近年急速に盛り上がりを見せている、身に付けて使えるデジタル製品群「ウェアラブルデバイス」。その決定版とも目されているのが、iPhoneと連携させて使うスマートウオッチ「Apple Watch」だ。先週の予約開始直後から、多くのモデルが6月まで手に入らなくなっているなど、新しもの好きからは好意的な注目を持って受け入れられているようだ。
こうした新しいジャンルを切り開いていくプロダクトは、人々の生活を劇的に良い方向に変えていってくれる期待を感じさせる一方で、世の中の既存の枠組みに収まりきらずにトラブルを招くこともある。例えば、街ゆく人々の姿や住宅を許可なく撮影したことでプライバシーを巡る論争を巻き起こした「Googleストリートビュー」がそうだった。
そして今、Apple Watchをはじめとするウェアラブルデバイスも、やはりこの問題に直面しつつある。想定されるトラブルはさまざまに存在するが、環境の整備を急がねばならないのは、入学試験や資格試験会場などへの持ち込み――いわゆるカンニング問題だろう。
2011年、京都大学や同志社大学などの入試中に、インターネットの掲示板に試験問題を投稿して解答を聞きだす行為が発覚するという事件が起こり、世間を大きく賑わした。以来、試験会場などではスマートフォンの電源オフを徹底する措置が取られていると聞くが、スマホよりもさらにサイズが小さく、モデルによっては通常の腕時計とほぼ変わらないデザインを採用しているものもあるスマートウオッチでは、こうしたチェックはさらに難しくなっていくに違いない。
もちろん、問題はスマートウオッチだけにとどまらない。「Google Glass」などのメガネ型デバイスもそうだし、首から提げたり髪に着けたりするアクセサリー型のデバイスもある。超小型カメラや超小型イヤフォンなど、いわゆる「ウェアラブル」には該当しない製品も問題になってくる可能性がある。
このような問題への対処法として、試験監視員などに「腕時計とスマートウオッチを見分けてください」などと要求するのは当然ながら現実的とは言えないわけで、何らかの仕組みで解決する必要がある。2012年には、東工大と光電製作所が共同で携帯電話による入試の不正行為を検出する方法を発表し、現在は「端末位置推定システム」として首脳会談の場などで利用されているそうだが、試験会場という点では「費用対効果の問題から実用化には至っていない」とのこと。
また、先日報道された「チェスのグランドマスターが対局中にスマホでカンニングをしていた」という衝撃的なニュースでは、不正行為はトイレで行われたことが判明している。上述の端末位置推定システムは、基本的には教室などの特定のスペースを監視するものであり、このシステムだけですべてを解決できるとも考えにくい。
Apple Watchの発売はすぐそこに迫っており、さらに今後も同様のプロダクトは次々と登場してくるだろう。一方で、各種試験は今日もどこかで行われている。急速に普及しつつあるウェアラブルデバイスにどう対応していくか。考えている時間はあまりない。
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