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基調講演:任天堂岩田社長がゲームの進むべき道を語る |
2003年9月26日
東京ゲームショウ2003の初日、国際会議場において,任天堂の代表取締役社長,岩田聡氏による基調講演「ファミコンから20年:ゲーム産業の今とこれから」が行われた。
ファミコンから20年,家庭用ゲーム機産業の発展を「すべてこの目で見てきた」という岩田氏が,ゲームがたどってきた歴史的流れを分析しつつ,今後進むべき道を穏やかな語り口の中にも厳しい視点で語った。
ゲーム産業は順調に成長発展を続けてきたが,失ったものも多い。以前から岩田氏が指摘している通り,ゲーム機はユーザーと開発者の期待どおりの進化を遂げたが,ゲームの大容量化と複雑化が成功法則となりえるのはもはや限界に来ているという。
あらゆる娯楽はユーザーの限られた時間を奪い合う競争の中にあり,あまりにたくさんの時間とエネルギーを要する遊びには付き合えない人が増えているというのだ。
シューティングゲームや格闘ゲームは,ファンの要求にこたえるあまり高度になりすぎ,ライトなユーザーが誰も遊べなくなって市場が衰退してしまったが,「ゲーム全体がそれらと同じ道を歩んでいるというのが私の危機感」と岩田氏は語る。
また,日本製のゲームが以前よりも海外で受け入れられなくなってきている市場データを上げ,表現力が向上したことで,以前は想像力で補っていた部分が,国や文化による嗜好の差が表面化したことが大きな要因と指摘する。
海外市場は好調とはいえ,日本と同じ構造にあるのも事実。今後,世界中で売れるようなゲームソフトを制作することはますます困難になる。
そんななかで,例外的に世界で売れつづけているのが,ポケットモンスターだ。これこそ,岩田氏が主張する「間口の広さ」と「奥の深さ」を両立したソフトと言える。
全世界で1000万本(日本国内:479万本,北米:316万本,欧州:211万本,豪州:15万本)を超えるポケモンだが,ゲーム産業の流れに反して,リアルでも,大容量でも,3Dでもない。このことは,ゲーム産業の今後を考える上で大きなヒントになると岩田氏は持論に自信を見せる。
そして今回の基調講演では,ポケモンの新しい取り組みとして,GBA用の無線ネットワーク用のアダプタを製品化することを発表した。(別記事参照)
ポケモンは通信ケーブルによるユーザー同士のコミュニケーションによって大きな成功を収めたが,あくまでもそれは友人や家族との間の話で,見知らぬ人とのケーブルをつないでデータ交換するのは抵抗があるだろう。
しかし,無線ネットワーク技術を活用することにより,遊び相手が広がるのではないかと岩田氏は期待している。
また,任天堂の中国への取り組みとして,新しいゲーム機「神遊機:iQue Playyer」が10月中旬以降に上海,光州などの一部の地域で販売し,来春には中国全土に展開すると話した。
任天堂が中国市場に向けて新しいビジネスを展開するのも,これまでの成功体験に寄りすがるのではなく,新しい我々の考え方もひとつひとつ変えていかなくてはならないからだという。
どんな産業も,同じ構造で発展しつづけることはない。
誰かが新しい構造を発明して,ゲームビジネスがさらに発展するのか,あるいは,世界中でゲーム離れが進み業界が衰退してしまうのか,その岐路に立たされている。
過去の成功体験を捨てて原点に立ち返り,誰にでも前提条件なしに遊べるゲームを生み出していくために,業界が一丸となって取り組まなくてはならないと岩田氏は力強く語った。
「ファミコンから20年。多くの人の努力によって世界中に広がったゲームを,今後も永きにわたって受け入れられていくような存在となるよう,世界中のゲーム業界関係者と力を合わせて頑張っていきたい。」と講演を締めくくった。
■講演者
任天堂株式会社代表取締役社長 岩田 聡
昭和34年12月6日生北海道出身
東京工業大学情報工学科卒、株式会社ハル研究所の代表取締役をへて,任天堂株式会社代表取締役社長就任。現在に至る
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