「砂糖税」導入でチョコは甘くなくなるの? マニアに意見を聞いてみた
世界で“甘くない”チョコレートの開発が進んでいます。チョコレートは本来どうあるべきかを考えるために、チョコレートマニアに聞いてみました。
米国の一部の地域、メキシコなどは既に導入され、英国でも導入が決まったという「砂糖税」。この背景には、砂糖の肥満や糖尿病、心臓病などの健康リスクが次々と判明していることがあります。これに対応するため、世界的な製菓大手メーカー各社は、砂糖を減らす取り組みを行っているといいます。
このような中、スイスのネスレは、チョコレートの味を変えずに、砂糖を4割減らす生産方法を発見したことを、2016年11月30日に公表しました。ただ砂糖を減らすのではなく、“味を変えずに”つまり、“甘さを変えずに”というところがポイントになっています。
確かに、ただ砂糖を減らした、“甘くない”チョコには「おいしくない」「苦い」という欠点があります。
そこで世界中の数多くのチョコレートを食べ尽くしているチョコレートマニアに、甘くないチョコはアリなのか、ちょうどいいカカオの割合や現在の国内チョコレート商品などについて聞いてみました。
取材協力/ペンネーム:さくさん
チョコレートブログを10年以上継続中。その他チョコレート記事の執筆、チョコレート写真の提供等も行っている。
チョコライフ:http://www.chocolife.info
世界のチョコレートの健康志向について
今回話を伺ったのは、チョコレートに詳しい「さく」さん。今世界で起こっている、チョコレートの「健康指向」の動きについて意見を聞いてみました。
「世界のチョコレートの砂糖を減らし、健康面を考慮する動きには、半分賛成です。確かにチョコレートの主な原料である「カカオ」には、動脈硬化やがんの予防、ストレスの抑制、便通をよくする働きなど、さまざまな効果・効能が確認されています。
日本では“チョコレートを食べると太る”とか“虫歯ができる”などのネガティブなうわさがありますが、これはミルクチョコレートやホワイトチョコレートなどの砂糖の多いものが好まれていることや、甘みがもたらす過食によるところが大きいでしょう。
ある程度、カカオ分が高く、糖分を控えたもののほうが健康的なのは間違いないです。ただ、おいしくチョコレートをいただくには、適度な甘みは必要だと思います。チョコレートは、あくまで“おいしさあっての嗜好品”だと思っているため、カカオの健康効果はあくまで副産物だと捉えています」
いくら健康的であるとはいえ、チョコレートには、やはり適度な甘みが必要であるようです。
甘くないチョコレートはおいしくない?
日本でも、一時期、カカオ99%などの高カカオチョコレートがブームになってから、砂糖の少ないチョコレートはいまだに販売されています。また、砂糖の健康リスクから、今後、砂糖税が導入される可能性もゼロではありません。
しかし、チョコレートをおいしく味わうためには、適度な甘みが必要なのは事実。やはりカカオの割合が高く、甘くないチョコレートはおいしくないのでしょうか。
「そうとも言い切れません。チョコレートの味は、単純にカカオの%(パーセンテージ)だけで判断することはできず、使用しているカカオの品種や品質にもよります。
99%や100%ともなると、ほとんどのものは甘みがなく、苦味・刺激が強いです。しかし、中には使用するカカオ豆から徹底してこだわり、豊かな香りをたのしめたり、まろやかさを感じられたりする100%カカオのチョコレートもあります。このタイプはコンビニやスーパーなどで販売していることは少なく、ごく一部の専門店やネット販売などで購入できるものです」
チョコレートにふさわしい甘みとは?
ところで、チョコレートには、どれくらいの甘さが必要なのでしょうか。最もおいしいカカオの割合を聞いてみました。
「%に関しては使用するカカオの品種・品質などが味を大きく左右するため一概にはいえませんが、1つの基準として、“70%前後”がバランスが良いのではと考えます。
健康効果も高いカカオポリフェノールなどの成分をたっぷり含みますし(品種によっては成分が少ないものもあり)、当然糖分の割合は控えめになります。
使用するカカオによっては、70%ほどのハイカカオでも苦味が弱く、まるでミルクチョコレートのようにクリーミーなもの、またはフルーツを食べているかのようなスッキリした酸味を持つチョコレートなどもあります」
どうやら、チョコレートの味は単純に砂糖の割合だけでは決まらず、カカオそのものの種類や品質、砂糖とカカオの割合などが複雑に絡み合って決まってくる繊細なものであるようです。
国内のチョコレート商品の傾向
砂糖を減らす動きがある中で、今後国内のチョコレート商品はどのように選んでいけばいいのでしょうか。そのヒントとして、さくさんに、最近の国内商品の傾向を教えてもらいました。
「コンビニやスーパーで購入できる大手メーカーさんの商品にも、カカオからこだわり、ハイカカオでもおいしく味わえる商品が増えてきました。また、フルーツやナッツなどほかの素材を合わせて親しみやすく仕上げた商品も人気です。
ただ、味だけでなく、原材料の問題で商品価格は高価になりがちなので、今後どこまでこのようなこだわりの製造方法が浸透するかはむずかしい問題かと思います」
チョコレートは、近年、砂糖へのネガティブなイメージから、より健康効果に注目が集まっています。しかし、やはり嗜好品の1つとして楽しみたいという人は多いのではないでしょうか。今後はぜひ、味も身体にも両方おいしいチョコレートを見つけたいものです。
今回スイスのネスレが行ったように、甘さはキープしつつも、健康のことも考えたチョコレートが国内にも登場することを期待しましょう。
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