第24回 Apple Watchを試着することで得られる体験:“ウェアラブル”の今
Apple Watchは、今までのアップル製品とは異なり、購入する前に試着することが推奨されている。試着は15分ほどの時間だが、その短い時間でも、より個人的な体験や印象などが、試着した人それぞれに生じるのだ。
2015年4月10日、世界中のアップルストアや主要都市の百貨店などで、「Apple Watch」の展示が始まった。また同日の米国太平洋夏時間0時01分(日本時間では16時01分)から、オンラインでの予約が始まっている。特に人気があるのはApple Watch Sportで、オンラインストアの表示によると、現段階でオーダーしても出荷は6月になる見込みだ。
今回のApple Watch発売に際して、アップルストア店頭での予約受け付けや販売は行われていない。実際に販売開始となる4月24日以降どうなるかはまだ明らかになっていないが、当面はオンラインストアで予約を受け、発売日以降順次配送するという方式を採っている。
発売日ではなかったこと、店頭での受け取りができないこともあり、アップルストアの前には、「iPhone」のときのような行列はできていなかった。比較的金額が高い点、ブランドを大切にする点、あるいは行列が必ずしも良いブランドの象徴ではないこともあり、行列ができない対応に切り替えていたのも印象的だった。
アップルストア店頭で行われる展示と試着
アップルストア以外でも、百貨店の伊勢丹 新宿店、その他一部のApple正規販売店で、Apple Watchの展示が始まっている。
展示の方法はどの場所でもほぼ同じで、中央にガラスケースが埋め込まれた専用のテーブルに各モデルが展示されている。ガラス1枚を隔てているが、かなり間近で実物を見ることが可能だ。展示機の電源は入っており、Apple Watchの機能を紹介するデモ画面が再生されている。
展示と同時に、試着の対応が始まっている。筆者はアップルストア 表参道を取材したが、開店が9時に早められた展示開始当日、7時30分の段階で10人ほどの試着希望の人々が行列を作ったが、すぐにスタッフが「試着予約」を取り、行列は解散された。
試着予約を行うと、15分程度の予定で試着時間が割り当てられる。時間が近づくと、SMSが届いて案内されるため、Apple Store店内で待たなくてもいい。Apple Storeの入り口までいくと、試着担当のスタッフに出迎えられて、試着セッションが始まる。
試着のセッションは新たにApple Store内に用意された専用のテーブルで行われる。時計を扱うためのマットと、Apple Watchが収納されている引き出しがあり、好みのモデルを素早く、サイズを合わせながら試すことができる
実際に接客を受けると分かること
Apple Watchの試着は、「スムーズさ」に気遣われているという印象だった。
Apple Watchの発売日が発表された3月9日以降、オンラインのApple StoreやApple Storeアプリ上からApple Watchの好みのモデルに「お気に入り」(ハートマークのアイコン)をセットしておけるようになっている。
Apple Watchの試着予約の際、Apple IDでチェックインすると、店舗のスタッフはこのお気に入りを把握でき、どんなモデルを中心に試着したいか、どんな好みを持っているか、といったニーズに応えながらの接客が行われる。
また、普段どんな服装をしているのか、Apple Watchをオンタイム、オフタイムのどちらを意識して選ぶのか、といった実際の生活の中でApple Watchのコーディネートについても気遣われているのが印象的だった。
例えば、スポーツモデルを選ぶ際、男性の場合はブラックモデルを選んでスーツに合わせやすくしたり、通常モデルのメタルやレザーのバンドを選んでおいて、スポーツバンドをプラスしたり。
まだ試着が始まったばかりなので傾向などはつかめないかもしれないが、それでも試着で男性に人気だったバンドがミラネーゼループであることや、それにとらわれず、どうやって個性的なコーディネートを作り出すかについて、一緒に考える時間でもあった。
15分のセッションが終わってみると、Apple Watchの試着は、15分間、スタッフの方と「Apple Watchについて深く会話する時間であった」と振り返ることができる。
より個人的な体験や印象が生じる「試着」
確かにこれまでAppleのWebサイトやさまざまなメディアのニュースでApple Watchについて知ることができたし、筆者も原稿を書いてお伝えしてきた。もちろんこれらの情報は有用であったし、そうなるよう努めてきた。
Apple Watchをアップルストアで試着すると、今まで触れてきたApple Watchに関する情報が、より広範な人々を対象にした、一般的なモノであったことが分かる。つまり、これらとは別に、試着をすると、より個人的な体験や印象などが、試着した人それぞれに生じるということだ。
AppleはApple Watchについて、非常にていねいに初期の体験から作っていこうとしていることが伝わってくる。Apple Watchほどの丁寧さを他のすべての製品に適用するかどうかは分からないが、例えばiPhone、Mac、Apple Watchをコーディネートして買う人も現れるかもしれない。
アップルストアで時計を買うという体験は、時計について、あるいは自分がどんなスタイルでテクノロジーを使いたいのか、ということを議論して気づかせる場だった。
Apple Watchに興味がある人は、Webと実店舗での体験と、それらの連携について、一度経験してみると、今までの製品との違いをより明確に知ることができるだろう。
関連記事
- 「Apple Watch」の試着って何をするの? 流れを写真で解説
アップルストア表参道で、Apple Watchの試着をしてきたので、どんな流れで体験できるのかご紹介しましょう。 - 第23回 予約開始目前 どのApple Watchを選ぶべきか?
Apple Watchの日本での予約開始が、4月10日午後4時1分からと案内された。あと1週間を切ったわけだが、いまだにどのモデルを選ぶのかは非常に悩ましい。改めてどのモデルを選ぶべきか考えてみた。 - Apple Watchの予約前に確認しておきたい4つのポイント
いよいよ予約受付が開始されるApple Watch。事前にこれらのポイントを押さえておきましょう。 - Apple Watch、ケースとバンドの「全組み合わせ」98パターン大公開
ケースとバンドを交換して自分好みにカスタマイズできるApple Watch。全組み合わせの画像を作ってみました。 - 試着して初めて分かる Apple Watch ミラネーゼループの「柔らかさ」、リンクブレスレットの「すごさ」
Apple Watchの試着は、購入前に一度体験しておいた方が良さそうです。MacやiPhoneの画面で見ているだけでは分からない魅力を感じられます。 - Apple Watchは失敗だったのか? 実機で気づいたメリットとデメリット
Apple Watchの実機に触れて「これはすごい」と思ったところが多数あったのですが、期待していたのに残念だったこともありました。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.