第12回:「隠れキャラ」に隠された、プレイヤーをゲームのとりこにするヒミツ:なぜ、人はゲームにハマルのか?(2/3 ページ)
「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の12回目は、隠れキャラの魅力について。
同様に、カプコンが1984年に発売したアーケード用アクションゲームの「ソンソン」は特定の地点を通過すると「隠れキャラ」のタケノコが出現します。出したときに500点、取ると千点のボーナスが入るのですが、実は出現したタケノコにずっと重なったまま待っていると、取ったときに2千点が加算されるのでちょっとおトクになります。これは敵の攻撃を受けている状態であっても、余裕を見せてくれたプレイヤーに対するご褒美という意味がもしかしたらあるのかもしれません。
さらに本作では、高得点アイテムのジャンボフーズを取り損ねて画面外に逃してしまうと、「隠れキャラ」のエリマキトカゲが出現するようにもなっています。エリマキトカゲは出現後しばらくするとジャンボフーズに姿を変え、プレイヤーに対して救済措置をしてくれるありがたい存在です。また、そのコミカルな姿はただ見ているだけでもプレイヤーを楽しくさせてくれる効果がありますよね!
主人公のパワーアップや1UPの効果をプラスし、ますます存在感を増した「隠れキャラ」
多くの作品において「隠れキャラ」のアイデアが盛り込まれるようになると、やがて「隠れキャラ」を出したときの効果にもいろいろと工夫が施されるようになりました。
その代表例は、「隠れキャラ」を取るとボーナス得点に加えて主人公がパワーアップする効果が得られる、というタイプのものになるでしょう。例えば、1985年に任天堂が発売したファミコン用アクションゲームの「レッキングクルー」では、「隠れキャラ」のゴールデンハンマーを取ると主人公のマリオが通常は2回以上叩かないと壊せない壁も一撃で壊せるようになったり、敵を直接叩いて気絶させられるようにもなります。さらにボタンを連打することで、なんと空中でも歩ける裏技までもが使えるようになるというまさにスーパーな存在です。
ここまでくると、もはや「隠れキャラ」は本編とは別にプレイヤーを楽しませるためのオマケ的な存在をはるかに超えたレベルになっていますよね。
もうひとつ、ファミコンソフトの中でも特に有名なのがハドソンが1985年に発売したアクションゲームの「チャレンジャー」。本作の1面には、主人公が無敵状態になるマットウクジラという「隠れキャラ」が出現することで当時のプレイヤー間では有名でした。また、出現条件が「BGMの途中で踏み切りがカンカンと鳴ったような音に合わせてボタンを連打する」というユニークな方法だったことでも、今なお本作が印象に残っているという方もきっと多いのではないでしょうか?
パワーアップ以外にも、主人公のストックが増えるいわゆる1UPの効果を持った「隠れキャラ」が登場する作品も非常に多くあります。
その中でも最も有名なのが、1985年に発売されたファミコン用アクションゲーム「スーパーマリオブラザーズ」に登場した、その名もズバリの1UPキノコではないでしょうか。主人公のマリオをパワーアップさせるスーパーキノコやファイアフラワーは、特定の「?」マークのブロックを叩けば出現するのに対して、1UPキノコだけは一見すると何もなさそうな普通のブロックの中や空間に隠されているので発見するのがとても難しくなっていますが、その分見つけたときの感動はひとしおです。またキノコはただ出すだけでなく、画面外に消える前に取らなければ1UPしませんので、敵に触れたり谷底に落ちたりしないようにマリオを動かしてキノコを回収するテクニックも合わせて必要となります。
同じく、1986年にテクモ(現:コーエーテクモゲームス)が発売したファミコン用アクションパズルゲームの「ソロモンの鍵」にも1UPの隠れキャラが存在します。本作は特定の地点に「換石の術」をかけてブロックを出現させ、そのブロックを消すとさまざまな「隠れキャラ」が出現するようになっていて、「E」マークの描かれたマプロスの薬(※)を発見して取ると主人公ダーナのストックが1人増えます。ただし、マプロスの薬は取る前に敵に捕まってミスをした場合は、以後そのステージでは二度と出現しないようになっています。
前述の「グーニーズ」や「スーパーマリオ」と同様に、このような「隠れキャラ」はプレイヤーにその在り処を探し出す楽しみを与えるのと同時に、攻略パターンを作るテクニックを磨くための学習効果も促していると言えるでしょう。
番外編:これはコマッタ! ワナが隠された「隠れキャラ」
発見に成功すればとても嬉しく、さまざまな恩恵を受けられるのでいいことずくめの「隠れキャラ」……なのですが、中には逆にプレイヤーを不利にさせる効果を持つという何とも困った例がごく少数ながらあります。
まず最初のムービーは、カプコンがファミコン用ソフトとして1986年に発売したアクションゲームの「魔界村」。本作では特定の場所を通ったりジャンプなどをすると突如壷が出現し、中からいろいろな隠れキャラが出現するようになっています。
1面では2カ所に隠されている風車のような形をした弥七は、2個目の弥七は取ると5千点の高得点が獲得できるのに対して、1個目は取ってもたったの100点しか入らず、しかも残り時間を30秒減らされるという厳しいペナルティを課せられてしまいます。
また、いかにも王様という格好をしたキングは、青い色のキングは取ると1万点の高得点ボーナスが入るのですが、赤く光るキングをうっかり取ると主人公のアーサーが何と一定時間カエルに変身させられてしまい、この間一切の攻撃ができなくなってしまうワナが仕掛けられているのです。ムービーでは、2種類のキングが隠された4面の後半を収録していますのでぜひご覧下さい。
このようなトラップを組み込んだ「隠れキャラ」は、実は元のアーケード版には存在しませんでした。ファミコン版で新たにこのようなアレンジを加えたのは、当時売れに売れていたファミコン専門誌の「裏技コーナー」などで取り上げてもらうためのプロモーション活動(話題作り)という意図があったのではないか、と推測されます。実際、筆者も含め昔は専門誌に載っていた「隠れキャラ」の情報を見て、実際に自分で出せるかどうかチャレンジして遊ぶのが一種のトレンドになっていました。
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