人見知りの口数が少ない本当の理由
人見知りは漏れなく口数が少ないのですが、その理由は、
「自分の振った話題が、相手にとって興味のないものだったら申し訳ない」
「相手は退屈しているのではないだろうか。話題を変えたほうがいいのだろうか」
「面白がっているフリをしてくれているだけだとしたら、失礼に当たってしまう」
「自分との会話なんてさっさと切り上げて、本命の誰かと話したいと思っているとしたら気の毒だ」
と考えてしまい、会話をリードすることを苦痛に感じるからです。例えばこんな感じ。
- 「職場や取引先の人に週末の過ごし方を訊いたら、“プライベートに踏み込んでくる失礼な人だな”と煙たがられるかも」→業務の話題のみに徹する
- 「自分の家族構成を訊かれたから話しているけど、相手はそもそもそんなことには興味はなく、話の流れで義務的に振ってくれたにすぎないのだから、真剣に答えようものなら滑稽に映ってしまう」→だから口数少なめに切り上げる
って具合ですね。
人見知りは将棋名人のごとく、むちゃくちゃ先読みをしてしまい、ばかばかしいくらいディープに気を遣ってしまうんです。そのせいで、人見知りは自分から仕掛ける(声をかける)のが苦手なのです。結果、自分が会話の輪に加わることで、座が盛り下がるかもしれないのなら、口を閉ざして聞き役に徹するのがベストという結論に至るのです。
これが、人見知りが口数が少ない理由です。
人見知りは才能の1つである
これだけ散々書いておいてナンですが、私は人見知りが悪いものだとは思っていません。それどころか、1つの才能だと思っているくらいです。べつに胸を張って威張ることではないものの、「人見知り」がプラスに影響していますことがあって、それが「書くスキル」。
自分のライティング能力は、人見知りのおかげです。
「どんな切り口で企画すれば、読者の心をわしづかみできるだろう?」
「この文章、表現、単語の組み合わせで読み手に理解してもらえるだろうか?」
「句読点の置き方は適切だろうか? 誤解を招いていないだろうか?」
「この用語は一般的ではないので、別の表現に置き換えられないだろうか?」
「抽象論だけでは共感を得られない気がする。エピソード的な要素を盛り込んでみよう」
などなど、悩んでは書き、書いては消し……繰り返すのです。高度な人見知りスキルをフル活用し、徹底的に読者目線に自分を置くことができるので、共感を得る企画を考えたり、刺さる文章が書けるのだと思っています。
もう1つ、発想の転換で「話し下手であることを逆手に取って、聞き上手になればよい」と考えて、相手に気持ちよく語ってもらうための相づち、質問のかぶせ方等の技術も磨きました。それが自分の取材力につながっていると思っています。
べつに文筆業でない人にも人見知り力は生かせます。相手の立場に立って考えられるスキルは、営業等の交渉・折衝の場、顧客ニーズを読み取るマーケティング、お客さまの本音を瞬時に読み取るカスタマーサポートや接客業等、いろんなビジネスシーンで生きるはずです。
人見知りは世界を救う! とまでは言いませんが、自分自身だったら救えます。人見知りとともに生きる技術を、この連載でお伝えしていきます。
次回は「飲み会の席で、会話の輪には加わらないが、かといって場の空気を壊さない程度に関わっている雰囲気の出し方」です。お楽しみに。
中山順司(なかやま・じゅんじ)
ロードバイクをこよなく愛するオッサンブロガー。“徹底的&圧倒的なユーザー目線で情熱的に情報発信する”ことがモットー。freee株式会社勤務&経営ハッカー編集長。ブログ「サイクルガジェット」運営。
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