海外ではハード別にどんなゲームソフトが売れるのか考察してみた:くねくねハニィの「最近どうよ?」(その27)(2/4 ページ)
「不思議のダンジョン 風来のシレンDS2 〜砂漠の魔城〜」をネット予約したくねくねハニィの連載27回目。ハニィ視点での海外ハード別ソフト傾向なんぞ語って見たのでお茶を飲みながらどうぞ。
据置型ゲーム機(コンソール)のお話
市場報告でも書きましたけど、トラディショナルなゲーマーたちに向けてゲームを発信するならXbox 360かPS3向けにしないとね。ハードコアゲームは歴史的に見てもグラフィックのクオリティが高いハードを選ぶのは必然なのだ。
美しいグラフィックとハード側が提供するネット接続の簡易性(さらにXbox 360のダッシュボードやPS3のHomeなんかも加わってユーザーフレンドリーなインタフェースを提供しようとしている)の下、テレビを通じてゲームができちゃうわけで、大画面のハイデフで迫力のゲームプレイにハマるわけですわ。
一方、Wiiで売れているソフトを見ると、やっぱりパーティゲームが主体。家族で、友達と、みんながワイワイ集まって遊ぶためのゲーム機と言っても過言じゃないかもね。マルチプラットフォームで作られているコア向けソフトは、Wiiでは相対的にあまり奮わないことが多いけど、「Guitar Hero」シリーズなんかはパーティゲームらしくWiiでもそれなりに売れてるわけですわ。そう言えば、Wiiの「Zapper」(銃タイプのコントローラーになる周辺機器、シューティング用)はその後あまり話題にのぼらなくなったよなぁ。やっぱWiiは1人で遊ぶものではないのですな。
WiiとPS3/Xbox 360は競合ではないのだよ。Wiiを持ってるからと言って、他のコンソールを持っていないなんてことはなくて、極端に言えば、リビングにはWiiが、自分の部屋にはXbox 360かPS3がある、ってこと。
インストールベース、つまり出回ってる数だけで一概に言えないこの特性。シェアが高いからといって無策に供給してもしょうがない、っていうのもうなずけますな〜。
Xbox 360/PS3向けのゲームソフト
ハードのスペックがPCに近くなって、さらにネット環境が伴うと、日本の開発陣はとても不利になるよね。残念ながら日本ではPC向けソフトの市場がそれほど大きくないから、今までPC向けに作ったことのない人たちが、ネット機能を「つける」って感覚で考えてる。欧米のメーカーさんたちは今までPCで作ったものをコンソール向けに「削る」作業をしてたわけだから、どっちが簡単かよく考えなくても分かるよね〜。
ハードができる機能をフルに使って開発をしてください、ってのがハードメーカーの意向だから、Xbox 360やPS3、いわゆるハイスペック機に対しては――
1.グラフィックが美しいこと
2.オンライン対応であること
――は必須なんす。よくゲームを知ってると自負される方々(本人評価)が、「グラフィックにばっかりこだわってもゲーム性がねぇ」っておっしゃいますけど、いえいえ、ゲーム性を語る前に“マスト”条件なんです、これが。
オンラインに関しても同様。1年位前から「ネット対応していないとハードメーカーの企画承認(コンセプトアプールバル)さえおりない」という話もあるくらい。1人用のゲームだからこそ、ネットでつなげてあげる、ってのは今や標準なんですわ。残念ですけどこれが現実のようです。
例外としてRPGなんかはネット対応の必要性はないかもしれない。ただ、格闘、パズル、スポーツ、FPS、アクションなどは、PS2やXbox時代から市場に出回ってるものがフツーにオンライン対応(専用もある)しているから、オンライン機能がついていないとむしろ目立つことになるのね。よっぽどのイノベーティブ性があるとかでなければ、販売価格を下げるとか、格落ちのソフトとみなされるとか、難儀なんですよ……。
クリエイティビティの高い日本のゲーム業界が発信するゲームソフトと言えども、このベーシックな要求水準をクリアしなければ、大きな海外市場の土俵にも立てない、ってことなのだ。そういうことを理解していたとしても、このベーシックな部分でお金がかかる、でも国内市場は大きくないからリスクが取れない、じゃ、予算内で何とかモノにしよう、というバッドスパイラルが日本発のハイスペック機向けソフトの不振につながってるのもよく分かるよね〜。
最近、よく若者たちと語ることですが、このままコンソールが進化し続けていくと、コンソールとPCの垣根ってなくなっていくのではないかなと。ゲーム業界の歴史を見ると、欧米(PC版を削ってコンソールへ対応)と日本(コンソールに機能を付加してハイスペックへ)では作り方が真逆の動きをとってるってのを認知しておかないといけないと思うのだ。限られた費用と限られたスペックの中で最大限の創意工夫をする、っていう日本が強かった部分が、自由度が増して技術力(資本力も!)が問われる時代になると反対に弱点になって行くってところは皮肉だけれど、事実だと受け入れなければならんのかもね。
ところで、SCEは、ユーザーに対して、Homeなどを使ってネットコネクタビリティをあげていくことはもちろんだけど、ソフトメーカーに対してはPS3の開発環境を飛躍的に向上してあげなきゃ! と改めて思う。開発しやすいツールやライブラリを提供することができれば、ハイクオリティのゲームを作りたいと考えてるデベロッパーにとってはPS3はとても魅力的なプラットフォームであるはずなんだから。いつまでも「作りにくいハード」のレッテルを貼られてちゃダメですぜ。
思い切って北米のパブリッシャーに直接聞いて見た。なぜ、PS3がパブリシャーたちにあまり支持を受けていないのか? やはりSCEのネット戦略がマイクロソフトのそれと比べてパブリッシャーフレンドリーではないらしいの。ネットインフラが整っていて、パブリッシャーは「乗っかる」だけになってるXbox 360に対して、PS3はパブリッシャーの負担が重いんだって。
また、パブリッシャーのプロモーションとして欠かせないPSN上でのデモやトレーラーのお話。ユーザーはもちろんタダでダウンロードできるんだけど、実はパブリシャーにダウンロードされた容量に応じて支払いを要求しているのだ。Xbox 360は基本プロモーションとしてとらえているのでタダ。
だから、パブリッシャーによっては、マルチプラットフォームでタイトル展開してるのに、PS3にはデモを提供してないけど、Xbox 360には提供してるってことがあるらしい。当然デモやトレーラーを見て買うユーザーたちは、Xbox 360ユーザーが多いってことよね。ここでもパブリッシャーがXbox 360を選ぶ理由があったのね〜。
え、何でハニィは急にそんなこと言うのって? 実は年末商戦が始まっているにもかかわらず、PS3の9月の新作ソフトのタイトル数が17しかないんですね。他と比較すると、Wiiが27タイトル、Xbox 360が23タイトル、PS2が20タイトルなんですよ。少なくないですか? 作り手が提供できるプラットフォームとしてSCEが頑張ってくれないと! インストールベースやPCとの互換を考えると、デベロッパーがXbox 360で作ってPS3にコンバージョンするという動きは止められないから。
市場に出回ってる台数を増やすためには箱として高機能なことよりも、優良なソフトの輩出(できればエクスクルーシブで)が必要なのはWiiを見れば分かることだよね〜。
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