ニコ生とTwitterが流れる会場で議論 「新仕分け」で初の試み、「民主主義2.0」実現か!?
ネットの“空気”を感じながらの議論は「新仕分け」にどんな影響を与えるのか――。
政府の行政刷新会議は11月16日、東日本大震災の復興予算などを検証する「新仕分け」を開始した。仕分けはこれまでもネット中継されてきたが、今回は初の試みとして、会場内にニコニコ生放送(ニコ生)とTwitterのタイムラインが流れる仕組みを導入。メインテーブル内に設置した4台のディスプレイに視聴者の声がリアルタイムで反映されるなか、議論が行われた。意見は内閣府共通意見等登録システムからも受け付けている。
ニコ生のコメントとハッシュタグ「#shiwake」のツイートが会場ディスプレイに逐一表示され、そこに流れた疑問や意見の一部はコーディネーターから直接担当者に質問がなされた。また、ニコ生で実施したアンケートを議論の参考にするなど、これまでにない開かれた空間となった。
これらは、思想家・東浩紀氏の提案「政府内の全ての会議を『ニコニコ生放送』で公開しよう」が実現したもの。東氏は著書「一般意志2.0」において、ジャン=ジャック・ルソーの「社会契約論」を読み直し、近代民主主義の基礎である“一般意志”を集合的無意識だと解釈した。そして、最新の情報技術は“人々の無意識”を可視化できるとし、総記録社会の現実に照らしてアップデートした概念を“一般意志2.0”とした。これと熟議と組み合わせたものを「民主主義2.0」と呼んでいる。ごく簡単にイメージするなら「ニコ生のコメントが流れ続けると、議員は“空気”を読んで“まとも”になる」ということだ。
なお、いわゆる「世論」をルソーは“全体意志”と呼び、“一般意志”と区別している。前者はみんなの意志の和であり、しばしば判断を誤るが、そこから相殺しあうプラスとマイナスを取り除いた“一般意志(差異の和)”は、決して間違うことはないという主張だ。
東氏のツイートによると、新仕分けの担当者に「一般意志2.0」を読んでもらい実現に至ったとのこと。民主党は2009年のマニフェストでは、「オープンアンドフェアネス」のもと、日本社会を外に開き、全ての制度を透明化しつつ公平な社会を作るとうたっていた。実際には迷走が目立ったわけだが、少なくとも「情報公開」の点では、政権交代の成果を認めるべきだろう。08年のオバマ米大統領就任以降、オープンガバメント(開かれた政府)は大きな潮流でもある。
奇しくも16日は衆議院の解散当日となり、来月には総選挙が行われる。新仕分けの行方も未知数だ。新政権のもとで「民主主義2.0」はどうなるのか。“大衆の無意識”にさらされながらの議論と、密室で行う専門家同士の”空気”を読んだ議論とでは、得られる結果が大きく違うかもしれない。新仕分けは18日まで行われ、毎日ライブ配信される。そこのあなたもニコ生やUstreamを通じて、ネット時代の新しい議論に“参加”してみてはいかがだろうか。
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