メガネにレンズをつけるアイデアは、Googleが「Google Glass」で実現したスタイルだ。そのため、必ずしも新しさを感じるものではない。もちろん、新しいガジェットが重要なわけではない。
というのも、Google Glassは未来的なガジェットであったが、何を表示するか、そして何を撮影するか、という「サービス」がなかったこと、そしていくら何でも高すぎたことから、既にその存在感が消えつつある。ちなみにGoogleは10月4日のイベントで、Daydream Viewを発表し、VR体験を楽しむ方向へとシフトした。
Spectaclesは、Snapchatというサービスを前提に作られている。撮影された10秒のビデオは、スマホが縦でも横でも、画面いっぱいに表示される仕組みを実装し、カメラがついていない方の左端には、撮影中は白いLEDのランプが灯る。
こうして、友人と楽しんでいるとき、自分がいる場所などを、直接Snapchatアプリに送り込んで、すぐに友人に送ったり、メモリとして公開できる仕組みを作り上げた。「カメラ会社」を名乗るSnap Inc.としては、スマホを構えず撮影できる点で、新しいカメラを打ち出せるのではないだろうか。
Spectaclesはウェアラブルカメラと分類できる。アクションカメラなど、身につけてアクティビティーをする際に便利なカメラは既に存在している。こうしたウェアラブルカメラについては、最近悲しいニュースがあった。それはNarrative Clipの販売とサービスの終了だ。
Narrative Clipは、襟などに装着して、30秒に1枚のペースで写真を記録してくれるカメラだった。いわゆるライフログの系譜から生まれており、撮影した画像をあとから分類して見ることで、写真撮影の煩わしさや撮り逃しを防ぐというアイデアだった。
製品を販売してからは継続的にサーバのコストが掛かり続け、ビジネスモデルが発展しなかった点、そしてスマートフォンのカメラのさらなる高画質化から、自動的に記録してくれるカメラのメリットが薄れてしまった点が、サービス終了の原因だと考えられる。
Narrative Clipも、Snapchat以前のストックを前提としたアイデアから出発している点で、時代遅れになってしまった、と捉えられるだろう。
ウェアラブルとフロー
この瞬間を刹那に楽しむことへの興味をかなえてくれるのがSnapchatだ。
若者が今後、自分の情報を丁寧に蓄積し、関係性を重ねて行くことに価値を見いだすかもしれない。過渡期ともいえる当面は、例えばキャリアを意識したり、自分のプロジェクトを持つようになると、ストック寄りの志向が強まるのではないだろうか。
Snapchatがメモリ機能を用意したのも、Snapchatユーザーが成長するにつれてストックへの興味を持つならば、それを満たす機能を入れよう、という戦略的な意味合いも透けて見える。
しかし、彼らが経験した、フローの情報を扱う感覚は、失われないだろう。Spectaclesは、そうしたフローの情報を扱える人々のためのウェアラブルカメラとして、支持を集めることになると予測している。
ウェアラブルデバイスは、特定の目的や最小限の機能を備えたものが多い。その理由は、身につけるためできるだけ小さくしなければならないからだ。より状況に応じた機能を発揮することが求められ、もし情報を扱う場合、フローの感覚が、ヒットを呼ぶヒントとして考えられる。
Spectaclesの成否は、Snap Inc.の新しい戦略の正しさだけでなく、ウェアラブルデバイスの方向性を占う意味でも、注目していくべきだろう。
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