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インタビュー

「どこで売ってるんですか?」「意識高そう」 ウェアラブルに辛口な女性たち

「ウェアラブル」な機器が注目を集めているが、一般的な女性も関心を持っているものなのか――。率直な意見を聞いてみると、そもそも彼女たちは存在そのものを認識していないのだった。

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 IT業界ではあちこちで話題になっているウェアラブルデバイスだが、若い女性の目にはどのように映っているのだろうか。そんな疑問を解消するために、2014年11月、美人時計でおなじみのBIJIN MODELSに集まってもらい、筆者自前のデバイスを前に率直な感想を語ってもらった。

BIJINとウェアラブル
ウェアラブルデバイスというと、現在は活動量計が中心だが、メガネ型などの形状も生まれつつある

 このとき参加してもらったのは、運動はとても苦手だが、料理が得意でSNSにレシピを公開中というSE職の新井マリエさん、教育関係の営業事務職で週に1回ペースでヨガに通い、歩くのも好きだという斉藤一美さん、営業職で外出も多いというが、定期的な運動はなかななできずにいるという大町智美さん、デスクワーク中心のOLで、肩コリ解消のためにスイミングとヨガに通っているという拝原利恵さん、看護師でタヒチアンダンスやフットサルを楽しんでいるという、結構アクティブな福田千明さんの5人(いずれも当時のプロフィール)。

「使ってみたいと思いますか?」「………」

 途中で質問に答えつつ、活動量計とは何か、どんなことができるかを製品別に伝えた。説明時には立ち上がったり前のめりになりつつ「へ〜!」といいながらで聞いてくれた彼女たちだったが、いざ「使ってみたいと思いますか」と聞いたとき、一瞬沈黙が流れた。機能的な部分で驚きはあっても、自分たちのもの、という感じはしなかったようだ。

 拝原さんは「つけるとしたら毎日つけるじゃないですか。会社に着ていく服を考えたら、デザインがもうちょっと時計っぽかったり、ブレスレットぽかったりしたらマッチしやすいのでつけられると思います」と回答。

 腕に着けるのはあまり好きじゃないという福田さんは「これじゃなければ……。どちらかというと、髪飾りとかだったら。もうちょっとデザインとかがかわいければ」とのことだった。

 職業柄、腕時計は毎日使っているという大町さんは、時計との重ねづけそのものは抵抗がないという。ただし「やっぱりスーツ着てたりとか、あと少しかわいいワンピースとか着てても、不自然じゃなければつけてもいいかなと思います。あと、クリップタイプはインナーにつけたとき、完全に見えないんだったらいいかな」とのこと。Tシャツなどを着たとき、外から分かるような状態は避けたいらしい。

 それぞれの発言に、他の参加者がうなづく場面が多々見られた。

BIJINとウェアラブル
拝原利恵さん、福田千明さん

おしゃれじゃない! 価格もネック

 目の前のデバイスがほとんど黒で、サイズが大きめだったことも大きく影響していると思われるが、結局、彼女たちの背中が椅子の背もたれから離れることはなかった。

 「かわいくない」

 「ラバーはふだんの服に合わない」

 こんなところが主な理由だ。着せ替えが可能な製品もあるが、着せ替えできることがラバー素材からはイメージできないので、身近に感じられないようだった。一応女性がターゲットという製品も含まれていたが、彼女たちの目にはおしゃれには見えなかったらしい。確かに写真でみても、彼女たちの雰囲気と、目の前に広げたデバイスの間には大きな隔たりが感じられた。

 日頃から1日40分は歩いているという斉藤さんは「歩くのとか好きなんで、調べられたらいいなと思って、(歩数計を)ちょこっと見にいったことはあります」とのことだが、価格を見て購入を断念したそうだ。

 具体的に購入してもいい価格を聞いたところ、スマートフォンと連携する機能などがついているなら9800円くらいまで出せるかもしれないとのことだが、通常の活動量計なら3000円くらいらしい。1万円など絶対に出したくないとのこと。「ここにあるものはだいたい1万数千円する」と伝えると、「ふーん」という空気が流れた。

どこに売ってるの?

 また、女性が立ち寄りやすい場所にないため、そもそも製品の存在自体が情報として届いていないことも判明した。「見たことがない」「どこで売っているんですか?」「家電量販店でも、(美容家電などの明るい場所に対して)暗めのエリアにある気がする」「あえてそこにいかない」と辛辣だ。

 このようなウェアラブルの多くがネットで販売されている。筆者もすべてネット通販で購入している。しかし、ネット通販は商品を知っており、購入意思がある人には便利だが、そもそも知らなければ検索しようもない場所だ。彼女たちが普段購入しているものに関連していなければ、ショップからお勧めされることもないだろう。つまり、そもそも彼女たちに全くリーチしない場所で売られているということのようだ。

 座談会も後半になり、空気が和んでくると素直な意見が飛び出すようになった。

 斉藤さんが「ルミネとかの中に入ってるプラザなんかにあれば、あーそう、こういうの今流行ってるんだ、っていう感じで気になると思うんですけど」というと、「確かに!」と全員が大きくうなづいた。

 さらに、福田さんが「サマンサ(サマンサ・タバサ)とかとコラボして……」と言い出すと、話し終わらぬうちに「あーいい!」「あーかわいい!」と声が上がった。名前が出た瞬間、彼女たちの表情が、一瞬でパッと明るくなった。黒いデバイスを無言で見つめていたときとはまるで違う。ファッションブランドのすごいところだ。

 「ファッション雑誌で、さりげなくコーディネートされていたら気になる?」と聞くと、とても気になるとのこと。

 実は彼女たちのスマートフォンは、ほとんどがiPhoneだった。iPhoneは、女性ファッション誌によく登場する。OLのコーディネートの一貫として、モデルがさりげなくもっているスマートフォンがiPhoneなのだ。それを考えると、若い女性にiPhoneユーザが多いことも納得できた。

今のデバイスで選ぶならどれ?

 空気がこなれてきたところで、目の前にあるデバイスで選ぶとしたらどれがいいかを聞いてみた。すると「あえて選ぶなら」という条件つきで選ばれたのがソニーのSmartBand Talkだった。単なる活動量計ではなく、時計にもなる、写真が撮れる、音楽プレーヤーになるというところが関心を引いたようだ。

 機能説明が功を奏したのかは不明だが、最終的には全員が「おしゃれであればつけてみてもいい」と答えてくれた。しかし、あえて聞かれれば答えるが、活動量計というウェアラブルデバイスが、本当に求めているものではないことは明らかだった。

 そこで「おしゃれだったら活動量計を使うのか。そもそも活動量計に興味があるか?」根本的な質問をしてみた。5人のうち、活動量に興味があるのは2人、あまり興味ないという人が3人という結果になった。

 このときの新井さんの言葉が印象的だ。

 「使ってる人がいたら意識高い人なんだな〜って思うくらいで、個人的にいえば、私は計らなくてもいいなって。運動嫌いで、インドア大好きみたいな人なんで。でも世の中にはそうでもない人もいるわけで。たとえば走った距離を友達と共有するとか、そういった行為が、たとえばCMじゃないですけど、もっと普及されて、その行為自体がもっとイケてる、カッコイイ文化になって若者に浸透すれば、もっともっと広まる気はするんですよね。普及して流行ってくれば、おのずとSNSとかを通じて入ってくると思うんですよ。そうなると、そういえば私はどうなんだろう?って気になりだすと思うんですよ。自分は」

 現在、ウェアラブル=活動量計 的に語られることが多いが、彼女たちはそもそも活動量計には興味なかったのだ。でも流行っていたらきっと見過ごせない。

BIJINとウェアラブル
新井マリエさん、大町智美さん、斉藤一美さん

 この話がかなり核心をついていたと、このあと証明されることになった。

※ウェアラブルに辛口な女性たち(女子大生編)につづく(3月27日掲載予定)

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