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ローカライズとは何でっしゃろ? を考えてみたくねくねハニィの「最近どうよ?」(その33)(4/4 ページ)

日焼け止めも塗らず、炎天下の中営業に出ていたため日に焼けてしまい「海に行った」とガセネタを流されたくねくねハニィが、久し振りにお送りする「最近どうよ?」の第33回目。CEDECでも話題の多かった「ローカライズ」のお話に触れてみたのでよろしこ。

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まとめ:ローカライズからカスタマイズ、カルチャライズへ

1.海外展開するの? しないの?

 昔は、海外市場はおまけ市場だったから、日本版を急いで作って、それから翻訳して入れ込んで、「はい、どうぞ」ってやり方だったのね。だから、日本版から3〜6カ月遅れて北米版、さらに数カ月遅れて欧州版が発売されるってのが常だったわけさ。さらに欧米(特に北米)のメディアは、かなり前倒し(3カ月前とも4カ月前とも言われるわ)に素材提供を要求されるので、日本のスピード感でいくとどうしてってこともあるけどね。

 英語や欧州言語を相互に翻訳するのは、日本語から欧米言語に変換するよりは簡単な訳で、日本語版が先に出来てしまう日本発コンテンツは非常に分が悪いから、ってのもあるし、プロモーションを考えると、日本よりもかなり早い段階でメディアに仕込まなきゃいけない欧米市場だから、フツーに考えると遅れるのは必至よねぇ。

 そもそも「おまけ」市場とは言えない市場規模になっとるので、日本側も考えを変えないといけないのではないかなと。あ、もちろん、海外先行発売や世界同時発売を実現している日本のメーカーさんも多数あるので、最初から仕込んでるってことでしょ。それは理想なんだけどさ。

 日本だけで売れればいいさ、って最初から思ってるなら問題なし。実際に海外では難しいと言われるタイトルはたくさんあるからね。でも、海外も意識するなら、海外版を作るのか作らないのか、いつ発売したいのか、そのためにどういうスケジュールを引けばいいのかってのは最初から決めておこうよ。

2.カスタマイズは意外に難しい?

 ローカライズがどういう作業か知っていれば、それをどう効率的に組み込んでいくのか考えるの難しくないはず。でもね、カスタマイズって意外に難しいのよ。

 翻訳の例をあげると、ちょっとでも外国語を学んだ人なら分かると思うけど、言語って(特に欧米語と日本語では)必ずしもイコールで訳せないのよね。日本語は得てして擬音(ぎゃー、ドタバタ、ギスギス、ちまちま……などなど)が多かったり、主語がなかったり、表現的に多彩で、隠れているニュアンスがあったりと、文章や背景を咀嚼して理解しないとホントの意味での翻訳は不可能な難しい言語なんですね。だから、翻訳と言う意味では「翻訳者」の資質、センスに頼らざるを得ないわけで、世界観を生かすのもぶち壊すのも翻訳者次第、とも言えるのだよね。

 翻訳者に対してはあらゆる情報渡しましょうね〜、特にセリフだったりすると、そのキャラの性格を含んだ設定や、実際のムービーシーンや絵コンテでもいいので。感情の部分が一番難しくて、情報がないと、日本が得意(笑)の「言外の意味」(嫌みなのか、ひねくれてる発言なのか)が伝わらないのだ。

 欧州版を考えているならなおさら北米版をちゃんとすることを考えないとね。なぜなら北米版を元に欧州版が展開される場合が多いから。英語(米語)翻訳がめちゃくちゃだと、欧州言語までめちゃくちゃになる可能性があるし、間違ったカスタマイズをするとそのまま欧州にまで反映されてしまうのだよねん。最近では、大きなパブリッシャーは、英語を介しないで、日本語から多言語展開をしているようですね。より高いクオリティを求められるようになると、他メーカーさんもそういう対応を迫られると言われているわ。

 そう考えると、現地側のローカライズ責任者は、ちょー専門職で、センスとコーディネーション力と言う意味ではある意味クリエイターに近い人と考えてもいいかもね。マーケティングと言う意味でも日本が考える「あるべき姿」を押し出すのではなく、欧米の人たちが考えるプッシュのしかたを吸収する度量も欲しいところ。世界観というのは万国共通で共有できる場合もあるけど、同じ文化の中でしか共有できないものもあるのだよね……。逆転の発想であまりにかけ離れた文化の場合はおもしろい「?感」ってのが生まれたりもするんだけどね。あ、混乱を招くようなことを言ってしもた。

 ここまで来ると、カスタマイズではなく「カルチャライズ」と言えるかもね。要はユーザーの地域に合わせてローカライズするだけじゃなくて、ユーザーの地域の文化にも対応したローカライズってこと。

 海外をメインの市場に考えるなら、チームとしての海外スタッフの参加は不可欠かと。技術的、作業的に考えると、最初からカスタマイズ、カルチャライズを考慮して早い段階で欧米版を別のラインにする、みたいな斬新な考え方も必要かもしれないね。なぜなら、きっちりと日本版を作ってしまった後にああしろ、こうしろと言われても、グラフィックしかり、ゲーム性の調整しかり、なかなか修正って利かないし、時間もとってもかかることになっちゃうからね。

 ハニィが営業だったころよく欧米のパブリッシャーに言われたこと、「出来上がってから持ってこられても……、どうせもう修正できないって言うんでしょ?」。あちゃー、その通り。次の国内タイトルのスケジュールも詰まってるんで何とか翻訳だけで対応しましょう!って流れ。ダメなパターンだよね(笑)。

3.ローカライズの成功

 いろいろ書いてみたけど、ローカライズとは、最近では「カスタマイズ」または「カルチャライズ」の域までを含んでいて、更には、発売を世界同時にしたいとか、地域によって別バージョンにしてくれ、と、ハードルはどんどん上がっているのね。

 そんな中で、ワールドワイドタイトルとして「ローカライズした」ってユーザーに思わせないことが本当のローカライズタイトルの成功ではないかとハニィは思うのだよね。

 この成功は、海外展開も考慮に入れてゲームをデザインした開発者はもちろん、ローカライズ過程における翻訳者、現地タイトルローカライズ責任者、現地プロデューサーなどのクリエイティブ集団がタッグを組んで出来た賜物とも言えるのだよん。

 ハニィが言いたいのは、ローカライズ自体クリエイティブ性を問われていて、海外展開においては商品性の大きな1ファクターになっているってこと。ここを端折(はしょ)ったり、テキトーに流すってことは、ローカライズをしていないより悪いかもしれないよ?ユーザーの地域にユーザーが理解でき、楽しむことができるソフトを供給することが本来のゲーム制作に関わる人の使命ではないかしら?

ハニィのあとがき 

 ふふ、もう知ってるわい! って方々にはごめんなさい。「ローカライズって実際どういうことをするの?」って質問に答えてみたハニィでした。専門的なところはぜひCEDECあたりの記事をご覧くださいませ。

 ところで、ハニィがぼーっとしている間に、マイクロソフトの「Zune X」なる噂が出てまして、要はマイクロソフト製ケータイゲーム機(しかもケータイ用SIMトレイ付!)ですな。マイクロソフトは存在を認めましたけど、発売時期は未定。これって、日本で発売されるのかなぁ。歴代のZuneは日本で発売されていないので、もしかして……な感じ。日本だけ発売されないと、Xbox 360以上に市場間の乖離幅が広がっちゃって、世界のトレンドに取り残されるのでは? とビビってたりするハニィでした。

 さぁて、皆さんもワクワク? ドキドキ? ワサワサ? してるTGSがもうすぐ開幕! ハニィもドタバタ準備してますけど、スケジュール表を見るのがイヤになるくらいのパッツンパッツン度。シルバーウィークって言われる連休もハニィにとってはバリバリの稼働日ですわん(涙)。来年は連休を外して開催してくださ〜い!!

 それではまた、ゲームショウ明けにお会いしましょっ!

くねくねハニィのプロフィール

1967年アメリカサウスダコタ生まれの日本人。

小学生からはゲームセンターに通いまくってやたら大きく育つ。

1990年に都内K大学を卒業後、大手ゲーム会社にて海外ソフト担当となり、2001年に退職。それ以降は自称フリーのゲームアナリストとして暗躍。暗躍しすぎたので名前を変えて表舞台に。くねくねと唐突に現れて「親父ギャグ」をかまして周りの人々のレベルを下げまくる。独特の語り口調ですが、もう慣れてくださいとしか言えません。言ってる中身は至極マジメなので。ちなみに「風来のシレン」が好物で、名前もそこから借用。なんだか公認してもらったそうです。

ホント、ゲーム関係者にとってみればバタバタな連休になってしまいましたよ。


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