TAIPEI Game Show2009番外編──ガマニアCEO Albert LIU氏インタビュー(後編)(2/3 ページ)
前編に引き続き、Gamania Digital EntertainmentのCEO、Albert LIU氏へのインタビューをお届けします。新作タイトルについても紹介。
―― いやいや、お話だけでも十分に驚きました。結局のところ、コンピュータゲームは大枠でアメリカ文化ですから、例えばヨーロッパ生まれのファンタジー設定が、メジャーモチーフになるのは宿命です。それは日本の主要なコンソールRPGにまで、そっくり引き継がれてしまっています。そこで逆にアジア発の要素をどうやって欧米に持っていくかということは、もっと真剣に考えられてきてもよかったのかなあと。
Albert LIU氏 欧米文化が強いことは疑いなく、そこには常に在来文化との間でジレンマがあります。だからこそ「H108」も欧米的な枠組みを大きく取り入れています。それはそうですがこれからの10年で、アジアは発信側に立つことになるのだ、そう思っています。
―― ではそうしたグローバル戦略を担う「H108」のゲームとアニメーションを、大陸中国でサービスする予定はありますか?
Albert LIU氏 欧米でのサービススケジュールをもう少し具体的にFIXしたうえで、アジアでのサービス予定を決めたいと思っています。
―― 同じ中華圏である大陸中国では、どのように受け止められると予測していますか?
Albert LIU氏 もちろん、アジア圏でもますます伸ばして行きたいですが、現在の順番としてはまず、欧米を先にターゲットとしていきたいと考えています。欧米のゲームスタイルと中国のストーリーを組み合わせたものが逆にアジア圏で受け入れられるかどうか、やはり少々不安はあります。ぜひご意見をいただければ嬉しいですね。
―― せっかく欧米にも進出しようというタイミングですから、最後にGamaniaさんのサービスのファンになってくれるであろう、世界のゲーマー達に向けて、メッセージをぜひお願いします。
Albert LIU氏 オンラインゲームの開発会社として、長期的、持続的に世界のゲーマーにサプライズ提供し、満足してもらえるようゲームコンテンツを開発していきたいと思います。それができたら、一番うれしいですね。
―― 本日はありがとうございました。
なんと、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアへの進出を決めたというGamaniaグループ。しかもそれはアニメーションの同時展開を前提とし、「水滸伝」由来の作品でアジアからのコンテンツ発信のあり方を問うという、実に注目すべき方法論から始まる。彼らが選ぶ手法は、いわゆるジャパニメーションやJ-RPGと構図が似ているようで、まったく異なるアプローチだ。必然的に韓国流とも異なる。
そうしたGamaniaのグローバル戦略を担う「H108」とはどんなゲームなのか。次にそれを見ていこう。
カートゥーン風グラフィックスで欧米市場を狙う「H108」
画面をご覧いただくのが一番早いかもしれないが、「H108」はMMORPGではなく、ステージ制のオンラインアクションゲームである。水滸伝の豪傑達は一部がプレイヤーキャラクター、一部がNPCとして登場し、プレイヤーキャラクターの選択肢はアップデートを通して増えていく。ちなみに敵の大ボスはきちんと(?)高キュウ(キュウはにんべんに求)であるようだ。このように、ストーリーと背景設定の下敷きとして水滸伝があるのは確かだが、あくまで欧米を中心に10代の子供達をターゲットとした、コンソールゲームライクなアクションであり、プレイ内容、グラフィックス、個々のゲーム展開としてのストーリーはオリジナルのものだ。ゲームパッドでの操作にも対応するという。
アニメーションの第一シーズンには林冲ら四人の豪傑が登場し、ゲームの仕様としても彼らがプレイヤーキャラクターとなる。彼ら四人は「第一小隊」というチームになっているそうだ。
ステージは「スーパーマリオブラザーズ」のように「1-2」「4-3」などといった、区切りを持った編成になっている。そのひと区切り、複数のステージから成る「マップ」は、ほぼ1週間で1マップというペースで追加可能なようで、これはアニメーションの進行に合わせた実装ペースが実現可能ということだ。1ステージのクリア所要時間は10〜15分、1マップは六つのステージから成っているため、攻略には1〜2時間程度かかることになる。
各ステージ/マップにはとくに水滸伝のイメージは反映されていないが、ホームエリアの名前は梁山泊となる。ここではチュートリアルモード/プラクティスモードがプレイできるほか、スキルの取得/強化もここで行う。
オンラインゲームであるから、各マップは複数プレイヤーで挑戦可能であり、誰かがゲートのスイッチを押している間に、ほかのプレイヤーキャラクターがそこを通るといった、チームプレイギミックも盛り込まれる。途中で戦闘不能になったキャラクターと、マップをクリアしたキャラクターは、ロビーに戻る形となる。
各豪傑は、普通のゲームにおける職業設定のような違いを持っていて、ジャンプ力やスピード、必殺技の種類などが異なる。そして各豪傑の能力は、水滸伝におけるイメージをある程度生かしたものになっているという。キャラクターの成長はオーソドックスなレベル/スキル制で、アバターアイテムもいろいろ提供される。ステージ性のオンラインアクションによくあるとおり、戦闘不能になったキャラクターがその場で復活するための“コンティニュー”アイテムもあるそうだ。
現時点での完成度は50〜60%ほどで、まだいろいろ変更が入る可能性はあるとの話だが、必ずや日本でもサービスを行うという。最後にKUO氏に、興味を持ってくれた人へのメッセージをお願いしたところ「シンプルかつエキサイティングなゲームになっていますので、みなさんぜひお楽しみください」とのことだった。
仙族と魔族を往復して、1キャラで二度おいしい「仙魔道」
さて、せっかくの台湾取材なので、日本でもそろそろアナウンスが始まっている「仙魔道」についても、最新の情報をお届けしよう。作品タイトルは中国ファンタジー色が強く、日本人イラストレーターによるプロモーションキャラクターの画像は漫画/アニメ風の「仙魔道」だが、ゲーム内容としてはアバター要素などを充実させ、武侠や中国特有の神仙思想を前面に押し出さない、架空世界を舞台とした今風のMMOファンタジーRPGに仕上げているという。
仙族と魔族という設定が、realm(レルム。種族、部族、国家)でも、単純なaliment(アライメント。善悪二項対立)設定でもないところが、この作品の特徴だ。プレイヤーキャラクターは自分の立場として、仙族と魔族の間を任意に往来できる。途中まで仙族として育てたキャラクターを、ある時点で急に魔族に転向させたりできるのだ。このあたりは中国ファンタジーの特質、普通の人間が修行を通して仙人になるという発想を、うまくプレイ要素に生かした部分かもしれない。
このゲームの世界には、仙族、魔族、妖族の三つがいて、プレイヤーが演じられるのは前の2つ。妖族は少なくとも当初、どちらにも与さない第三勢力と構想されている。ただしオンラインゲームであるから、このあたりはサービスの進展につれて変わる可能性もあるそうだ。
仙族と魔族それぞれの職業構成は、実は同一になっている。つまり反対側にも必ずカウンターパートがあるわけで、このあたりも自在な族間移動を前提とした構造である。では、仙族と魔族で何が違うかというと、そのとき身につけられるスキルだそうで、とはいえ仙族から魔族、魔族から仙族に転じても、一度身につけたスキルはきちんと持ち越されて、そのまま使える。
では仙族のキャラクターと魔族のキャラクターでどこが違うかというと、これは基本ステータスから異なるという。仙族は多人数プレイ向けスキルが得意で、防御力が伸びやすいのに対し、魔族は攻撃力が高く、ソロプレイがしやすい。
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