが常。唐沢さんの部族は進化の袋小路に入りこみ、立ちゆかなくなってきたと話す。ラベルのボレロに乗せて生物の進化と自然淘汰を描いたブルーノ・ボツェットによるアニメーション映画「ネオ・ファンタジア」では、原始の細胞から種類が増え、人類へと進化し、他の生物を支配するという弱肉強食の姿が描かれた。しかし、「SPORE」では平和友好を武器に次のステージにいく可能性が示されている。進化とはまさにいくつもの可能性の先にあるのだ。
進化というのは学問的なものだけでなく、娯楽としても楽しまれている。その頂点に達しているのが「SPORE」というゲームだと感じたと唐沢さん。このゲームを遊んで感性を進化させてもらいたいと、「SPORE」が技術的な進化をしているだけでなく、ゲームから教わることもあると締めくくった。
SPORE(スポア) | |
対応機種 | Windows XP/Vista |
ジャンル | シミュレーション/アクション |
発売日 | 9月5日 |
価格(税込) | 7329円 |
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