第9回 Google Glassで本と音楽のマリアージュを知る 代官山 蔦屋書店の「カルチュア・マリアージュ」:“ウェアラブル”の今(2/2 ページ)
メガネ型のウェアラブルデバイスは、まだ明確な用途が確立していない領域だが、1つの興味深い例として、カルチュア・コンビニエンス・クラブが代官山 蔦屋書店で実施している「カルチュア・マリアージュ」がある。書籍と音楽のマリアージュにGoogle Glassを用いているのだ。
「アライアンスを組んでいる企業114社も含め、その人が何を買ったか、という併売分析をかけることは可能です。いわゆる『この商品を買った人は、こちらの商品も買っています』というレコメンドです。しかし、単純な併売分析では、特に音楽ではメジャーアーティストがどうしても上位でマッチングしてしまい、予定調和的なセレクトになってしまうのです」(山崎氏)
そこで一旦、人となりを調べるのが傾向分析だ。何百項目のパラメーターから、似ている人を発見し、志向性や購入傾向を割り出す予測モデルとなる。こうして、予定調和ではない“セレンディピティ”を狙うことができるという。
ちなみに、現在Google Glassは日本国内では電波法(技術基準適合証明、いわゆる技適マークの表示がない)の関係で電波を飛ばす使い方ができない。そのため、事前登録で会員番号を伝え、あらかじめGoogle Glassの中に自分のデータをセットアップしてもらう必要がある。クラウドからデータを取得するような使い方ができないためだ。
なお、当日機材が空いていれば、パーソナライズされていない一般的なデータを活用したカルチュア・マリアージュの体験が可能だ。12月25日までとなるが、代官山 蔦屋書店に行く機会があれば試してみるといい。
データをリアルな世界で体験するためのインターフェイス
代官山 蔦屋書店という居心地の良い空間の中で本と出会う体験を大切にしているという山崎氏。
今回のカルチュア・マリアージュは、そうした重視する体験の中で、世の中にあるたくさんのデータを、消費者として“気付き”に利用するチャンスを、いかに分かりやすく作るかという課題にも答えた。デジタルの手段によって、データの裏付けを追加する、新しい選択肢を提供できると考えているそうだ。
そして、ウェアラブルデバイスであるGoogle Glassは、今回の取り組みになくてはならないピースとなっていた。
もちろん、スマートフォンのアプリとカメラを使えば、書店内でAR(拡張現実)体験を作り出すことは難しくない。しかし、せっかく居心地の良い書店で、スマホのカメラをかざしながら歩きたいだろうか。本人は良いとして、周りの空間を楽しんでいるお客さんにとっても、好ましい空間ではない。
Google Glassには骨伝導スピーカーが内蔵されているが、カルチュア・マリアージュではイヤフォンをつないで音楽や解説を流す。そして右目は透過して映像が映り、左目は遮るものない視界が広がる。
Google Glassの採用は、ARの不自然さを消し、また利用者本人もカメラを意識しない体験を大切にすることができる。ゴーグル型のウェアラブルデバイスにはない、そのまま装着して生活できることを目指したGoogle Glassらしい活用事例が生まれた、といえるだろう。
ビッグデータやクラウドからたたき出されたデータを、行動しながら活用する、そんなデータ利用をよりシームレスに行うことができるGoogle Glassの可能性を、今回のCCCの取り組みは示してくれた。
しかもそれが、古くから変わらない情報の形である本に囲まれた、心地よい空間で体験できる感覚は、新旧入り乱れたメディアの可能性を感じることができた。
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