ユーザーがお金を払いやすくなる仕掛け――アイテム課金が優れている理由:野島美保の“仮想世界”のビジネスデザイン(2/3 ページ)
ソーシャルゲームでのマネタイズの特徴として、「欲を生み出すこと」「無料と有料の違いを演出すること」が挙げられる。そして、ゲームでの時間短縮機能を「高級肥料」として販売するなど、課金対象をアイテムとして具現化することが、課金をうながす上で効果的であるようだ。
無料があるから有料が生きる
マネタイズのもう1つのポイントは、「無料と有料の違いを演出すること」である。
これまで物販の世界では、およそ品質に比例して価格が付けられるという常識があった。しかし、ネットビジネスで無料提供が広まると、無料と有料との間には大きな断絶があることが分かった。1円でも価格を付けてしまうと「それに見合うものなのか」とユーザーに考えさせてしまう。価格の高低が問題なのではない。0から1への心理的なハードルを超えることが難しいのである。
ハードルを乗り越えるために、「この価格が適正である」という判断基準を作ることから始めなければならない。仮想アイテムであればなおさら、そもそもの使用価値はないのだから適正価格という常識は存在しない。
そこで、無料アイテムを有料アイテムの比較対象として、徹底して価値の管理を行う。やみくもに仮想アイテムを提供するのではなく、その供給を、ユーザーの有料利用を引き起こすように入念にデザインするのである(「Zyngaは“無料”カフェ経営ゲームでどのように課金させているのか」)。
ゲーム事業者の運営能力は、客単価(ARPU)の高さではなく課金率(PU)に表れると、筆者は考える。仮想アイテムにお金を払う、最初の経験をどう引き出すかが問題なのである。それは、ユーザーのメンタリティの質的変換を起こすことであり、課金率が高いことはそのノウハウを蓄積していることを意味する。
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