第15回:「待って、もう1回!!」 いつの間にかゲームがやめられなくなるフシギな呪文、「コンティニュー」のスッゴイ仕掛け:なぜ、人はゲームにハマルのか?(2/4 ページ)
「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の15回目は、奥が深いコンティニューの話。続きがあるから人は大胆になるのかもしれませんよ?
ついつい100円玉が減ってしまう! 負けん気魂に火をつける「カウントダウンシステム」
ところで、みなさんはゲームセンターやデパートなどでアーケードゲームを遊んだ経験はありますか? アクションゲームを遊んでいたら主人公が敵にやられてしまったり、対戦で負けてしまったときには「CONTINUE?」などと書かれたメッセージとともに数字がカウントダウンされていく演出を、実際に遊んだことのある人であれば一度は見たことがあるのではないかと思います。
このカウントダウン方式をゲーム史上初めて導入した作品が正直分かっていないのですが、筆者が初めて利用したのはセガが1985年に発売したシューティングゲーム、「スペースハリアー」でした。本作では、主人公のハリアーのストックがゼロになると10秒間のカウントダウンが始まり、制限時間中に急いでコインを入れればその場から再スタートができるようになっていました。
つまり、たった10秒という短い時間のうちに「さっきやられたあの敵をやっつけたい!」「今月のお小遣いはもう少ないし、どうしよう……」などというように、プレイヤーは独り心の中で何度も葛藤を繰り返しながら決断を迫られるワケです。このような緊張感を生み出すのも、アーケードゲームならではの醍醐味の1つであると言えるのではないでしょうか?
カウントダウン中にユニークな演出をしていたことで筆者が今なお思い出深いのは、1987年にアイレムが発売したシューティングゲーム「R-TYPE」です。
本作ではゲームオーバーになると画面が真っ暗の背景に切り替わり、大きく映し出された数字が減るたびに不気味なサウンドが鳴り、プレイヤーに対してかなりの緊迫感を与えてきます。単なるカウントダウンをしているだけなのに、「このままだと、自分のせいで彼らは敵の軍門に下ってしまう!」「待ってろ、今助けに行くゼ!」などとプレイヤーの脳裏にはさまざまな妄想(?)を想起させ、まるで物語の主人公になったかのような気分になりついついゲームを続けたくなってしまいます。本作をご存知ない方は、ぜひ以下のムービーを再生して凝りに凝った演出のカウントダウンの様子をご覧になってみてください。
ちなみに、「R-TYPE」以外にも「イメージファイト」をはじめ、アイレムが同時代に発売された各タイトルには同じようなカウントダウンの演出が登場します。コンティニュー画面1つをとっても、調べてみるとメーカーの個性がいろいろと出ているのが実に面白いですよね!
過去の当コラムでもたびたび紹介している、カプコンが1984年に発売したシューティングゲームの「1942」にも、カウントダウン中にプレイを始めると最後にやられたステージから遊べるコンティニューができる機能がありました(※)。ただしコンティニューを利用するためには、ショットボタンを押しながらスタートボタンを押すという操作方法をあらかじめ知っていることが必要でした。これは最初のページで例に挙げた「ドルアーガの塔」でも同様です。
「1942」では、コンティニューの方法はカウントダウン中の画面に表示されるのですが、すべて英語で書かれているので当時子どもだった筆者は当初それが何を意味しているかまったく理解できませんでした。最初に遊んだ日からしばらく後になって、あるとき画面内に「FIRE」という単語の存在に初めて気が付き、「もしかしてショットボタンを押しながらスタートすると何か起きるのかな?」とヒラメき、早速試してみたらコンティニューができることを偶然発見することができました。
本作に限らず、昔のアーケードゲームはインストカードにコンティニューのやり方を書いていないケースが少なからずありました。また当時のコンピュータの性能上の問題などから、画面内に日本語の表示がほとんど出てこないこともあって、コンティニュー機能の存在を気づかずにずっと遊んでいた方は案外多かったのではないかと推察されます。
※プレイステーション2版「カプコン クラシックス コレクション」を使用
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もう1つ、秀逸なカウントダウンの演出として忘れられないのが、1989年に同じくカプコンが発売したいわゆるベルトアクションゲームの代表作である「ファイナルファイト」。本作では主人公が敵にやられてストックがゼロになると、ダイナマイトの目前で縄で縛られて身動きがとれない主人公の絵が表示されます。そして、残りタイムが少なくなるたびに導火線がどんどん燃えて短くなり、タイマーがゼロすなわちコンティニュー受付時間が終了するとドカンと鳴ってゲームオーバーになります。
この絶妙の演出によって、もしコンティニューしなければ主人公が無念の最期を遂げ、なおかつプレイヤーに対してこれ以上ないほどの敗北・屈辱感を与えることになるため、ついつい財布のヒモを緩めることになります。今あらためてムービーを見ても、タイマーが少なくなるにつれて主人公の表情が変わっていく絶妙の演出はお見事です!
さらに、1991年に登場して大ヒットした対戦格闘ゲーム「ストリートファイターII」では、CPU戦で相手に負けると顔が傷だらけになった主人公とともに必殺技の出し方などの攻略アドバイスが同時に表示されるようになっていました。この演出も、プレイヤーに対して「そうか、そんな方法があったのか! ヨシ、早速試してみよう!」という気分にさせてコンティニューを促す効果があったのではないかと思われます。
※プレイステーション2版「カプコン クラシックス コレクション」を使用
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