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国家事業としてe-sportsが推進される中国は、日本人の想像を絶する世界だった(2/2 ページ)

12月5日〜8日、中国・武漢にて行われた中韓政府共催によるデジタルゲーム競技イベント「International E-sports Festival」。日本代表選手団リーダーとして渡航した筆者が見た中国e-sportsシーンの現状。

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数々のイベントはいずれも盛況、来場者は2万人以上

 IEF開催期間中は、国際大会だけではなく、武漢の大学チームによって競われるIEF学生トーナメント(採用タイトルは、国際大会と同じく、「カウンターストライク」、「ウォークラフトIII」、「スタークラフト」)、同じく市内のネットカフェクラブチームによって競われるネットカフェトーナメント、市民のみが参加可能な闘地主(PCトランプゲーム)トーナメントなども開催された。

 学生トーナメントの優勝チームには日本円で約150万円の奨学金が、ネットカフェトーナメントでは同じく日本円で約150万円の「ネットカフェ発展基金」が贈られるなど、イベントを通して幅広い形でデジタル系エンターテインメントを盛り上げようとする気概が感じられる。

 来場者については、現時点で正確な数字が発表されていないので不明だが、来場者チケットの通し番号で当たるくじ引きイベントで、2万数千番台の数字が読み上げられていたところを見ると、ゆうに2万を越える人が会場に足を運んでいたと思われる。

 また、会場の内外には、ヒュンダイグループの立体視ゲーム体験ブースや、NVIDIAの物販コーナー、アーケードゲームの体験エリアが設置され、絶え間なく人々が列を作っていた。

写真奥の建物が会場となった体育館。中はかなり広い
会場の外でブース展開していたアーケードゲーム体験エリア。「太鼓の達人11」も展示されていた
「百万市民闘地主」の試合風景。年齢や性別に関係なく楽しめるゲームとして人気を集めているそう

日本チーム、予選リーグ突破ならず。

 前述の通り今回の日本チームは、開催まで間もない状態での集合であったため、通常行われるオフラインでの大会や、十分な練習期間を取ることができないまま本戦への参加を余儀なくされてしまう。そのため、「カウンターストライク」で重要とされる「チーム内での連携」や「作戦の練り込み」がうまく機能せず、予選リーグでの戦績は対韓国eSTROが2-16で敗北、対シンガポールTitaNsが5-16で敗北、対香港TEAMRSが10-16で敗北となり、リーグ全敗で初参戦となったIEFへの挑戦は終了した。

 試合を見ていると、他国の選手たちは試合中、要所要所で敵の位置確認や敵を倒した味方へ常に声を掛け合い、その勢いは試合の間途切れることなく続いていたのだが。一方、日本チームは試合の流れが不利な状況に傾くとやや口数が少なくなっていく。ここにも日本が国際試合で勝ちきれない何かがあったのではないだろうか。

 「ゲームプレイに精神論が必要なのか?」と思われる方もいるだろうが、筆者の経験上強い選手はゲームのスキルだけではなく、メンタル面での強さも持ち合わせていることが多い。普段の野試合でどんなに強いプレイヤーであっても、大舞台でナーバスになって結果を残せないということも数多い。逆に国際試合で優勝できるプレイヤーは良い意味でマイペースな、ある意味図太い精神の持ち主が多い傾向がある。

 試合後、日本代表を率いて闘ったリーダーnoppo(谷口純也)選手に話を聞いたところ「今回はチームメイトとの人間関係に恵まれて、試合期間は非常に楽しく過ごせました。ですが、試合に臨むにあたっての練習期間がやはり短すぎました。本当に世界の壁は厚いので、できれば3カ月くらい練習期間はほしいところです」と語ってくれた。また、今後の日本における「カウンターストライク」への取り組みについては「今回のチームメイトと相談して、日本でも対戦ができるように2つチームを作ることを考えています。お互いに切磋琢磨しながらプレイができれば……」とのこと。今後の彼らの活動にも注目していきたい。

 総合成績は「カウンターストライク」部門は韓国eSTROが優勝。「ウォークラフトIII」は韓国Moon選手が優勝、「スタークラフト」は韓国Bisu選手が優勝と、e-sports大国韓国の圧倒的な強さを見せつけた結果となった。

シンガポールTitaNsのメンバー。かなり変わったキーボードの使い方をしている
圧倒的な強さを見せた韓国のウォークラフトIII代表選手。女性ファンも多く、サインを求められるシーンも
海外での試合経験を積んできたnoppo選手だからこそ、海外と日本の差に歯がゆさも感じるだろう

海外との差を埋めるために今後日本でなすべきこととは?

 今回、筆者は今回日本代表選手の選考を行い、日本選手団のリーダーとして武漢に同行し、IEF開催中に行われたトップフォーラムにも参加していた。フォーラムの参加者は「武漢市宣伝部長」、「中国国家体育総局」、「韓国文化体育観光部ゲーム振興院中国主席」などなどそうそうたる顔ぶれ。彼らは国家としてゲーム競技・e-sportsをどういう形で理解し、促進していくべきなのかを真剣に説明していた。

中国の新聞には大きくIEFの記事が掲載されている

 また、彼らにとって、「なぜ、ゲーム大国日本では、世界の潮流であるe-sportsが普及しないのか」は大きな疑問になっているようで、筆者が説明した「日本におけるe-sportsの現状と問題点」については、フォーラム後に新聞記者やWebメディア、ゲーム関連ビジネスマンから個別に話を聞かせてほしい、といわれたほど。また、中国国内での注目も大きく、大会開催翌日には、筆者が確認しただけでも新聞7誌で記事が掲載され、TV局の取材、Webメディアの取材陣は数え切れないほど。このあたりでも、ゲームに対するイメージの違いが浮き彫りになっている。


トップフォーラムは大学の大講堂を使用して行われた

 日本のゲームシーンは、ゲームに対するイメージや、ゲームとのふれあい方、ゲームメーカーのビジネスモデル、ゲームコミュニティの成り立ちなど、ありとあらゆる要素が複雑に絡み合って独特のカルチャーが生まれている。そのため、海外の様なe-sportsカルチャーが根付きにくいのが現状だ。そこに対して、どういったアプローチを取っていくか、今後の課題としていかなければならないだろう。

 IEFは来年、韓国の水原市での開催が決定している。日本選手が来年再びIEFに参加することができるかどうかは、まだ決まっていない。

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