プレイヤーの前に大きく立ちはだかる3分の壁!
古来からアーケードゲームでは、ゲームスタートからおよそ3分が経過すると必ず“魔の時間帯”が訪れることをみなさんはご存知でしょうか?
“魔の時間帯”とは、ゲームの難易度がそれまでよりも急にアップしてプレイヤーのミスを誘い、100円玉を取り上げようと牙をむくタイミングのこと。なぜ3分なのかといえば答えはいたってカンタンで、100円玉1枚で1時間も2時間も遊ばれてしまってはゲームセンター側が商売あがったり状態になってしまうからです。
実際、筆者の知人で1980年代からアーケードゲーム開発を担当していた方にお話を聞いたところ、「営業担当者から『3分以上遊ばせるな!』と、お達しがあった。」と証言しています。商売だからしかたがないとはいえ、プレイヤー側視点で見ると実に厳しいお話ですよね……。
では、いかにして3分後に“魔の時間帯”へと変貌するのか、実際のゲームのプレイ動画および画面写真を例に挙げてご覧いただきましょう。
以下のプレイ動画は、タイトーが1988年に発売したシューティングゲームの「達人」です。本作では、ゲーム開始からほぼ1分おきにいわゆる“中ボス”と呼ばれる強敵が登場してプレイヤーに襲い掛かり、約3分後(※ノーミスで進んだ場合)に出現する3体の“中ボス”はかなり手強く、初めてプレイした人は必ずと言っていいほどここでミスをしてしまいます。また、本作はクリアするまでの時間が1面あたりおよそ6分かかるので、開始から3分後の“魔の時間帯”を乗り越えたさらに3分後には強力なボスキャラと戦う地獄が待っているという、まさに計算され尽くした仕掛けが用意されているというワケです。
「ファイナルファイト」をはじめ、「天地を喰らう」「D&D」シリーズなど、カプコンが発売したいわゆるベルトアクションゲームも、3分でプレイヤーの息の根を止めにかかる“魔の時間帯”がやって来るのがある種のお約束になっています。なぜなら、これらのゲームはいずれもスタートから3分が経過したあたりでちょうど1面ボスの登場シーンにピッタリ重なるからです。
以下の写真は、1992年に発売された「天地を喰らうII」ですが、ほぼ3分おきに難所が登場してプレイヤーから100円玉を奪い取るべく、いかにも強そうな敵が次々に出現して文字どおり食いかかってくることが分かります。
また、上記のこれらのタイトルはいずれも2面ボスとの対決シーンが1面に比べて強烈に難しくなっています。特に筆者は、「天地を喰らうII」の2面のボスとして登場した夏候惇(かこうとん)と「D&DII」に登場したダークウォリアーが今でもトラウマで、ゲームを始めた頃はここで何度もゲームオーバーにさせられ悔しい思いをしたものでした。後で分かったことですが、これらのボスの強さは全ステージ中でもトップクラスだったのです(あくまで筆者の体感ですが)。このような序盤のステージから急に難易度が上がる“魔の時間帯”を登場させる仕組みは、まさにアーケードゲームならではですよね。
筆者はアーケードゲームで遊ぶようになってから30年以上が経ちますが、今思い返してみるとたいていのゲームは3分あるいは3面に到達したあたりで先へ進めず足踏み状態になることが非常に多かったです。と、いうことは、敵の攻撃などに3分間耐えられるかどうかがゲームの腕が上達したかどうかのひとつの指標になっているとも言えるではないでしょうか?
ちなみに、今回ご紹介した「達人」および「天地を喰らうII」では“魔の時間帯”である3度目の“中ボス”および2面ボスが出現するあたりでちょうどエクステンド(※自機のストックが増えること)となる得点に近付くようになっています。「この難関を無事越えたらご褒美をあげよう!」と、言わんばかりの絶妙のタイミングでエクステンドを発生させるこの演出をもし開発段階から設計していたとしたら、これらのゲームの開発者はまさにゲームの達人ですね!
みなさんも今度ゲームセンターで遊ぶ機会があるときには、試しにプレイ時間を計測しながらプレイしてみてはいかがでしょうか。もしかしたら、思わぬ攻略のヒントがつかめるかも!?
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