ITmedia ガジェット 過去記事一覧
検索
連載

ローカライズとは何でっしゃろ? を考えてみたくねくねハニィの「最近どうよ?」(その33)(3/4 ページ)

日焼け止めも塗らず、炎天下の中営業に出ていたため日に焼けてしまい「海に行った」とガセネタを流されたくねくねハニィが、久し振りにお送りする「最近どうよ?」の第33回目。CEDECでも話題の多かった「ローカライズ」のお話に触れてみたのでよろしこ。

PC用表示 関連情報
advertisement

音声収録とかも

 レイジーな欧米人(失礼しました)は、日本の「文字をいっぱい読む」ゲームの仕方がお嫌いみたいで、結構「音声」を入れてくれってことになるんですよ。まぁ、日本語で収録をしてる場合は、現地語によるボイスオーバー(アフレコ)は必須。無理やり日本語の口の動きに合わせてアフレコをしたりもしてますけど、リップシンク(言葉とキャラの唇の動きを合わせること)もする場合が多いですね。

 音声収録はちとおもしろいことになってるのだ。英語で話すと、実は短い尺で入れられたりするので、一度ボイス用に翻訳された文章をムービーの尺にあわせて、文字数を長く調整したりもするのだ。音声学的に言うと、子音が多い欧米言語と、音節にすべてに母音が伴う日本語の違いからくるんだけどね(ちなみにハニィの大学の専攻は英語音声学だったりする……笑)。

 この文章を長くする、という作業や、若干ニュアンスが違うから言い回しを変えよう的な作業は、アフレコをしている最中に現場(スタジオ)でアドリブで行われることが多いため、現場で変えられた内容をきちんとテキスト上も変更して管理しなくてはならないんですね。そうじゃないと、ゲーム中で画面に表示されるテキストが、実際の音声と違う!なんてことに。煩雑になるのは必至なんですけど、この辺の管理は、いやぁ、ホント大変。

 さらに世界観を共有するために、楽曲(テーマ曲とか)も英語にして現地の歌手に歌わせるってこともしたりするけど、日本では英語が受け入れられてるから、最初から英語で歌っちゃうってこともよくあることですねぇ。

タイトル名とかキャラ名とか

 日本でつけられたタイトルや主人公/NPCの名前なんかが海外でそのまま使われないのにはいろんな訳があるのをご存じ? もっと言うと、地名やアイテムの名前も含むあらゆる固有名詞は、理由があって変更されているのよぉ。

 あまりにも日本っぽくて感情移入ができないとか、イメージ的に合わないとか、そういうマーケティング的な要素で変更される場合もあるよね。例えばタロウ君じゃ外人はピンと来ないのでアンディになっちゃうとか、ハナコちゃんはナンシーになっちゃうとか。キャラのイメージに寄って「しっくり」来る名前ってのが海外でもあるんだろうな、って思う。

 それよりも一番の大きな理由は、商標など権利の問題なのだよ。そのままタイトルをつけようと思ったら、他の人がその名前をトレードマークとして登録申請している場合などが挙げられるね。また、日本人は知らないけど、誰か有名な人の名前や場所を知らないで使ってて「それは俺が持ってる名前だよ! 使われて迷惑だ!」と訴えられても困るわけですわ。

 ま、日本からローカライズしようとすると、こういう問題にもブチ当たるわけで、やっぱり現地に任せるべきってのはこんなところもあったりするからなのだ。売り手が「変更してくれ〜」と要請してきたら、むやみに「世界観を壊す!」などと言わず、きちんとした理由があるはずなので対応してあげてくだされ。

 ちなみに、海外で発売するタイトルは、発売を決めた時点で商標申請するのがならわし(笑)ですね。これは、同じタイトルのソフトを他社さんから出されてマーケットに混乱を来すのを避けるためでやんす。申請順に保全されるので、決まったら申請準備をするのが吉かと。

NTSC/UCとかPALとか

 技術的なところで行くと、NTSC(National Television Standards Committee)/UC、PAL(Phase Alternation by Line)への対応があるよね。旧来の地上波アナログカラーTV放送方式が地域によって違うので、合わせてあげないといけないのだ。

 Xbox 360やPS3がハイデフ対応だと言っても、世の中のテレビが全部ハイデフ(ハイビジョン)ってことではないので、なかなかソフトもHDMI専用ってわけにはいかず(ハニィんちの3台のテレビもすべてブラウン管のままですんでよろしこ……涙)、北米向けNTSC/UC、欧州PAL版(最近は60Hzだけでいいみたいだけど、フレームレートを30から25に落とさないといけない)にも対応しなくちゃいけないのよねぇ。

 ネットワークに関してもサーバを日本においてアクセスさせる場合(そんなのあんまりないか……笑)を除き、サーバ構築のための資料を提示したり、場合によっては構築してあげるってことも。現地のサーバセットアップへの協力は必須ですな。Xbox 360の場合、マッチングだけならマイクロソフト側で対応してくれるので楽チンかも。

カスタマイズ

 文化の違いがあるので、1stパーティとの交渉、ESRBなどのレーティング対応は現地にしてもらわんといけないのよね。大雑把に言うと、日本は「エロOKグロNG」、北米は「エロNGグロOK」って言われていて、日本のエロの敷居の低さは海外からものすごくびっくりされてますね(笑)。更なるステレオタイプな追加情報としては、欧州は「エロOKグロOK」、ただしドイツだけは「グロNG」、豪州は「グロNG」。おもしろいことに、アメリカが一番エロに厳しいのだ!

 あとはアルコールやタバコに関しても日本より海外がうるさかったりしますな。今となっては笑い話だけど、ハニィが過去にローカライズに関わったタイトルで、子供向けのソフトがあったんだけど、ステージ中にNPCが温泉につかって一杯やってる、って場面があったんですよ。で、北米のレーティングESRBのガイドラインによると、「アルコール」が含まれるとE(Everyone)のレーティングがつけられないとな。ってことでその部分を作りなおしてみたりしましたけどね。

 この例は、Eレーティングで出したいから、修正ってことだけど、あまりにもエロが行き過ぎていたり、何かの事件を彷彿とさせるようなことがあったりすると、発売すらできないような事態にもなるので、ゲーム自体の修正を余儀なくされることも多いのだね。

 で、ここで言いたいのが「カスタマイズ」。日本では受け入れられることが受け入れられなかったり、当たり前のこと(ほら、温泉でおチョコで一杯なんて日本ではフツーのことじゃん?)が当たり前じゃなかったり、ってことに対応しなくちゃいけない。

 日本タイトルの「仕草(しぐさ)」が難しいとの声があるの。ムービー中のキャラの動きが理解できないとな。うーん、確かに日本人を使ってモーションキャプチャーしたものでは、日本人の独特なものがあって、違和感を感じてることが多いらしいのね。モーションを最初から外人(笑)を使うってこともゲームによっては考えるべきなのかもしれないね。

 翻訳を取ってみれば、日本語英語になってるからニュアンス的に日本では通じても、英語に直訳すると「ちとおかしくね?」みたいな話になったりする。例えば信号の「青」をBlueって訳しちゃいそうだけど、それって英語的にはGreenじゃね? みたいな。

 別の例としては、華奢(きゃしゃ)な主人公キャラクターを好む日本を含む東アジアの文化とマッチョを好む欧米では、日本が提供するメインキャラを操作するってゲームだと、ゲーム自体を遊ぶためのモチベーションにまで影響するのだよん。ドット絵時代なら気にならなかったキャラの外観も3Dになるとものすごく違和感を感じてる、ってのが海外の声。好みの問題ではあるけど、より大きな市場に受け入れるためには、キャラまで変更を余儀なくされる場合も多いのだよねん。

 日本のソフトが絶大なる評価を受けていた時は、そのまま押しつけてた部分があったかもしれないけど、欧米のメーカーがこぞってビッグタイトルを連発してくる時代になると、「よくわからない」部分や「あまりに日本的」な部分は考えなきゃいけないと思う。

 ただ、これも独りよがりの発想で「きっと欧米はこうだ!」ってことじゃなくて、あくまでも現地側の担当者に確認をすべし。意外に日本特有って思ってることが受け入れられてたり、バッチリ欧米向けって思ってたことが古っ、って話だったりするのだよねん。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る