「ねとらぼ」だから「虎坊」に行きたい――編集長の無茶ぶりから始まった、謎と神秘の「虎坊」探訪記:謎の感動(2/4 ページ)
それは例によって、編集長の無茶な一言から始まった。「九州に行くならさ、虎坊ってところに行ってきてよ」。ええと、行くのはいいけど、そもそも虎坊ってどこ?
お巡りさんも知らない「虎坊」
役場は駅から10分ほど歩いたところにあった。途中、5~6人の小学生グループとすれ違ったら、いきなり「こんにちは」と挨拶されてビックリした。小学生から挨拶されるなんて、何年ぶりだろう。
役場で虎坊について聞いてみようと思ったが、すぐ隣に交番があったので、まずはそちらへ入ってみることにした。ドアを開けると、中にはお巡りさんが2人。
―― すいません、東京から来たんですが、「虎坊」ってご存じですか?
一瞬、キョトンとするお巡りさんたち。そりゃそうだ。しかしこっちは大マジメなのである。がんばって企画意図を説明すると、「あなたも大変ですね……」といった感じで親身になって対応してくれた。くだらない企画で本当にすいません。
が、残念なことに2人とも地元出身ではないらしく、虎坊についてはよく知らないとのこと。iPhoneで地図を見せると、「ああ、ほんとだ、虎坊。ありますね」。いかん、これでは僕と情報レベルが一緒だ!
聞けばどうやら、虎坊があるのは牛津町ではなく、隣の「芦刈町」の管轄区内らしい。
「たぶん牛津町で聞くより、芦刈町の方で聞いた方がいいと思いますよ」
頭の中でピコーン、とイベントのフラグが立った気がした。なんだか昔のアドベンチャーゲームでも遊んでいるような気分だ。よし、これは芦刈町へ行けってことだな?
地元の人も知らない「虎坊」
芦刈町まではタクシーで向かうことにした。途中、地元民が集まりそうなスーパーを見つけたので、買い物ついでにレジの店員さんにも尋ねてみた。
「虎坊……ですか? すいません、地元出身ですが聞いたことないですねぇ」
えーっ、地元出身でも知らないのか虎坊! もしかしたら、実はとんでもない「いわく付き」の土地で、町ぐるみで口止めでもされてるんじゃないか……。こうなると逆に、意地でも知っている人を突き止めてやろうという気になってくる。
などと考えていると、ちょうど目の前をタクシーが通りかかった。
運転手さんに企画を説明すると、「そういうことなら、交番より市役所に行くといいですよ」との提案。なるほど、芦刈町にある小城市役所なら虎坊について知っている人もいるかもしれない。
移動中、このあたりについて少し話を聞いてみた。運転手さんによると、このあたりは玉ねぎの生産が盛んで、周りに見える畑はほとんどが玉ねぎ畑なのだそう。特に有名のは「早生」と「極早生」と呼ばれる品種(運転手さんは「わしぇ」「ごくわしぇ」と発音していた)で、どちらも一度食べると他の玉ねぎは食べられなくなるくらいおいしいらしい。後から調べたところ、佐賀県は北海道に次いで、玉ねぎの生産量国内第2位を誇るのだそうだ。
ついでに、もしかしたらと思って虎坊についても聞いてみた。
「いやあ、聞いたことないなあ」
……ですよね。いや、むしろそれを聞いてホッとしている自分もどうなのか。
ついに最初の証人発見。そして……
運転手さんにお礼を言って、市役所の前で降ろしてもらった。さあ、今度こそ虎坊を知っている人はいるのか!
窓口で企画について説明する。さすがにもう慣れたものので、今度はすんなり趣旨を理解してもらうことができた。窓口の人もやっぱり虎坊については知らなかったものの、かわりに地元出身という職員さんを呼んできてくれた。
「ああ、虎坊ね、聞いたことありますよ」
キターーーーッ! 証人ゲット! 話を聞いたところ、その人も「詳しく知っている」というわけではなかったが、以下のようなことが分かった。
- かなり狭い地域名なのは確か
- どこまでが「虎坊」かの境目はよく分からない
- 現在は10軒ほどの民家があり、あとはほとんど畑
うーん、分かったようでよく分からない。まあ「やっぱり狭かった」というのが確定しただけでも収穫か。
「あ、そうだ、もっと詳しく知りたいなら、岡本さんに聞くといいですよ」
―― 岡本さん?
「市役所のOBで、このあたりの郷土研究を行っている人です」
郷土研究家! すぐさま「ぜひお願いします!」と言うと、なんとその場で電話してアポイントまで取ってくれた。
どうやら岡本さんの家は市役所から歩いて行ける距離らしい。地図で場所も教えてもらい、僕はいよいよ虎坊の核心(そんなものあるのか?)に迫りつつあるという手応え胸を躍らせながら、小城市役所を後にしたのだった。
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