「UberEATS」をはじめ、レストランの食事を届けるフードデリバリーサービスが米国で定着しつつある。そんな中、そこからさらに一歩踏み込んで「家庭料理」を届けるサービスがニューヨークで登場した。
2016年9月にローンチされた「Umi Kitchen」だ。多忙だが家庭料理のような温かみを感じられる食事を楽しみたい、ギークなニューヨーカーの間でにわかに注目を集めている。魅力は、作り手の顔とキッチンが見えることだという。
「まるで実家の料理を食べているようだ」
Umi Kitchenの最大の魅力は、プロではないローカルの料理人が作る家庭料理を自宅で楽しめること。調理するのは、Umiと契約する「ホームコック」たちだ。
ホームコックたちが自宅で少量ずつ作った料理のため、レストランやファストフードの画一的な味とは異なる。また、インドやタイ出身のホームコックたちが作るインド料理やタイ料理などの本格的な民族料理を楽しむこともできる。多様な人種が集まるニューヨークならではだ。
「まるで実家の料理を食べているようだ」さっそく利用したニューヨーカーからはとても好評だ。多忙で料理が苦手だけれど健康的な食事をとりたい、という人から特に評価が高い。
ユーザーはUmi Kitchenのスマートフォンアプリで1週間後までの献立を見て、一週間前から当日の午後2時までオーダーできる。大体が2〜4品の献立で、価格は12USドル、14USドル、16USドルのいずれか。オーダーすると配達時間を1時間刻みで設定できる。執筆時点では金曜日と土曜日のディナー時は使えない。
毎日、6〜10人のホームコックがエントリーしており、ジャンルはアメリカ料理にキューバ料理、アジア料理などさまざま。各献立には食材や温め方、ホームコックの経歴など詳細が記載されている。例えば、人気の「Ame's Classic」の11月20日の献立は、「ターキーポットパイ」と「ケールのコールスローサラダ」「パンプキンパイ」。多くの献立にデザートまでついてくる。
ホームコックへの厳しい道のり ガイドラインで衛生面を担保
Umi KitchenのCEO、Khalil Tawil氏がサービスを着想したのは、イェール大学のロースクールに在籍していたとき。学業が多忙なあまり料理をできず、実家の料理が恋しくなった。そこで、当時住んでいたニューヘイブンの掲示板に「誰か家庭料理を作ってくれないか」と投稿したところ、48時間のうちに17人から返信があった。自分が作った家庭料理を他の人に提供したいというニーズがあることを、このときに初めて知った。
「知らない人の作った料理なんて食べて安全なのか?」多くの人が疑問に思うはずだ。Umi Kitchenでは食の安全を確保するために、ホームコックの志望者に厳しい審査を課している。まず、Umi Kitchenの運営者が料理を試食。その後、ニューヨーク州の外食産業従事者に受講が義務付けられている、食に関する衛生講習を受けることになる。
ホームコックになった後も、運営者が料理に対する利用者からのフィードバックを厳しくチェック。こうしたガイドラインによってUmi Kitchenの衛生は担保されているのだ。
また、ホームコックになるには看板料理となるメニューを持っていることが条件。こうした審査をクリアすれば、売り上げの80%がホームコックに入る仕組みとなっている。さらに、現在は売れ残りに対する払い戻しも受けられるようになっている。
前出のTawil氏は「OBSERVER」のインタビューで、「Umi Kitchenが他のフード系スタートアップと決定的に異なるのは、消費者一人一人に合わせた体験を提供していることだ」と語る。
この言葉の通り、ホームコックから利用者に贈られる手書きのメモが好評を得ている。あるメモには、その日のメニューや食材にまつわる裏話が書かれていたことも。作り手との直接的なやりとりは、普通のレストランやファストフードではできない経験だ。
ローカルコミュニティーの活性化も一役買う
「例外」もある。ニューヨーク市ブルックリン区にある、若者に人気のピザ屋「Pizza Loves Emily restaurants」とコラボレーションして期間限定のサンドイッチを提供したこともあった。サンドイッチに使われるソースは、同じくブルックリンにあるレストランのものを使用しており、売り上げはすべてニューヨークの動物救助団体に寄付された。サービスが地元の活性化にもつながっている。
冒頭でも述べたが米国のフードデリバリーサービスは飽和状態になりつつある。Umi Kitchenは「家庭の味」という強みでこの業界を切り開いていけるか──。
ライター
執筆:橋本沙織
編集:岡徳之
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