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「時代の顔をアーカイブする」――Google、被災地を走ったストリートビュー撮影秘話(2/3 ページ)

Googleのストリートビュー撮影車が昨夏から約半年間、東北を駆け抜けた。住民感情に配慮しつつも「今でなければ」と撮影をスタート。ハンドルは地元出身のドライバーたちが握った。

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 最終的には「Googleとしてやるべきはアーカイブ」と、ゴーサインを出すことに。「オールクリアではないが、そのタイミングでやろうと決断した感じだった」(村井さん)。そのわけを次のように語る。

 「阪神大震災の記憶が今どのくらいの人たちに残っているかというと、すごく難しい。文献を見れば分かるけど、その場所がどうだったかというのは、そこで心が傷ついた人くらいしか、正確に思い出せないんじゃないか。でももしGoogleがアーカイブすれば、日本のみならず世界中でいつでも記憶として蘇らせることができる。危険を感じなければ防災なんかやらないわけですから。悲惨さを体験していない人も知ることで防災に役立つ可能性がある。今撮影しなければと」(村井さん)

トラブル前提で入念に準備


大倉さん

 通常ストリートビューを撮影する際に、Googleが地元自治体に連絡することはないが、今回は住民感情への配慮が「大きな大きなポイント」(村井さん)であったため、撮影に入るであろう市町村には事前に知らせ、事情を説明した。特に宮城県気仙沼市は協力的だったという。「気仙沼市役所に話に行ったとき、『新しいテクノロジーを使って記録を残すことにすごく意義を感じる』と言ってくださった。我々と(ビジョンが)すごく近かった」と村井さん。そこで撮影は気仙沼市から始め、同市を核としてエリアを周辺へ広げていくことにした。

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 撮影ではドライバーの安全確保を最優先し、撮影前の準備は「トラブル前提」(村井さん)で入念に進めた。村井さんや大倉さんが実際に現地を視察。信号が機能していない交差点や地盤沈下で満潮時に冠水する港付近など、普段とは状況が違う場所が多いなか「物理的に走って問題ないかを確認し、注意点をドライバーに伝えた」(大倉さん)

 撮影がスタートしたのは、地震からちょうど4カ月後の7月11日。「(地元の人から)怒られたらどうしようとか思ってたんですけど、ネガティブな反応はほとんど無くて、『頑張って』と言われたり、お菓子やコーヒーを差し入れてくれた人もいた。東北の方はフレンドリーで、色々話しかけてくれた」と大倉さんは振り返る。

 何らかの理由で撮影を止められるケースを想定し、プロジェクトの趣旨を説明した紙をドライバーに持たせていたが、その紙を配ることもほとんどなかった。むしろ「『写真はいつ公開されるのか?』と待ち望む声が多かった」(大倉さん)

過去と現在「比較できない限りは出さないと決めていた」

 撮影したのは6県82市町村。カメラは普段と同じ2メートル5センチの高さに据えた。写真はGoogleマップと特設サイト「未来へのキオク」で公開している。震災前からストリートビューに対応していた一部の地域は、未来へのキオクで震災後の新しい写真と以前の様子とを見比べられる。過去と現在のストリートビューを比較できる形で公開するのはGoogle全体でも初めての取り組みだ。

 「過去の写真を無くさない形で新しく撮影したものをどう見せるかは、プロダクトのチャレンジだった。それができない限りは(今回のストリートビュー写真を)出さないと決めていた」と村井さん。「(過去と現在を)同時に見て何を感じてもらうか――我々は事実を事実として見せることに注力していく」と語る。

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