日本人泣かせのライセンスビジネス:くねくねハニィの「最近どうよ?」(その36)(2/3 ページ)
久しぶりにごっついインフルエンザにかかって(新型じゃないよー)ダウンすること7日間、やっと回復しかけたところにアメリカ出張に出かける(涙)くねくねハニィがお届けする、2010年最初の「最近どうよ?」の第36回目。今回はライセンスビジネスのお話。ちょっと辛口だけど、日本人のためにあえて涙をのんで書いてみたので、読んでよろしこ。
ライセンスとはなんだろか?
ライセンスとは、日本語で言うと「使用許諾」。製造物のように目に見えるものであれば、単純にモノとお金で「交換」というやり取りができるので、「売買取引」というわかりやすいものになるんだけど、ソフトやテクノロジーなどの知的所有物はコピーができちゃうから引き渡しというわけにはいかないんですな。
だから、そのようなテクノロジーやソフトなどの知的財産権者であるライセンス元(ライセンサー)が、ライセンスを受ける側(ライセンシー)に対して一定の条件で「使っていいよ」って許可をすることを言うんですね。
ソフト開発をしていると、ミドルウェアやツール、ライブラリ、フォントなど、第三者のライセンスを受けて使用しているケースが多いと思うんだけど、フリーウェアやシェアウェアのようなネット決済ができる場合を除き、やっぱり「ライセンス契約:使用許諾契約」というものを結ばなくちゃいけないのだ。
身近なライセンスと言えば、キャラクターやアニメ、映画の版権などもこれに当てはまるよね。でも、今回のハニィのお話は、どちらかと言うとソフト開発に伴うテクノロジーに焦点を当てて書いてみたいと思っています!
日本はちぃと変わってる
ライセンスビジネスを語る前に、日本におけるライセンスビジネスの難しさを考えると、文化的で社会的な背景があると思うから、ちぃとだけ語ってみたいと思うのね。
ゲーム業界って話じゃなくて、日本人の文化的なところなんだろうけど、目に見えないノウハウや情報ってのはタダだと思ってるところ。何とかしたいよね。そんなの「ただの情報でしょ?」ってハニィもよく言われます(笑)。
日本では有効であっても、目に見えないツールやサービスって成果物としてなかなか評価されない悲しいもののことが多いんですな。マーケットリサーチやコンサルテーションもそうだし、ミドルウェアなどもそうなんですが、お金を払ってくれないところには情報やアイデアは入ってこないんですよ、自力でやらない限りは。
能力や時間の関係で自分ができないこと、知らないことを、誰かが代わりにやってくれたって合理的な考え方は、「イチから自分で」と言う職人気質を良しとする日本の文化にはそぐわないのかもしれないね。かく言うハニィも伝統職人の娘だったりするわけですが……(笑)。
乱暴に言うと、自力でイチから作るくらい人件費がかかるなら、IP、テクノロジーやノウハウ等をお金払って使わしてもらっちゃえ! って考え方が「ライセンス」であり、その究極が、買っちゃえ! っていう「企業買収」とも言えるよね。EAなどが大きな開発会社やミドルウェアの会社(RenderWareのクライテリオン社など)を買収したのはそういうこと。
そのおかげで同じ作業や時間を費やさなくても、目的地にショートカットして行くことができる、ということに気がついて欲しいと思う訳ですわ。歩いて行ったら遠いところも、電車で行くと速かったりするわけで、それには電車賃がかかるって至極単純なお話なんですけどね。
サービスを提供する側の質や方法の問題もあるだろうけど、不可視なものを有償で受け慣れていない日本人にとって、価値を評価することが難しいというところもあるんだろうね。でもこういう事業が成り立たない社会であれば、効率化も切磋琢磨もされないから、その先になかなか行けなくなっちゃう、ひいては業界として後れをとることにもなりかねないのだよね。
お店やレストランでサービスにチップを払ったり、テレビを見るのに毎月お金を払っている海外の人(地上波はほとんどなくケーブルテレビしかないから)からすると、目に見えないサービスやソフトが対価の対象ってことは身についたことなのかもね。ほら、日本で「サービスです」って言うと、「タダ(無料)です」ってことになるのも核心をついてるよね(笑)。
日本のユーザーさんはゲームがパッケージであれば、ソフトやマニュアルという物理的なものがあるからお金が払えるんだろうね。ゲームをダウンロードで、という流れが日本だけ遅れがちなのも、こういう文化が影響しているのでは? とも思ってしまうよね。
おっと、話がズレてきた(笑)。そんなこんなで、つい軽率に扱ってしまいそうなライセンスの概念を、きちんとしてくださーいって話に移行しまーす。
ライセンス契約の注意事項
許諾条件
まずは、どのテクノロジーをどのタイトルに使うのかを決めるんだけど、契約によってはメーカーさんへの包括契約ということで、タイトル名を限定せずに自由に使えることもたまにはありますね。ただし、包括契約であろうとも、個別タイトルで使用した場合に権利表記義務がある(下記4を参照あれ)とか、個別報告義務があるなど、決して雑に扱ってよいという意味ではないのでご注意を。
(1)支払い条件
ライセンス契約とひとことで言っても、いろんなケースがあって、最初に大きく支払えば決められた期間は制限なく使えるものや、まとまったお金はかからない代わりに1本売るごとにいくらかのロイヤルティがかかるもの、またはその組み合わせ(最初に払う+1本あたりのロイヤルティ)などなど。
支払時期に関しても毎月のケースもあるだろうし、年ごと、四半期などなど、これも契約交渉によって決定して契約書におとされることになりますね。
(2)テリトリー
テリトリーとは許諾地域をさしますのよ。どの地域向けのソフトに使うのかを限定しなければならないの。もちろん、全世界向けと契約することも可能だし、コストを抑えるために「日本のみ」とか「日本、北米のみ」とかで契約することも多いわ。
気をつけないといけないのが、日本でしか使わないって決めたのに、急に海外販売が決まった場合。使っていたテクノロジーのライセンス契約内のテリトリーを変更するのを忘れてた!なんて事故。何だかよく聞いたことがありますね(笑)。
(3)許諾期間
言わずと知れた許諾が有効な期間なんだけど、更新時期には十分お気をつけ遊ばせ。一度販売したソフトを廉価版で売ることが決定したり、別のプラットフォームでリメイクとかの場合、使われているテクノロジーのライセンス期間が切れてないかは、きちんと確認してほしいところですな。
(4)表記義務
ライセンスを受けたテクノロジーやソフトに表記義務がある場合は、気をつけてほしいよね。パッケージやマニュアル、画面上にどのような表記義務があるかは、契約の際に決められているはず。
文章で書けばいいだけって場合もあるし、ロゴを表記しないといけないのかもしれない。この後にも書くけど、きちんと契約内容を把握しないで、これを怠ると契約違反になるので注意したいよね。
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