第34回 「Coin」 クレジットカードをウェアラブルデバイスに変えるアイデア:“ウェアラブル”の今(2/2 ページ)
米国では、「Coin」という、さまざまな磁気カードを1枚にまとめられるカードが注目を集めている。ウェアラブルやIoTにおけるデザインパターンとして、注目すべきだと考えている。
店舗の対応と、EMVサポートというチャレンジ
筆者の手元にCoinが届いたばかりで、あまり決済数は多くないが、現状、筆者が利用したカリフォルニア州バークレーのパン屋、八百屋、人気のピザ屋、銀行ATMなど、生活圏で使いうる店舗では、Coinは問題なく受け入れられている。
電子ペーパー付きのカードを珍しそうに見ながらスワイプしてみて、通常のカードと同じ振る舞いをすること、券面の裏の「カード所有者」の欄が確認できることも、利用者が特定できるという意味で良いのかも知れない。
もっとも、変わったデザインのクレジットカードは、さすがカード大国だけあって、既に一般にもあふれているため、さほど大きな驚きがあるわけでもないのかもしれない。
ただ、例えばショッピングモールやサンフランシスコ市内のブランド店など、高額決済が行われる店舗では、オリジナルのカード以外に使用を断られるケースもあり得るだろう。
また、EMV移行というカード業界の一大イベントが、米国では2015年に訪れる。EMVとは、日本や欧州ではすでに導入が進んでいる、券面の内蔵ICチップと4桁のPINコードで決済を行う仕組みだ。磁気ストライプよりも高いセキュリティが期待され、米国市場はEMV対応の最後の市場となる。
前述のモバイルデバイスをカード決済端末にできるSquareは、WWDC15に合わせて、Apple PayなどのNFCデバイスによる決済とEMVに対応する決済端末を発表した。Coinは当然このICチップによる決済をサポートしないが、当面は、EMV非対応のカードも磁気のスワイプで決済ができる。
Squareリーダーが登場したときも、新しいテクノロジーと旧来の普及しきったモノをどのようにつなぐか、というアイディアが光る製品だと感じた。
Coinも、セキュリティの観念上、気がかりな面があることは否めないが、新しいウェアラブルデバイス的な考え方で旧来のクレジットカードを束ね、安全に使えるようにする、ウェアラブルやIoTにおけるデザインパターンとして、注目すべきだと考えている。
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