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Apple Watchのアクティビティアプリにリングが3つある理由

Apple Watchのフィットネス技術の開発をリードしたジェイ・ブラーニク(Jay Blahnik)氏が来日した6月1日、アップルストア表参道で開催されたイベントで、Appleがアクティビティアプリに込めた思いを聞くことができました。

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Apple Watch Activity Ring
Apple Watchのアクティビティリング

 Apple Watchの開発にあたって、Appleがさまざまなデータを取り、人の体について学ぶために秘密のフィットネスラボを作った話を以前ご紹介しましたが、その話が出たのと同じ、アップルストア表参道でのイベントで、Apple Watchに搭載されているアクティビティ機能の開発秘話なども一部披露されました。

 Apple Watchのフィットネス技術の開発をリードしたジェイ・ブラーニク(Jay Blahnik)氏の来日に合わせて開催されたスペシャルトークライブでのひとコマで、林信行氏が「アクティビティアプリのそれぞれのリング(円)はどう解釈するのがいいか」と質問すると、ブラーニク氏は興味深い話をしてくれました。

アクティビティアプリの3つのリングの意味

Jay Blahnik
Apple Director of Fitness, Health Technologiesのジェイ・ブラーニク氏

 ブラーニク氏は、Appleの健康・フィットネス分野のディレクター(肩書はDirector of Fitness, Health Technologies)。かつては、Nikeの「Nike+ Running」や「Nike+ FuelBand」などの開発などにも携わっていた、フィットネス業界では名の知れたカリスマトレーナーです。これまでの同氏の経験と、AppleのこだわりがApple Watchのヘルスケア機能に結実していると考えられます。

 そのブラーニク氏のチームでは、アクティビティ機能のデザインを考えるときに「単なる定量的なカウンターではない、歩数計のようなものを超える何かがほしい」と思ったそうです。そこから3つのリングが生まれました。

 「カロリーを消費したり、体の循環を改善したりするために、1日を通して適度に体を動かすことはとても重要です。それを測っているのが赤い『ムーブ』のリングです。一方、緑色の『エクササイズ』リングは1日のうち何分を、健康的な、はや歩き以上の強度の運動にあてているかを計測しています。

 1日の中での定常的な運動量と、それを超える強度の運動は違うと考えています。多くの人は、動き回っていても、はや歩き以上の強度の運動はなかなかできていません。1日の運動量を考えて、なおかつ自分の健康を増進できるような強度の運動もしてもらおう、という考えから、ムーブとエクササイズのリングは生まれました」(ブラーニク氏)

 3つめの青い「スタンド」リングは、ずっと座っていることが体によくない、ということを意識してもらうために用意したといいます。

 「あまりに静かに座ってい続けることも、アクティブに運動しすぎるのも、どちらも同じくらい健康に悪いのです。例えばあるアスリートの方は、朝起きて1時間ジョギングをして、その後出勤してオフィスでずっと座っているので、スタンドの青いリングがなかなか完成しないと言っていました。実際、スタンドのゴールを達成するのは難しい、というアスリートの声を耳にしますが、それはそれなりに健康上のリスクがあることなのです」(ブラーニク氏)

 ちなみにAppleの本社では、「会議をしていると皆同じくらいのタイミングでApple Watchからスタンドの通知が来るので(Apple Watchは、1時間立ち上がっていない人に対して、毎時50分くらいに、立ち上がるよう通知をくれます)、ほどよいタイミングでみなが立ち上がって伸びをしたり、休憩を取ったりする」とブラーニク氏は笑いながら話していました。

 林氏も、「シリコンバレーでは今、“Sitting is the new smoking.”(座っているのは喫煙のように体に悪い)と言われていますね」と、仕事などで座り続けると体によくない影響があるという認識が広がっている様子を伝えました。

Nobi Hayashi
ジャーナリストの林信行氏

リングを3つ用意した理由は?

 いろいろな意味が込められたアクティビティアプリのリングですが、なぜわざわざ重なった3つのリングを用意したのでしょうか。その理由をブラーニク氏はこう語っています。

 「私自身も、1日たって、3つのリングが全部完成できないという日もたまにあります。もしリングが1つしかなくて、その1つのゴールすら達成できなかったとなると、そこでもういいやとあきらめる人も出てくると思います。でも3つあったら、そのうちの1つにフォーカスしてみたりすることができます。例えば今日はスタンドだけ頑張ろう、とか思えるわけですね。ですから、3つのリングがあるのは、ユーザーのモチベーションを維持するために重要だと思います。言ってみれば、3種類の達成方法が用意されているということです」(ブラーニク氏)

 ブラーニク氏も夜9時くらいになってアクティビティリングが完成していないと、ウォーキングに出たりして無理矢理でもリングを完成させるそうです。

 Apple Watchに用意された3つのリング――。それは、ダイエットやフィットネスにまつわるサービスを手がける開発者が一様に直面する、モチベーション維持のための秘密だったのです。

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