タワー・オブ・テラーが変わった? 最恐「Level 13」を体験してきた:あなたの知らないディズニー駄話
10周年を迎えた東京ディズニーシーに、見た目はそのままでも最新最恐になったタワー・オブ・テラーが出現。Level 13となった恐怖のホテルの体験レポートを、そのアトラクションの歴史を紹介します。
著者プロフィール:宮田健
ディズニーに関するニュースサイト「dpost.jp」を1997年からスタート。テーマパークやキャラクターだけじゃない「ディズニー」を幅広く紹介する。OneTopi「ディズニー」キュレーター。世を忍ぶ仮の姿として、OneTopi運営も行う。
2012年3月19日まで10周年イベントを開催中の東京ディズニーシーに新しいアトラクションが登場しました。その名も「タワー・オブ・テラー」――そんなの前からあるって?
実は1月4日から期間限定の新プログラム「タワー・オブ・テラー:Level 13」として生まれ変わっているのです。アイティメディアが運営するONETOPIでディズニートピックを担当するキュレーターが、東京ディズニーリゾート公式ツイッターアカウント「@TDR_PR」がフォロワー限定で募集した「最恐体験者の声」に当選しましたので、早速そのレポートをお送りします。
タワー・オブ・テラーというアトラクション
その前に、タワー・オブ・テラーというアトラクションについて紹介しましょう。このアトラクションの元祖はフロリダのウォルト・ディズニー・ワールド、ディズニー・ハリウッドスタジオにある「トワイライト・ゾーン タワー・オブ・テラー」。
1994年に完成したフロリダ版のストーリーは、映画の都ハリウッドにある「ハリウッド・タワー・ホテル」を舞台に、ある嵐の夜エレベーターからこつ然と姿を消した宿泊客の話を、アメリカのテレビドラマ「トワイライト・ゾーン」の1エピソードとして紹介します。フロリダ版の特徴は、エレベーターが上下だけではなく前にも進むということ。これはいまのところフロリダ版のみです。
そのほか、カリフォルニアのディズニー・カリフォルニア・アドベンチャー、そしてパリの第2テーマパークであるウォルト・ディズニー・スタジオにも同様のストーリーラインを持つ「トワイライト・ゾーン」版が存在します。フロリダ版とは異なりエレベーターは上下動のみ(乗降所から若干前後動作はあります)ですが、シャフトが3本存在しているのが特徴です(フロリダ版のシャフトは2つ)。
そして2006年、東京ディズニーシーに満を持して登場したのが東京版「タワー・オブ・テラー」です。ライドの仕組み自体はカリフォルニア版、パリ版とほぼ同様なのですが、作られたバックグラウンドストーリーが独自のものになっているということが大きな特徴です。
東京版ではニューヨークに建てられた「ホテル・ハイタワー」が舞台となり、オーナーであるハリソン・ハイタワー三世が偶像「シリキ・ウトゥンドゥ」の呪いによりある日姿を消す――その後、ニューヨーク市保存協会により、恐怖のホテル「タワー・オブ・テラー」のツアーが開催され……というものになっています。バックグラウンドストーリーは特設サイトでチェックできますので、体験前にぜひ確認を。
タワー・オブ・テラーを技術的に見ると?
ここからは若干、夢も希望もないお話になります。フロリダのウォルト・ディズニー・ワールドには普段は見ることのできないバックステージを紹介するツアーがありまして、以前そのツアーに参加した際、この「タワー・オブ・テラー」の裏側の話を聞くことができました。
イマジニア(ディズニー内のエンジニアたちの総称)がこのアトラクションを着想したとき、まずエレベーター製作メーカーの大手、オーチス・エレベーターにヒアリングをしたそうです。いわく「落ちるエレベーターを作れないか――」。オーチスの最初の答えは「帰ってくれ」だったそうですが(苦笑)、その後どうなったかはこのアトラクションの大成功で分かると思います。
そしてもう1つ、タワー・オブ・テラーのすばらしいところは「ソフトウエアによる改変が可能」であることです。通常、このようなアトラクションはいったん作ってしまうと簡単には修正できません(カリブの海賊にジャック・スパロウを追加するなどの細やかなバージョンアップは常に行われるようになりましたが)。
タワー・オブ・テラーでは開発当初より「ソフトウエアでのアップグレードが行えること」、つまり落ち方をプログラミングで変更できるよう作られており、すでにフロリダ版では「タワー・オブ・テラー4」などのナンバリングも行うようになっています。東京ディズニーシー版がオープンしたときにもこの「ソフトウエアによるバージョンアップ」の可能性について示唆するコメントもありました。
満を持して登場「Level 13」
そして2012年1月4日、東京でも“新バージョン”であるLevel 13がお目見えしました。早速、そのレポートを。
今回の変化は「落下の回数が増え、新たな特殊効果も加わる」と発表されていました。この変化については、1回でも体験した人であれば違いは何となく理解できると思います。以前の恐怖が「高いところから落とされる」というものだったとすると、今回の変化は「不意に」落とされるといったところでしょうか。初日に体験したゲストの様子を見ていると、ファーストドロップでの悲鳴は大変新鮮なものでした。
驚いたのは、今回のアップデートが単に「落ち方を変えた」だけではないこと。その変化はプレショーである、ハリソン・ハイタワー三世最後の記者会見を聞く部屋から始まっています(何が変わったのかは実際に体験してみてのお楽しみ)。よーく見ると途中に止まる部屋にも小道具が増えており、何度も体験しているマニアならばおもわずニヤリとする変化です。
総じて、初めての人も、何度も乗った人でももう一度新鮮な気分で楽しめ、みんなで叫べるようになった、いいリニューアルだと思います。
見た目は変わらない、でも“最新”のアトラクション
今回の新プログラムは、東京ディズニーリゾートの新たな拡張方法を示したいい例です。そして実はもう1つ、ディズニーのアトラクションでソフトウエアアップデートを行っているものがあります。それが、2012年7月9日にオープンが予定されている東京ディズニーシー新アトラクション「トイ・ストーリー・マニア!」です。
トイ・ストーリー・マニア!はライドに乗りながら、3D映像で作られる的をめがけ、古き良き遊園地を思わせる「ミッドウェイ・ゲーム」を体験するというものです。このアトラクションはフロリダ、カリフォルニアの両パークですでに運営中ですが、2010年に公開された「トイ・ストーリー3」にあわせ新キャラクターを追加しています。また、クリスマスにはホリデーバージョンに変更するという計画も。
ハードウエアはそのままに映像ソフトウエアとプログラムを若干変えるだけで、今回のような大きな成果を上げられる仕組みは、ディズニーテーマパークにおいて新たな世代の「アトラクション」が完成した、といえるでしょう。
東京ディズニーランドをはじめとする、カリフォルニア本家のディズニーランドを源流とするマジックキングダム型パークは、アメリカ人にとってすでにノスタルジーを感じさせる、古き良きパークとなっています。東京ディズニーシーではそのような制約もなく、新たな面白い技術が次から次へと投入され、懐かしいけど最新鋭なパークになりました。次に舞浜に行くときにはぜひ、その裏側にある技術や狙いについても気にしてみてはいかがでしょうか?
では、いってらっしゃい!
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