参考書に「ハルヒ」や「らき☆すた」 中経出版が仕掛ける“コラボ参考書”の裏側に迫る(2/2 ページ)
アニメやラノベを学習参考書に採用して注目を集める中経出版。その仕掛人である編集者に、その戦略を聞いてきた。
コラボ作品はどう選ぶ?
コラボする作品を選ぶ基準は2つ。「ファンの多さ」と「ファンの広さ」だ。ラノベであれば1巻あたり20万部以上売れるか、恋愛やホラーなど各カテゴリーの上位3位以内に入っているか、コミックであれば1巻40万部以上売れるか、アニメ化されているかなどの基準で選ぶ。これが「ファンの多さ」。これを、深夜帯にアニメが放映されていて大人も見ているか、名前はすでに知っていていつかは読みたいと思っているライトなファンがいるかなど、「ファンの広さ」と組み合わせて選定する。
そうやって選んだ作品の中から「学習参考書との親和性」「エロの要素が入っていないもの」「途中で作品が終わらなさそうなもの」という観点からチェックし、最終的に絞り込む。親和性が高いのは学園もので、「新世紀エヴァンゲリオン」や「機動戦士ガンダム」など戦闘シーン満載のものは勉強どころではないので難しいという。
作品を選び、企画(例えば「キャラが言いそうなセリフを英語で表現する」など)が決まったら、予備校の先生と、アニメ作品のプロダクションに提案して制作に入る。先生やプロダクションは戸惑うこともあるが、結構楽しんでやってくれているそうだ。
山川さんにとって思い入れが強いのは涼宮ハルヒの英語参考書。角川グループ入りする前からアニメを見ておもしろいと思っていた作品だ。参考書としては本格的な構成、作り込みで、作り込みすぎてボリュームが大きくなり、上下巻になってしまった。オフの時間にハルヒの舞台・兵庫県西宮市の写真を撮ってきて、西宮写真集を提案したほど。写真集は「学習内容に関係ない」と却下になったものの、写真はハルヒの名場面を英語で表すコーナーに収まって納得しているという。
コラボ参考書を購入しているのは、20~40代の作品ファンが全体の60%、中高生・10代の作品ファンが20%、作品のファンではなく純粋に学習教材を求めている人が10%。中経出版には熱心なファンから「まさに僕が理想としていた参考書だ」「英語を好きになるきっかけになった」などのコメントが寄せられている。作品ファンの中学生が、高校で習う難しい科目の参考書を買うこともあるそうだ。書店からは、学習参考書はまじめであるべきだと厳しい意見を言われることもあるが、同社の学習参考書としては破格の売れ行きとのこと。
これからも続々
山川さんの勢いは止まらない。4月にはアスキー・メディアワークス・電撃文庫のライトノベル「とある魔術の禁書目録(インデックス)」シリーズとのコラボ「『とある魔術の禁書目録』と学ぶ数学I・A」と、声優の朗読CDが付いた「ゴロ合わせ朗読CD付 世界史まるごと年代暗記180」が発売される。5月には「『らき☆すた』と学ぶ 化学[有機編]が面白いほどわかる本」の発売が控えている。これからコラボしたい作品も頭の中にあるという。
コラボ参考書は他社からも出始めている。そうした中にはカリキュラムに沿っていないものもあるが、山川さんは自社商品はしっかり作られていると自信を持つ。アニメ作品のファン受けだけを狙った書籍ではなく、カリキュラムに沿った学習効果のある参考書が増え、業界全体で売り場が盛り上がってくれれば、と山川さんは期待を語る。コラボ参考書は今まで以上に書店の棚を賑わせてくれそうだ。
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