「ひと駅前で降りて歩く」が続かない理由――予防医学研究者・石川善樹さん<前編>(3/3 ページ)
話を聞いてみたいあの人に、生活習慣や健康のコツを聞く本連載。今回ご登場いただくのは、予防医学研究者の石川善樹さんです。
他人が語る健康記事なんて、読んでも意味がない
――パソコンを壊した話に戻りますけど、事故が習慣化のキッカケにあることもあるんですね。
「感情が動いたとき」って、人が変わる大きなチャンスなんですよ。この話には続きがあって、新しいノートパソコンが届いて再設定に追われたんですけど、新機能が多すぎてわけが分からず、イライラしてきたんです。いったん冷静になって、「メールの設定作業ごときで怒るとはなんだ。待てよ、そもそも自分はこの新しいパソコンさんで何をしたいのだ?」と考えまして、紙に「パソコンさんと一緒にやりたいこと」を書き出してみたんです。
あらためて考えると、パソコンを使うまでもない作業も見つかりました。「自分はパソコンさんとそこまでして付き合いたいのか? なくてはならないツールなのか?」と再び自問自答したんです。研究者として、調査するとか資料をまとめる作業には不可欠な物ですが、アイデアを出すとき、思考を深めたいときはむしろパソコンから離れ、散歩するほうがいいと気付きました。脳を活性化させたいときは散歩、考えをまとめるときは座る、とメリハリをつけることにしたんです。その結果、パソコンそのものの使用頻度が減り、歩く回数が増えました。
逆説的になりますが、私が語る健康の記事なんて、読む必要はないんです(笑)。それよりも、自分が無意識にしていることを「それって本当にしたいことの?」って客観的に振り返ってみてください。しなくてもいいことを惰性で続けているだけかもしれないですから。
――ずいぶんご自身を客観視できるんですね。
研究者は、自分の感情を客観視するトレーニングをしているからでしょう。研究者って、基本的に理屈っぽい人種なんですが、一定のところまで行くと今度は理性が邪魔をしてきます。理性だけだと、疑問を持たなくなったり、物事に対して感情を動かされなくなってしまう。研究は必ず自分の感情の動き、「なぜそうなるの?」「これって不思議だな」って感情から始まるんです。動いた感情を元に行動し、また理性に戻るという思考の旅なんですよ。
――なるほど。理性と感情、両方を行ったり来たりする繰り返しなんですね。
- 連載「“引っ張りだこな人々”の習慣」過去記事はこちら
中山順司(なかやま じゅんじ)
ロードバイクをこよなく愛するアラフォーブロガー。ブログ「サイクルガジェット」運営。”徹底的&圧倒的なユーザー目線で情熱的に情報発信する”ことがモットー。ちょっぴり健康が気になって、自転車でも始めようかなとお考えの方が、「こんなコンテンツが読みたかった!」とヒザを打って喜ぶ記事をつくります。
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