鷹好きの、鷹好きによる、鷹好きのためのカフェ「鷹匠茶屋」でごはんしてきた
お店の中に猛禽(もうきん)類がいることで、徐々に浸透し始めている三鷹「鷹匠茶屋」。その店主のあふれる鷹への愛に触れてきた。
普段近くでお目にかかれない鷹などの「猛禽(もうきん)類」がいることで知られつつあるカフェがある。生粋の鷹好きの店主が経営する「鷹匠茶屋」(東京都三鷹市)だ。危なくないのだろうか? ゆっくりお茶なんてできるのだろうか……。不安に思いながら、恐る恐る店に足を運んだ。
いらっしゃいませ、と鷹がお出迎え
吉祥寺駅から徒歩15分、井の頭公園の近くにカフェはある。駅から遠くても「なかなか着かないなあ」と不安がることはない。あなたはきっと見つけられる。そう、鷹があなたをお出迎えしてくれるから。鷹匠茶屋は店の外から鳥小屋をのぞけるようになっていて、窓のすぐ近くにいるハリスホークのネテルちゃんとばっちり目が合うのだ。
お店に入ると、意外と普通のカフェ。店内で鷹が羽ばたいているのでは、と予想していたが、そんなことはなかった。テーブル席が15席ほどあり、1人でも入りやすそうな落ち着いた雰囲気だ。壁には猛禽類の肖像画が飾っており、テレビでは鷹のドキュメンタリーDVDが流れている。もふもふなふくろうや鷹のぬいぐるみ、くちばしを押さえておくためのフード、勝手に飛んでいってしまわないように止めておくためのリードなどのグッズも販売している。このあたりはさすが鷹カフェといった感じだ。
店内には、カフェスペースと薄い壁をへだてて、猛禽類が飼われている小屋がある。お店の人に言えば誰でも入ることができ、フラッシュをたかなければ写真・動画撮影も可能。しかし、餌付けはできない決まりとなっている。この小屋には3種類の猛禽類がそれぞれ1羽ずつ、合計3羽いる。まずはさきほど出迎えてくれたハリスホークのネテルちゃん(メス・10歳)、続いて名無しのハヤブサ(性別は検査をしていないため不明・10カ月)、ベンガルワシミミズクのジャム(性別は不明・2歳)。ネテルちゃんがときどき羽を広げたり、鳴くことがあるが、3羽ともおとなしく、近くで見ると意外とかわいい。この3羽はすでに飼い主がついているため購入できないが、新たな鳥が入荷されれば30万円ほどで買うことができる。
店主おすすめのハリスカレーを食す
猛禽類の名前にちなんだメニューもある。記者が食べたのは、ハリスホークという名前に由来する「ハリスカレー」。豚バラが入っている甘めのスープカレーで、ボリューム十分。ハリスホークは人懐っこい性格だとか。「ぴり辛ペレグリン」はとり肉ぴり辛ソース焼きのこと。ペレグリンはハヤブサという意味。ハヤブサは、気が変わると何キロも遠くへ飛んで行ってしまう「ぴり辛(?)な性格」なんだそう。「イーグルジンジャー」は量が多めなポーク生姜焼き。イーグルは体が大きく、どしっと構えており、とても大胆とのこと。
全国から鷹好きが集まる
お客さんは猛禽類を飼っている人が多い。地方からのお客さんも多く、北海道や沖縄から来る人も。来店したお客さんは、知らない人同士でも、猛禽類という共通点でつながるという。飼っている鷹の種類や、家で飼えないなどの悩み、餌は何をあげているか、散歩はしているか、家で鳴くか、飼ったらなついてくれるかなど、猛禽類に関することで自然と会話が生まれる。
週末は、鷹匠のお客さんが飼っている猛禽類を連れてくる。店内に置いておける猛禽類は全部で10羽ほどなので、席が満席になるとお客さんが自ら席を譲り合って、すぐにお店を出ていく。お店を出たお客さんは近くの公園に鷹を飛ばしに行くそうだ。週末はこの繰り返しで、1日に10回転くらいするほど忙しい。
店主は生粋の鷹ファン
「鷹匠茶屋」を運営しているのは佐々木薫さん。東京都の鳥獣保護員も務めている、鳥のプロだ。佐々木さんと猛禽類の出会いは、まだ小学生のとき。当時日本は、希少動物の国際取引を禁じるワシントン条約に入っていなかったので、文鳥やメジロなど色んな鳥を自宅で飼っていて、その中にタカ目のハヤブサもいた。中学生のときに父親の知り合いから鷹匠術に詳しい人を紹介され、飼い方や育て方などを教わり、鷹匠になったという。以来ずっと鷹を飼っており、現在は「日鷹クラブ」という鷹匠のクラブの長も務めている。鷹匠茶屋は、日鷹クラブに所属する30~40人の会員とリフォームし、10日間ほどで作った。
そんな佐々木さんに鷹の好きなところを聞くと「全部好き」。1番好きな鷹を聞いても「全部好き」。生粋の鷹ファンだ。佐々木さんにとって、鷹とはパートナー。「鷹がいない状況なんて想像できない」。将来的にはカフェを増床し、「最上階に自分が住んでそこでひな鳥を育てる。ほかのフロアは“鷹”“ふくろう”“わし”など階によって異なる猛禽類を扱えたら」と夢を語った。
鷹匠茶屋はオープンからまだ1年ほど。だがお客さんは多く、猛禽類ファンが増えてきているのを感じているという。
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