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第14回:これならサルでも遊べちゃう!? いつの間にかゲームがうまくなってしまうヒミツの仕掛けなぜ、人はゲームにハマルのか?(3/3 ページ)

「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の14回目は、ゲームの腕がめきめきあがる仕組みを解明します。

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 また、1995年にクエストが発売したスーパーファミコン用シミュレーションRPGの「タクティクスオウガ」のトレーニングも実によくできています。本作のトレーニングコマンドは自軍のユニット同士を戦わせる形式になっているのですが、単にプレイヤーが操作やユニットごとの特徴を学ぶだけでなく、各ユニットが活躍に応じて経験値が入り、レベルアップすれば能力が上がるようにもなっているのです。もちろん、トレーニング中にHPがゼロになって消滅したユニットは本編に戻ればちゃんと復活しますので、一切リスクを負うことなく安心して練習ができるのも大きなメリットとなります。

画像画像画像 「タクティクスオウガ」はトレーニングでユニットを強化することが可能。プレイヤーの練習としても、低レベルのユニットの底上げにも大いに役立ちます

(C)1995 QUEST

 このように、ただ「投げるだけ」や「たたくだけ」の単純な動作を繰り返すだけでなく、ゲーム的な要素を盛り込むことでプレイヤーはいつの間にか夢中になって遊んでしまうのです。

まだまだあります! 初心者に優しいこんなサービス

 「コラムス」と「コズモギャング・ザ・パズル」では、あらかじめ難易度が選べることを先ほどお話しましたが、もし仮にモード選択機能がなく、HARD設定の難易度でしか遊べなかったとしたらどうなるでしょうか?

 おそらく、ほとんどの人があっという間に詰んで(=ゲームオーバー)しまい、「こんな難しいゲームは二度とやるもんか!」と怒ってしまうのではないかと思われます。「ガイド機能」を搭載したり、宝石およびコズモ、コンテナがゆっくりと降下するEASYモードを用意することで、プレイヤーはゲームに慣れるための時間が十分に取れるからこそ、途中でゲームオーバーになってもある程度満足または納得感が得られるわけです。

 このように初心者がすぐゲームオーバーにならないように、ゲームを慣れさせるための時間をある程度とれるように配慮した例もたくさんあります。

 その中でも筆者が印象に残っているのは、1985年に任天堂が発売したファミコン用ソフトの「マッハライダー」。本作のファイティングコースというゲームモードでは、主人公のライダーが障害物などに触れるとミスになり、ライダーのストックがゼロになるとゲームオーバーとなるルールになっています。ですが、実は最初のコースに限りライダーはいわゆる「ライフ制」になっているので、ミスを繰り返してもしてもライフが残っている間は何度でもリスタートすることが可能です。このおかげで、初めのうちはプレイヤーがかなりの回数のミスをしても許されるよう配慮されているのです。

(C)1985 NINTENDO

 それから、うろ覚えでたいへん恐縮なのですが、セガが1983年に発売したアーケード用シューティングゲームの「アストロンベルト」でも同様のシステムを採用していました。本作では、ゲーム開始から1分間は自機が何度やられても再スタートができるようになっていて、1分経過後は残機制へとシフトするシステムになっていたと記憶しています。そのおかげで、当時はまだ子どもだった筆者もLD(レーザーディスク)を使用したリアルな宇宙空間のグラフィックをじっくり味わい、大きな感動を得ることができました。1プレイ100円という大出費も、「これなら惜しくはない!」と、素直に思えましたね(笑)。

 また、こちらもKONAMIの人気シリーズである「悪魔城ドラキュラ」にも面白い初心者救済システムがあります。本シリーズの第1弾であるファミコン版には、1986年に発売されたディスクカード版と、1993年に発売されたROMカセット版の2種類があるのですが、実は後から登場したカセット版には初心者用のEASYモードが新しく追加されています。

 本作では、主人公が敵の攻撃を受けると後方に吹っ飛ばされるようになっているため、もし背後に足場がなかった場合はそのまま画面外に落ちて即死してしまう、なんてケースがしばしば起こります。しかし、カセット版のEASYモードでは「吹っ飛び」の動作が一切なくなるため、例えダメージを受けても体勢が崩れないので立て直しがしやすくなっているのです。つまり、プレイヤーに次の行動を考えるための時間的余裕を与え、ゲームの難易度を大幅に下げるる効果があるということになりますね!

画像画像画像 「悪魔城ドラキュラ」をプレイ中、ダメージを受けた勢いで谷底や針の山に突き落とされた悔しい思い出がある人はきっとたくさんいるハズ……

※ファミコンディスクシステム版「悪魔城ドラキュラ」を使用
(C)1986 KONAMI

 と、いうわけで、久々の更新となりました当コラムをお読みになったご感想はいかがでしたか。筆者の個人的な思い出話を交えつつ古いゲームの例を挙げていろいろお話したわけですが、実は現在トレンドとなっているモバゲータウンやGREEなどで配信されているソーシャルゲームにおいても、同じようなノウハウを用いてプレイヤーを引き込んでいることにみなさんはお気づきになったでしょうか?

 ゲーム開始直後に、「進む」のボタンをただ押すだけで勝ててしまうメチャクチャ弱い敵が出てきたり、最初だけ特定のボタンの色を変えたり光らせたりして重要な操作方法を教えたり、あるいはナビゲーター役のお姉さんや教官が出てきて、「ここはこうしろ、ああしろ!」とガイドしてくれるなどなど……。時代やプラットフォームは変われども、プレイヤーにいち早くゲームに慣れてもらいゲームにハマルためのノウハウは脈々と受け継がれているというわけですね。

 それでは、また次回!

今回登場したソフトはココで遊べます!

  • 「ちゃっくんぽっぷ」:PS2用ソフト「タイトーメモリーズ下巻」
  • 「リブルラブル」:Wiiバーチャルコンソール
  • 「コラムス」(※メガドライブ版):Wiiバーチャルコンソール
  • 「コズモギャング・ザ・パズル」:Wiiバーチャルコンソール
  • 「パロディウスだ!」:プレイステーション(※「極上パロディウスだ! DELUXE PACK」に収録)
  • 「鉄拳2」:プレイステーション、プレイステーション2(※「鉄拳5」に収録)、PS3,PSPゲームアーカイブス
  • 「タクティクスオウガ」:Wiiバーチャルコンソール
  • 「マッハライダー」:Wiiバーチャルコンソール
  • 「悪魔城ドラキュラ」(※ディスクシステム版):Wiiバーチャルコンソール

著者プロフィール

鴫原 盛之 Morihiro Shigihara

 1993年よりゲーム雑誌および攻略本などでライター活動を開始。その後、某メーカーでのグッズ・店舗開発や携帯コンテンツの営業、ゲームセンター店長などの職を経て、2004年よりフリーに。現在は各種雑誌やwebサイトでの執筆をはじめ、某アーケードゲームの開発なども手掛ける。著書は「ファミダス ファミコン裏技編」(マイクロマガジン社)、「ゲーム職人第1集 だから日本のゲームは面白い」(同)の他、共著によるゲーム攻略本・関連書籍を多数執筆。近刊は共著「デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド」(ソフトバンククリエイティブ)がある。

 Twitterは「@m_shigihara」です。

著者近況

 ここ最近は殺人的な忙しさのため、久しく更新ができずにたいへん申し訳ございませんでした(ペコリ)。何せムック本、攻略本、隔月誌、月刊誌、週刊誌の仕事がいっぺんに舞い込んできてしまったので連日連夜の……(※以下自主規制)。

 さて、筆者はさる10月1日にDiGRA JAPAN(日本デジタルゲーム学会)の場をお借りして「メディアの変遷とゲーム会社の対応」と題した研究会を、IGDA日本(国際ゲーム開発者協会日本)代表の小野憲史さんをはじめとする多数の方のご協力のもと実施いたしました。当日の内容は池谷勇人さんの「日々是遊戯」でも紹介されていますので、まだご覧になっていない方はぜひご一読ください。

 なお、同じくゲームメディアを題材とした次回研究会の開催も現在思案中です。実施が決定しましたらDiGRAのホームページなどでお知らせしたいと思いますので、もし興味のある方はぜひご参加いただければ幸いです。


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