安価なライセンス費を武器に伸び続ける台湾ゲーム――TAIPEI GAME SHOW 2009リポート後編:TAIPEI GAME SHOW 2009(2/2 ページ)
後編では主要メーカーブース以外のTAIPEG GAME SHOWらしい風景を追いつつ、台湾ゲーム業界について考察してみた。会場ではUserJoyスタッフに遭遇、MMORPG「Angel Love Online」の最新情報もプレイヤーには必見だ。
「Angel Love Online」次回アップデートは天空の都市?
UserJoy Technology(宇峻奥汀)は日本でもサービス中のMMORPG「Angel Love Online(以下、Angel Love)」やパッケージゲーム「幻想三国誌」の開発元として知られるほか、日本支社を2007年9月に設立し「三国群英伝Online」の運営を行っている。インタビューではAngel Love Onlineの次期アップデート内容を中心に、今後の同社の方針などを聞いてみた。
Angel Loveは日本でも間もなく次期アップデート「忘却の都」が実装されるわけだが、まずはこれの詳細を。忘却の都には2つのメインコンテンツがあり、1つはハウジングシステムの導入だ。各プレイヤーが部屋を1つずつ所有でき、もちろん好みのインテリアで飾り付けられる。デコレーションアイテムにはソファや机といった家具から壁紙まであり、種類は数えきれないほどだという。また家具類のほとんどは生産系スキルで作り出すもので、NPCを通じて販売されるものは少ないそうだ。
メインコンテンツのもう1つはエリア拡張。当然それに伴って新たなモンスター、ボスモンスター、騎乗ペットに機甲、武器や防具が実装される。新マップは砂漠で、レベル130以上を対象とした上級プレイヤー向けである。ボスモンスターは巨大な蛇神の形をしており、マップの最終ステージに登場するのだが、このボスと戦闘するために特別な召喚アイテムや前提クエストなどはなく、レベルさえ足りていれば誰でも遭遇可能とのこと。
Angel Loveで大型アップデートが実施されるたびに楽しみな機甲だが、今度のデザインは王さんの説明によれば“アヒルちゃん型風呂桶”なんだとか。バスタブにつかりながら採集活動とは、なんとも優雅というか横着というか……。一方騎乗ペットは砂漠のイメージに合わせてダチョウとラクダの2種が追加される。新武器&防具はやはり高レベルユーザー向けのものを5〜6種実装する。ちなみに台湾版と日本版でアップデート内容にほとんど差はない。
続けてさらに先のアップデートについて聞いてみたところ、大枠について教えてもらえた。アップデート名はまだ未定だが、空中に浮かぶ都市が登場するようだ。このマップには3つの新ボスモンスターもいるらしい。また、新クラスと新スキルも実装されるとのこと。この新クラスについては近接職なのか魔法職なのかアレコレ聞いてみたのだが、さすがに教えてはもらえなかった。その他、既に実装済みのゲーム内ミニゲームに、日本の運営元であるキューエンタテインメントからの要望で、新たにパチンコが加わるという。台湾での実装は第2四半期が予定されている。
日本と台湾、両方でのAngel Loveの調子はどうかという質問に対しては、PCゲームプレイヤーの母数が違うので単純にプレイヤー数だけを見れば台湾の方が多い。しかし同タイトルは海外でも大きな成功を収めた台湾産タイトルとして知られており、UserJoyとしては日本市場を非常に重要視しているため、Angel Loveに関して言えばアップデートの際には必ずキューエンタテインメントと何度も話し合い、日本のユーザーに受け入れられるか慎重に検討しているとのこと。また、UserJoy作品のプレイヤーには本当に同社作品が好きな人が多いため、オンラインゲーム&パッケージシリーズ共に息の長い作品が多く、台湾産のPCオンラインゲームに限って言えばAngel Loveは常にトップ3に入っているそうだ。ちなみにランキング全体でいえば1位は“いつもWoW”という言わずもがなの回答だ。
続いて2009年のUserJoyについて聞いてみた。王さんは「弊社には3つのヴィジョンがある」と述べた上で、個々について説明してくれた。第1は台湾でより数多くの運営タイトルを持つこと。プレイヤーの好むジャンルやタイトルの特徴、どんな物にお金を払ってくれるのかという傾向など、ゲーム運営に必要な全ての情報を集めてもっと経験を積み、パブリッシャーとして腕を磨いた上で、得た経験を自社開発作品にフィードバックしたいから、というのがその理由だ。
実は2009年中に3つの新作MMORPGのサービスを、台湾でスタートさせることも決まっているという。いずれも自社開発の作品であり、タイトルも「三国群英伝2」、「新絶代双驕2(The Twin Hero Online2)」、「火鳳三国Online」と既に決まっている。まだ開発途中の作品ゆえに、あまり詳細な情報は教えてもらえなかったが、現時点で分かっているのは、3作品ともにPvPがメインの3D MMORPGであり、三国群英伝2と火鳳三国OnlineにはBigWorldエンジンが使われていること。火鳳三国Onlineは三国志をベースにしながら、欧米風デザインをミックスさせたファンタジー作品で、三国志の有名な武将も登場するが見た目はまったく異なり、中国風の鎧なのに手には拳銃を持っていたりする。開発の進捗度は70%程度で、第3〜第4四半期のサービス開始を目標としている。さらに例年北米で行われるゲームショウ「E3」にも出展を予定しており、火鳳三国Onlineのプレイアブルなものが見られるだろうとのことだ。三国群英伝2についても、中国の運営が強い興味を示しており、既に何社かとコンタクト済み。前作の三国群英伝が台湾ではユーザー数8万5000人という実績もあり、かなりの自信作なんだとか。
さらに自社開発作品以外にも、スクウェアエニックスのMMORPG「コンチェルトゲート」の台湾サービスを第二四半期からスタート。こちらは中国の9youがライセンスを持ち、中国大陸向けに大幅に手を加えたバージョンを扱うため、日本の同作品とはだいぶ内容も異なるようだ。もう1つ、現在契約中である海外の作品を加えた、全5作品を2009年中にサービス開始させるという。
第2のヴィジョンだが、現在UserJoyは日本、中国、ヴェトナム、タイ、インドネシア、北米、欧州において幾つかの自社タイトルをサービスしているが、すべての自社タイトルをこれらの国で運営すること。そしてさらに海外展開を拡張していくことだ。次に有望視している国については、人口が多くてPCゲームのマーケットも拡大中のロシアとトルコだと答えてくれた。
3番目のヴィジョンだが、Angel Loveに続きPS3やXbox360などコンシューマ機でのタイトルサービスだという。PC版とコンシューマ機版でサーバも当然共有し、より多くのプレイヤーが集まり賑わうようにしていくことが目的だが、どのハードウェアで展開するかはまだ未定との話であった。
最後にお二人からのメッセージとして「プレイヤーのことを考えて、きちんと目を配る開発・運営メーカーとして2009年も頑張ります。私たちの作品は台湾以外の海外でもサービスされていますが、全てのサービス国に向けて、アップデートも必ずちゃんとお届けしますので安心してください。2009年には新作タイトルもあります。皆さんこれからもUserJoyに期待して、これらの新作が始まるのを楽しみにしていてください。皆さんからのフィードバックも待っています」とコメントをいただいた。
以上、作品ベースでなく、台湾ゲーム業界事情にフォーカスしつつ、ゲームショウリポートの補遺をお送りした。出展メーカーがやや少ないにもかかわらず、初日と2日目の人出は対昨年比40〜50%増しで、これは各社によるレアアイテム販売と、旧正月明けとはいえ学生さんがまだ冬休みのタイミングであること、台湾の消費者に昨年配布された「消費券」日本円で約1万円相当の効果であるらしい。消費券が持つ、年間経済成長率へのプラス効果は0.66%と見込まれているそうで、これによって政府は多額の借金を負うことになるそうだが、少なくとも貯蓄に回されてしまう惧れはないようなので、景気浮揚には実際ある程度効果的なようだ。
日本におけるオンラインゲーム市場で、ゆっくりと、だが確実に存在感を増しつつある台湾ゲームには、今後も注目しておくべきだろう。
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