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「OGC 2009」基調講演で語った“ハンゲームにとっての選択肢”とは――NHN Japan森川亮氏

2月5日、オンラインゲーム&コミュニティサービスカンファレンス2009(OGC 2009)が開催された。今年はコミュニティサービスを重視したラインアップだった。

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ユーザーにとってなにが重要なのか

 ブロードバンド推進協議会(以下、BBA)が主催するOGC 2009(オンラインゲーム&コミュニティサービスカンファレンス2009)が2月5日、ベルサール神田において行われた。2005年より毎年行われているOGCは、「『楽しさ』×『便利』=『集まる』」−オンラインゲームとコミュニティサービスの新潮流を探るカンファレンスとして、今年は基調講演にNHN Japan代表取締役社長の森川亮氏を迎えての開催となった。今年は、オンラインゲームというよりも、コミュニティサービスに比重が置かれた講演内容になっているのが特徴だ。


NHN Japan代表取締役社長の森川亮氏

 NHN Japanの森川氏も、基調講演においてオンラインゲームポータルサイトの「ハンゲーム」のビジネスモデルと今後の方向性について言及し、コミュニティの重要性について触れる。森川氏は、ユーザーのニーズに合わせた選択肢を増やす試みを継続して行っていく旨を報告。コミュニケーションの新たなツールとして期待する、先月実装されたばかりの「アバターCool」について紹介した。

 2000年にサービスを開始したハンゲームは、累積登録会員ID数を2890万にまで伸ばし、無料のカジュアルゲームなどを含めると提供ゲーム数は187タイトル(内、自社開発141タイトル)にのぼる。最大同時接続者数も14万を超え、国内最大ゲームポータルといって過言ではない。しかし、森川氏はあくまでもNHN Japanはインターネットにおいて最良のコンテンツを生むことを主体としており、ゲームだけに注力しているわけではないと釘を刺す。クリエイターが作りたいものをユーザーに提供するのがゲーム会社であるならば、インターネットの会社はユーザーが中心であり、ユーザーが欲しいものを早く良いものを確実に提供するのが目的と持論を展開した。


ハンゲームが韓国で立ち上げた際は、花札が人気を博した。日本では麻雀が人気で毎月30万人が遊ぶ

 森川氏は、どうしたらコミュニケーションを楽しくできるかを考えた時、ゲームというインタラクションができるものを媒介としたほうが、簡単にコミュニケーションができると結論に至り、日本人ならではのゲームを中心に開発に取りかかったと振り返る。ある程度、とっかかりやすいタイトルをオンライン化し、そしてオリジナルタイトルへの移行してきたのだという。そこには常にコミュニティを意識した設計が施されていると、その中核となるアバターについて触れた。

 アバターは単純に洋服をはじめとしたアイテムを提供するユーザーの分身という定義だが、リアルな服と違い古くなることも痛むこともない。そこで買い換えることを促すために、期間限定などのゲーム性を高めることにしたと森川氏。希少価値やコレクション要素を加えることで購買意欲を喚起することに成功したのだ。集めたものは人に自慢したくなるという欲求を満たすことで、コミュニケーションは生まれ、そして自己表現の場として活用されることになる。

 NHN Japanでは1月28日より、前述した新アバターサービス「アバターCool」を開始している。従来の2.5頭身のものを「アバターPure」とし、これとはまた違ったコンセプトで開発された、より大人向けのアバターとなる。これは、Pureでは子供っぽいと思われるユーザーへの選択肢として提供されたもので、4.5頭身のアバターはよりリアルとの接点を生み出すと期待されている。そこから新たなサービスの創出を狙っているのだ。Coolでは、4つのテーマ別ブランド+ヘアサロンを用意。さまざまな表情やもちろん細部のズームアップを用意し、ゲームとの連動も実現している。

 元々、韓国からゲームを持ってきた時、どうしても“対戦”というイメージが強かったと森川氏。日本では勝ち負けよりも、人と人とが楽しく遊ぶことに価値を持つという考え方が多いのは事実。勝負ごとはとかく傷つくことも多く、人間関係が壊れることを恐れる日本人には、あまり勝ち負けが明確にならず、運の要素があり、気まずくならない設計が必要だったのだ。その延長線上に、コミュニティ機能の強化があった。こうした設計は、日本独自のもので、世界でも初めてではないかと森川氏は語った。

無料のゲームを提供し集客。そこから人と人とがつながり、人間関係が生まれ、コミュニティが活性化する。ユーザーが表現する環境として、アバターやSNS、ブログと拡大し、アバターやアイテムなど課金して得たもので自己表現する。この蓄積こそが、デジタル資産と森川氏

 1つのゲームタイトルで成功した会社は、ポータルの事業に進出し、いずれそのポータルで遊べる大型ゲームタイトルへの開発へと移行すると推測した森川氏は、NHN Japanにおいても大型のゲーム開発に着手している。他社運営のゲームを流通のチャンネルとしてサービスをするという形だったが、現在は自社でライセンスを取り、自社開発も行い、現在は40種類に増えていると報告する。

「ファミスタ」を例に取ると、人気のコンソールゲームをオンライン化するのは簡単そうで難しいと森川氏。コンソールでの自分中心のゲームデザインを刷新し、運の要素を取り入れることで、初心者でも勝てるかもしれないと思わせることが大事とのこと

 森川氏は、簡単でシンプルなゲームを求めているユーザーと、大型のゲームを求めるユーザーとの違いを感じると、それぞれに適したサービスを提供していく今後について話を進めた。そこでは、最近チャレンジしたのが大人向けのサービスにも触れ、パチンコや麻雀など、大人が楽しく遊べる場所の必要性を解き、実機提供メーカーとの協業も行っていると紹介した。これにより、ハンゲームは「カジュアルゲーム&コミュニティ」と「ゲーマー向け」、そして「大人向けのサービス」と3つのドメインを有し、“ゲームという切り口”では幅広いターゲットの網羅に成功していると解説した。

 なお、ケータイ版ハンゲーム“ハンゲ.jp”にも注力しており(現状、累積登録会員ID数が67万を超え、提供ゲーム数が105本となっている)、PCハンゲームの価値をモバイルにも拡大していくと説明していた。コミュニティについても、モバイル独自のものを提供し、それに伴いアバターについても機能拡充していく方針だ。インターネットの世界はシームレスにつながる世界であるゆえ、PCでもモバイルでも同じIDで遊べる形を提供していくことが大事と語った。

「シームレスの環境で遊べることと、よりリアルなコミュニティとの接点を持つことが、ユーザーの価値を高める。それが、やはり蓄積することでデジタル資産が価値を持つ」(森川氏)


 補足すると、ハンゲームがアバターPureを提供してから7年ほど経つ。その間、さまざまなアイテムを提供し価値を高めてきた。これはNHN Japanにとってもユーザーにとっても重要なデジタル資産と理解できる。森川氏は、従来のPureを利用するユーザーから、Coolの実装に伴い反発があったと認めている。Pureを利用してきたユーザーたちのデジタル資産の価値が下がるんじゃないかという不安があったからにほかならない。

 森川氏が、常にポータルサービスをやる上で心がけていることは、ユーザーに選択肢を用意することだと語っていた。それは、ゲームにおいても同様なのだという。他社タイトルをハンゲームに持って来るという話になった際、自社タイトルを大切にしないのかという声が内部から上がったのだそうだ。しかし、ユーザーにとっては楽しみたいものがそこにあるかないかが重要であって、選択肢が増えることは大歓迎なのだと説得したと振り返る。それは、今のハンゲームの隆盛からも証明されている。アバターでも選択肢が増えることは、自明の理だと森川氏。要は、それに合わせたコミュニティとサービスをどれだけ提供できるかが大事なのだから。

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