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手を抜いているところはない――CEDECで公になるMGS4のデザインワークフローCEDEC 2008特別インタビュー(2/2 ページ)

CEDECでの講演を間近に控えたKONAMIの根岸豊氏にインタビューする機会を得た。根岸氏は、小島プロダクションで歴代の「METAL GEAR SOLID」シリーズのデザインを手がけてきた人物。今年のCEDECでは「METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS」のデザインについてワークフローを紹介するという。デザイナーの立場から見た「METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS」とは?

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―― 「MGS4」製作の過程では、どういったところで苦労されましたか。

根岸氏 もちろんスケジュール的にタイトだったっていうのはあります。あとは、初めてのハードだったので、どこまでできるんだろうというところですね。作るものは決まってて、やってやろうという気はあるんですけど、本当にできるのかなという不安もつきまとってました。

―― それはPSやPS2で初めて着手したタイトルの時と同じような感じなんでしょうか。

根岸氏 結局は同じですね。PS3だとさらに作業量も膨れあがります。その読みもけっこう大変でしたね。テクスチャーひとつにしても、ベーステクスチャーやノーマルマップ等描く枚数や解像度が増えました。ポリゴン数も増えているので、より細かな部分まで手を入れる必要がありました。

―― PS3というハードの描画性能はある程度引きだせたと思いますか。

根岸氏 グラフィックだけじゃないですからね。グラフィックだけならもっとすごいものはできると思いますよ。ただ、敵兵のAIだとかゲームとしての部分もあって、グラフィックがあって、というところで、ゲームが面白くならないとなんともならないですよね。

―― 中東、南米などのビジュアルについては、取材で現地に赴いたりされたんでしょうか。

根岸氏 取材はしました。中東はモロッコ、南米はペルー、東欧はチェコです。写真やムービーを撮ったんですが、素材だけじゃなくて空気、湿度、匂いなどを感じるということが大事でした。

―― MGSシリーズの新作が出るとしたら、さらなるリアル路線でしょうか。

根岸氏 それは小島監督やアートディレクターの新川の意向でしょうね。従来も多少は試行錯誤しているんです。PS2で製作を始めた時に、新川の描くタッチをそのままできないかと試したこともあります。結局落ち着いたところが今の路線です。MGSの世界でリアルすぎず正統進化してきたかな、とは思っています。今後もMGSの世界の中でのリアルを追求していくんじゃないんでしょうか。

―― 「MGS4」で根岸さんがやりたいことはやりきりましたか。

根岸氏 やれることはやりきったって感じですね(笑)。

―― ここはもっと凝りたかったとか、あそこはもっとああしたかったというのはあったのではないでしょうか。

根岸氏 それは正直あります。時間との戦いではあったんで。妥協ではないですけど、バランス的にもうちょっとこっちをやりたいんだけど……というのはありましたね。

―― 根岸さんがデザインをされる際の気をつけている点、製作における信条はありますか。

根岸氏 自分はデザイナーですが、ゲームは遊んでなんぼのものと思っています。グラフィックだけよくしてもダメです。ゲーム的に最終的によくなるようにしていかなくては、というのを意識しています。グラフィックはもちろん高いほうがいいんですが、ゲーム全体のバランスが大事だと思っています。

―― 今後ゲームのビジュアルはどういった方向に進化していくと思いますか

根岸氏 そろそろ、もっといろんなビジュアルが出てくるんじゃないかと思います。PS3やXbox 360で表現の幅が広がっているので、今までにない表現がでてきてもいいと思うし。アートの世界に入っていけるかなと。

―― 「MGS4」が落ち着いた現在、何をされているのですか?

根岸氏 秘密です。何かはやってますよ。何もやってないと給料泥棒ってことになっちゃうんで(笑)。

―― ゲームのデザイナーを目指している人に先輩としてアドバイスはありますか。

根岸氏 感性を磨け、と。よく若い人はツールがどうとかって言いますけど、ツールは覚えれば扱えるんです。感性は教わって備わるものではないです。感性あってのツールだと思います。CGは進化していくので、今後は感性がより大事になるでしょうね。中途半端なデッサン力の人がデザインすると気持ち悪いものになったりするんで、基礎力も必要。基礎と感性ですね。ちょっと前まではCGのツールでできることが限られていてごまかせていたところがあるんですが、今はいろんなことができるからこそ、ごまかしがきかないんです。

―― では、今回のCEDECでの講演内容はどんなものになるのでしょうか。

根岸氏 デザインのワークフローについてです。デザインといっても業務的には幅が広いので、キャラクター、背景、デモという3つを中心にワークフローを紹介していきます。製作の過程を、3DツールやPS3の実機を使ってお見せします。スネークをXSI上でお見せしたり、デモに関しては実演で、カメラをつけて、実際こうなっていく、という流れを見せようかなと。けっこう面白くなると思いますよ。最初は3パートでやろうとしたのですが、いざ内容を詰めていくと時間が足りなくなって、削ったりもしていますので盛りだくさんです。

―― 気になっていたのですが、KONAMIならではの特別なツールはあるんですか。

根岸氏 モデリングやモーションはXSI、デモは3dsMAXを使っています。特別なツールとしては、2D用のレイアウトエディタと背景のライティングエディタが独自のものですね。

―― そもそも、なぜ根岸さんにCEDECでの講演の白羽の矢が立ったんですか

根岸氏 CEDEC担当から「やって」という話になって(笑)。会場が600人くらい入るところらしいんですよ。客席が満員でも緊張するし、人がいなくても緊張するでしょうね(笑)。面白いところをしゃべるのは、自分以外の3人のスタッフで、私は司会みたいなもんです。

―― 最後に、CEDECにかける意気込みをお聞かせください。

根岸氏 やるからにはしっかりやらなくては、と。私達が公の場で発表するのは初めてなんです。興味を持ってもらえたらいいですね。MGS4は今年最も話題になったゲームのひとつです。プログラムとサウンドもそれぞれCEDECでセッションを持っているんで、CEDECが盛り上がって、業界全体が盛り上がったらいいかなと。そんなつもりでやらせていただきます。

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