あなたにも参入可能!? サイドビジネスで始めるキャラクタービジネス 起業編:大日本技研に聞く(2/5 ページ)
ガレージキットメーカー「大日本技研」をご存知だろうか。そのユニークな製品の発想方法とは? 「Fate/Zero」のアノ銃や「PSYCHO-PASS サイコパス」の銃も制作している。
売れるフィギュアが持つオーラ
―― これだけのクォリティのフィギュアを作っても、あまり売れなかったんですね。難しいものですね。剣、武器系のものが売れていたというのは今の技研に通ずるものがある気もしますが。
田中氏 流行っているアニメの女の子キャラを、ちょっとエロティックな要素を取り入れてガレージキット化すれば、「ある程度は売れるのでは?」とは思いました。でも、それはみんなが考えることなので、そのキットはものすごい競争にさらされるというのも容易に想像できました。プロの造型師も、ガレージキットメーカーも同じキャラを作りますし。だから、流行りをちょっと外したところを狙っていたのですが、今から考えると、そもそもの造形力が足りなかったんです。
―― 造形力不足ですか? 先ほどのフィギュアは細部まで良くできているな、と思ったのですが。
田中氏 言葉では表現しにくいのですが、売れているフィギュアの作家さんの作品には、オーラのようなものがあるんですね。アイドルに例えると分かりやすいかもしれません。AKB48などのトップグループに所属するアイドルにはなんともいえない魅力、オーラがあって、そのほか大勢にはそれがない。ではそのオーラをどうやって出せば良いのかといっても、絵画や彫刻など芸術作品と同じでいっしゅの天才の成せる技、生まれついて持っているセンスのたまものというか……。実際、制作者本人に「これはどうやったらこうなるの?」と聞いても、「なんとなくやってみたらこうなった」というような答えしか返ってこないものなんですね。ある程度の水準までは努力による技術の向上でなんとかなるのですが、その先は技術とはまた違ったセンスのようなものが要求される世界なんです。特にワンダーフェスティバルのようなイベントだと、プロフェッショナル(セミプロ)とアマチュアというように区分けがあるのではなく、いっしょくたに机が並びますから、作品のデキの差が際立ってしまうんです。
発想の転換から独自の製品へ
田中氏 「ならばどうすれば良いのか?」と模索する中で、ふと「エアガンを中に仕込んで、BB弾を撃つことができる1/1スケールのガレージキットの銃を作ったらどうだろう?」というアイデアが浮かびました。私はサバイバルゲームをするのですが、エアガンのカスタムというのは一定の需要があるんですよ。サバイバルゲームをしていて、ゲームスタートで即突撃してしまう人はすぐ被弾して戦力外になり、安全地帯でそのゲームが決着するまで待っていなければなりません。でも、上手にカモフラージュしているスナイパーがいたりするとなかなか1ゲームが終わらないんですね。そんなとき、安全地帯の人々は何をしているかといえば、装備自慢なんです。「その銃どこのメーカーですか?」と聞かれたり。そこで技研オリジナルデザインの銃を持っていると、ほかの人と明らかに違うわけですから、話が盛り上がるんですね。
―― そういったアイディアは、どのように浮かぶものなんでしょうか?
田中氏 うーん、こればかりはふと思いついたとしかいいようがないですね。「PDFクラフト スコープドッグ1/1」を制作する際にも、「脚の部分に脚立を入れたら、中に乗り込めるペーパークラフトが作れるぞ!」とあるとき思いついたのが発端でしたし。
アイディアがいろいろと浮かぶのは良いのですが、実際にやってみてはじめて分かることも多々あります。例えば、今、制作中の「スコープドッグ1/1」も紙だけに湿気に弱いんですね。「PDFクラフト マジカルマスケット砲」のときも問題になったのですが、ワンダーフェスティバル会場の幕張メッセはすぐそこが東京湾ですから年間通して湿度が高いんです。だから梅雨の時期、台風の時期でなくても湿気で紙が歪んでしまうんですね。湿気が最大の敵で、屋外に長時間展示することもできないのです。
あとはパーツを貼り付けるとき、塗布面が大きいのでスプレー糊を使うことになるのですが、貼り直しができるものは位置の調整などがしやすいものの剥がれやすい。貼り直しができないものはガッチリと貼れて剥がれにくいものの、当然、微調整ができず、失敗したらパーツを印刷するところからやり直しということがありますね。
「アップルシード」の拳銃キットが完売!
話を銃に戻しますが、まず実行に移したのがマンガ「アップルシード」に登場する拳銃「ゴング」でした。これがフィギュアのときには考えられなかったほど大好評だったんです。たしか、ワンダーフェスティバルに20個持ち込んで午前中で完売だったと思います。今は複製業者さんにお願いしていますが、当時は自分で手作業で複製していましたのであまり数を作れなかったんですが、フィギュアのときは、20個作って10個売れたは良いけれど10個売れ残りなんてこともあったのに午前中完売でしたから。でも、後から考えれば値段が安すぎたというのも一因でしたね。最初、「ゴング」を作ったときは技研としても新機軸の製品だったので値付けの感覚が分からなかったんです。ですから、材料費だけ考えると儲けが出ていないということはなかったんですが、良く考えてみると自分の人件費が含まれていなかったという……。連日、深夜まで試行錯誤の日々だったのですが。でも、この「ゴング」が好評だったおかげで、その後も士郎先生の作品から銃アイテムをシリーズ化することができました。
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