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日本人泣かせのライセンスビジネスくねくねハニィの「最近どうよ?」(その36)(3/3 ページ)

久しぶりにごっついインフルエンザにかかって(新型じゃないよー)ダウンすること7日間、やっと回復しかけたところにアメリカ出張に出かける(涙)くねくねハニィがお届けする、2010年最初の「最近どうよ?」の第36回目。今回はライセンスビジネスのお話。ちょっと辛口だけど、日本人のためにあえて涙をのんで書いてみたので、読んでよろしこ。

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ライセンスを受けるにあたって

 ライセンスは、ライセンス元(ライセンサー)の考え方や交渉によって契約条件は決まるんだけど、ライセンサーはライセンスを受けている側(ライセンシー)の誠実な使用と報告を信じて「使っていいよ」と権利を付与しているのだよ。モノを納品しているわけではないので、数えて確かめるってのはほぼ不可能なお話なのね〜。

 だから、アジアの海賊版やPSPの違法ダウンロードを責めるべき日本のソフトメーカーが、実は無許可でソフトを使っていた!とか、ライセンスを更新してなかった!とか、ちゃんと報告してなかった!ってことは絶対にあってはいけないことだよね〜。

 特にダウンロード時代になってくると、自分が作った売り物を「目に見えない」からと言って、タダで使われてたらイヤなもんですし、訴えたくもなるわけですよ。知らなかったとか、そういうつもりはなかったとか言われたって違法は違法。意図的にやっていないってことだけで、結果的に違法ってことには変わらないんだから。 

 次の契約書にもつながることなのに契約を更新するのを忘れてたり、許可を取らないで使ってたりしないかしら?気をつけるしかないんですが、会社組織によっては、こういう「ケアレスミス」を排除するために、グループウェア上で契約期間切れを通知してくれるシステムを構築したり、担当者が定期的に契約書の見直しをしているというケースも見られるけど、まずはそのようなソフトウェアを使う人が、

  • 許可(ライセンス)が必要ではないのか?
  • 有償のものではないのか?
  • 契約書を交わす必要がないのか?

 を把握しないとね。入り口が間違っていたら、組織でヘッジしようとしても防御できないのだ。繰り返しになるけど、不可視なものに対して対価を払うことに慣れていないと思うんだよね。

契約書の内容って確認してる?

 ライセンス契約の話が出たので、契約書についても話しちゃおうかな。ハニィがこの業界に入って一番最初に驚いたことをストレートに言うと、担当者が「自分が取引している相手との契約書の中身を知らないまま」仕事をしていることが多いってこと。あ、もちろんきちんとされている方もいっぱいいらっしゃいますから、全部がそうだ! って言っているわけじゃないす!

 特に海外との取引に関しては契約書が命。契約書のドラフトに目も通さずサインする、などという無謀なことはゆめゆめしないでくださいね。日本ではまだまだ「義理」や「温情」があるので、契約書に書いてあったとしても、後でお願いすれば何とか変更してくれるとか、運用上は問題なく進めてくれるってことがあるのかもしれないけど、海外取引ではそんなことは絶対にありませんよぉ。

 昨日まで話していた担当者が今日には辞めていることだって多いし、海外では業務の「引き継ぎ」義務はないので、後任者に状況が引き継がれているってことはほとんどございませんのです。つまり、契約書をもとにすべての取引は行われるのですわ!

 契約書をブリーチ(債務不履行)したら、契約を切られてしまったり、更には損害賠償請求を受けるかもしれないのよん。約束してサインしてしまったんだから、書かれているのに「こうだと思っていた」と後で言い訳することはできないんですわ。契約書とは「お約束」であり、問題が起こったときの唯一の拠りどころなんですよ。だから海外の契約書は長くて、「こんなことが起こったら、誰の責任で、こういう解釈をする」って話が多いんですわ。サインしちゃってるわけだから「スマン、スマン」とは行かないのよね。

 契約書とはズバリ「あなたがする仕事の内容を書面に落としたもの」なんです。あなたが内容を知らないってどういうことよ? って思っちゃうわけです。取引先と約束するときに、取引内容を知らないままエライ人にサインさせちゃっていいんでしょうか? 少なくとも、概要(契約期間、金額、テリトリー、更新時期や更新方法などなど)くらいは把握しておきたいもんですね〜。見過ごしてて後で撤回したいと言っても、サインした後じゃもう遅いんですぜ。自分が守りたい権利は自分で守らないと、誰も守ってくれないんですよ。

ハニィのあとがき

 ハニィは長い間ライセンスビジネスというものに関わることが多かったので、いつか書いてみたいと思っていたお話でした。可視化=価値という時代はもうとっくに終わっているはずで、ハニィも含めてほとんどの日本人は、頭では分かっているんだけど、ピンと来ない部分。ちょっとお説教くさくなっちゃったかしら?(笑)

 と、この原稿を書き終えると同時にアメリカ出張が待っているハニィですが、年末商戦が終わってひと段落のアメリカ市場を見てきてもしょうがないだろーと思ってる? いやいや、2009年年末商戦は「Call of Duty: Modern Warfare 2」のおかげで、その他の大型タイトルは敢えて年末を外してきているんです。つまり2010年第1四半期(Q1)にいろいろ発売されてるんですぜー。「Bayonetta」、「Mass Effect 2」、「God of War III」などなど。2010年も熱いアメリカなのかもしれない(微妙な言い方やなぁ笑)。

 次回は2009年のまとめをしたいと思ってまーす。サンフランシスコの「Game Developers Conference」が3月上旬に開催されるので、その前にはアップしないとね〜。ってことで2010年もよろしこっ!

くねくねハニィのプロフィール

1967年アメリカサウスダコタ生まれの日本人。

小学生からはゲームセンターに通いまくってやたら大きく育つ。

1990年に都内K大学を卒業後、大手ゲーム会社にて海外ソフト担当となり、2001年に退職。それ以降は自称フリーのゲームアナリストとして暗躍。暗躍しすぎたので名前を変えて表舞台に。くねくねと唐突に現れて「親父ギャグ」をかまして周りの人々のレベルを下げまくる。独特の語り口調ですが、もう慣れてくださいとしか言えません。言ってる中身は至極マジメなので。ちなみに「風来のシレン」が好物で、名前もそこから借用。なんだか公認してもらったそうです。

 ハニィさん、やはりアメリカを中心に今年も飛び回っております。本人は「Game Developers Conference」までにと書いていますが、なんとなくそのあとになるんじゃないかと予想しています……。


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