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手を抜いているところはない――CEDECで公になるMGS4のデザインワークフローCEDEC 2008特別インタビュー(1/2 ページ)

CEDECでの講演を間近に控えたKONAMIの根岸豊氏にインタビューする機会を得た。根岸氏は、小島プロダクションで歴代の「METAL GEAR SOLID」シリーズのデザインを手がけてきた人物。今年のCEDECでは「METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS」のデザインについてワークフローを紹介するという。デザイナーの立場から見た「METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS」とは?

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 9月9日から9月11日にかけて開催される、日本最大級のゲーム開発者カンファレンス「CESA DEVELOPERS CONFERENCE 2008」(以下、CEDEC)。その開催に先駆け、「『METAL GEAR SOLID 4』のデザインワークフロー」と題したセッションを予定しているKONAMIの根岸豊氏にインタビューする機会を得た。根岸氏といえば、小島プロダクションにおいて制作部デザインユニットのマネージャーでありリードアーティスト。CEDECでは、佐々木英樹氏、木村峰士氏、小林政哉氏とともに、ビジュアルアーツについて語ることになっている(セッション自体は9月9日に実施済み)。

ゲームデザイナーには基礎と感性が必要

根岸豊氏

―― 「METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS」(以下、MGS4)製作の現場ではどのようなことをやっていらっしゃったのですか?

根岸豊氏(以下、根岸氏) CGディレクターです。デザインを統括する立場でしたけど、それだけではなく背景の製作もやっていました。

―― まずは有り体な話から。MGS4の製作が始まったのはいつ頃だったんですか。

根岸氏 単純に「METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER」の発売から3年半経ってますよね。2005年の東京ゲームショウで初めて画面を見せたので、その辺がデザインとしてはスタートですかね。当初PS3は何でもできるんだろうと思って丸いものを丸く作っていたら、プログラム担当者から怒られました。「ポリゴン使いすぎー」って(笑)。どれくらいポリゴンやテクスチャーを使えるか? 落としどころはどこなのか? というところから始まりましたね。

―― デザインチームの構成はどのようになっていたのですか。

根岸氏 デザインは6つの班に分かれていました。キャラクター、背景、メカ、モーション、デモ、2Dの6つです。多分一番面白いのは、メカが分かれているところですね。タイトルの特性上、メカがたくさん出てくるのでキャラクターと区別していました。固いものと柔らかいものってことですね(笑)。デザイナーの人数はマックスで約100人です。開発が進むにつれて人が増えていきました。一番多く人を割いたのはモーションで、少なかったのは2Dですね。

―― 班ごとの情報の共有はどんな感じでしたか。

根岸氏 デザイナーとしては定期的に班長が集まって、情報共有のミーティングを開いていました。それに、みんなフットワークが軽いんですよ。何か問題があれば基本的には直接会って面と向かって相談する感じでした。各班に優秀な班長がいたおかげです。

―― デザインチームに対する、小島監督ならではの独特の指示とかはありましたか。

根岸氏 けっこうこまごまとありましたね。特に終盤なのですが。データを締めるっていう間際になって「デモで映るスネークの、背中の壁のあそこのテクスチャーどうにかせえ」とけっこう細かいところを突っ込んでくるんですよ(笑)。背景班としてはもう時間もないし、容量の問題もある。でも言われたからには直さないと。結果としては直してよかったなとなるんです。僕らが妥協してるところをちゃんと見抜きますね。最後の方になればなるほど、いろいろ突っ込まれました。

―― 逆にデザインチームが仕込んだ遊びの部分とかはありますか。中東の壁に貼られたポスターだとか、ディテール部分で。

根岸氏 スケジュールもタイトだったので、今までよりもお遊びの仕込みは少ないですが、遊んでいるといえば遊んでますね。例えば、ナオミの研究所のテーブルの上にあるレントゲンは某スタッフの実際のレントゲンだったりだとか。

―― 遊びといえば、心霊写真(シャドー・モセス島の特定の場所でアイテムのカメラで写真を撮ると心霊らしきものが映り込む)は楽しい隠し要素でした。

根岸氏 あれは「MGS1」からやっているスタッフの写真なんです。「1」で登場する場所と「4」で登場する場所は、可能な限り同じ場所にしてあります。「MGS1」からの生き残りってことで、生霊ですね(笑)。これは監督の仕込んだネタですけど。

―― 「MGS4」のビジュアル、デザインでこだわった部分はありますか。

根岸氏 あらゆるところ、キャラなり、背景なり、各パートですごくこだわってます。手を抜いているところはないですね(笑)。

―― デモ画面もプレイ画面も全部リアルタイムポリゴンですよね。

根岸氏 そうですね。前作までは、ポリゴンによるデモとゲーム部分のつながりは分かれていました。今回は小島監督のこだわりでシームレスにつながるようになっていて、それはうまくいったかなと思っています。

―― プリレンダとリアルタイムポリゴンの違いってどんなところにありますか。

根岸氏 プリレンダのよさは、目指すものに近いものができて編集も可能なところでしょうね。私たちのやっているリアルタイムポリゴンのよさは、自由度が高くて、ゲームからそのままつながるところです。気持ちの問題で、ゲームの画面から急にきれいなムービーになるとなえちゃうところもありますけど、リアルタイムポリゴンならゲームとデモで同じものを使っているんでギャップがないんです。例えば、キャラクターの服装は、そのときの服装がそのまま反映されます。

―― そういえば「MGS4」では、フェイスカム(スネークが他人の顔に擬態できるアイテム)をつけてるとそのままデモに移行しますよね。

根岸氏 そうですね。他にも、デモ中にズームできるとか。そういう自由度が高いんです。例えばスネークのデザインを修正したとします。そういう時にプリレンダだとレンダリングしなおさなくてはいけません。リアルタイムであればモデルを細かく直してアップすればいいんです。

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