対応アプリは増えたものの 3D Touchの使いどころに悩む
iPhone 6sとiPhone 6s Plusの最大の特徴の1つに上げられる、画面を押し込む新たな操作を実現した3D Touchですが、使いどころが限られ、つい今までと同じそうさをしてしまうことも多いのが現状です。
iPhone 6s Plusを手にしてから約1カ月。あれこれ試した新機能の中でも、いまだにしっくりこないものの1つが「3D Touch」です。
発売前の多くのレビュー記事で絶賛されていた3D Touchですが、当初から懸念していたのが、「その機能の存在に気付かない人がいるのではないか」という点です。これについては、「知らなくても今まで通りの操作をすればなんの問題もなく使える」と林信行氏から指摘をいただいていますが、知らなくても困らない機能が、今やタッチパネルの快適な操作に欠かせないマルチタッチの次の革新だといわれても、ちょっと実感がわきません。やはりPC用ソフトのキーボードショートカットのように、作業効率を上げるための隠し機能的な使い方が中心だからでしょう。
サードパーティー製アプリの3D Touchの用途
対応アプリが増えてくれば少し評価は変わるかもしれない、と思っていましたが、iPhone 6sとiPhone 6s Plusが発売されて1カ月が経過した本稿執筆時点では、まだ3D Touchの使い方で面白いものや驚いたものには遭遇していません。
3D Touchに対応するアプリがどのように3D Touchを使っているかは、大きく2つに分けられると思います。1つはクイックアクションと呼ばれる、アイコンを押し込んで、アプリ内のメニューの中にある機能(アプリを起動してから数回タッチが必要な機能)を直接呼び出すもの。もう1つが、PeekとPopと呼ばれる、アプリ内でのプレビュー機能に相当するものです。
現状、いくつかの3D Touch対応をうたうアプリを試してきた中では、主にクイックアクションを活用しているものが多い印象です。例えばカメラアプリならビデオ撮影モードやインカメラを最初から起動したり、Safariならリーディングリストや新規タブを開いたりできます。Twitterなら新規ツイートやツイートの検索、Instagramでは、新規投稿のほかにアクティビティなどをすぐにチェックできたりもします。
ただ、実はホーム画面からいきなり新規に投稿やメールを作る作業というのは、日常の中でそんなに頻繁にあることではありません。それよりも、メールを受信して返信したり、投稿を見て反応したりすることのほうが多く、その場合はすでにアプリが起動している状態なので、こうしたクイックアクションの必要性を感じるシーンは少ないのです。
Yahoo! ブラウザーの「QRコード読み取り」や、ナビゲーションアプリの「自宅へ帰る」がすぐに呼び出せるあたりは、ちょっと「技あり」だと感じましたが、まだクイックアクションで「ああ、3D Touchはこういうことがやりたかったんだ」と感じるような用途には出会えていないのです。
またクイックアクションは、アプリの並び替え操作と誤認識されやすい点はもう少し改善を望みたいポイント。新しいアプリをよくダウンロードするせいで、アプリの並べ替えやフォルダ分けをよくするのですが、3D Touch非対応機種の長押しの感覚でアイコンを押すとクイックアクションを呼び出そうとしてブルブル震える、といったことがよく起き、押しすぎないように注意を払ってアイコンに触れる必要があるのは個人的にはストレスです。
PeekとPopへの期待
一方で、メールやInstagramに用意されているPeekとPopは、なかなか便利です。Instagramなら、タイムラインを眺めながら気になる写真や動画を強く押し込んでPeekし、さらに押し込むと全画面表示になり、フォローやいいねができます。メールの処理も、さっと見て不要なものは消したり、大切なものは未読に戻したりと、便利さを実感できました。ただ、対応するアプリはまだ少ないのが現状です。
個人的には、ニュースアプリへの実装に期待をしています。写真とタイトルを中心に構成されているニュースアプリは、PeekとPopと相性が良いのではないでしょうか。「あとで読む」系のサービスと組み合わせると情報収集もはかどりそうです。
さすがに登場からまだ1カ月しか経過していない今、3D Touchの最終評価を下すのは時期尚早だと思いますが、クイックアクション中心の機能ではさほど必要性を感じていないのも事実です。また、気付きにくい点も、発売当初はテレビCMなどで3D Touchを目にする機会がありましたが、最近は別の形の映像も多く、3D Touchを知らないまま使っている人も増えているのではないでしょうか。
もう少し時間と工夫が必要な3D Touch機能、特にサードパーティーアプリベンダーのPeekとPopの活用が、普及の大きなポイントになるのではないでしょうか。
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